ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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お久しぶりです。まさか前回の更新からこんなに経つとは思ってなかったです……申し訳ない。
久々の更新にベアジェシです。
注意
・いろいろと捏造です。
・全体的に暗いです。
・ベアトがヤンデレ気味。
では、どうぞ。
野ばら
久々の更新にベアジェシです。
注意
・いろいろと捏造です。
・全体的に暗いです。
・ベアトがヤンデレ気味。
では、どうぞ。
野ばら
朱志香がまだ幼い頃、彼女の傍にはベアトリーチェという魔女がいた。
厳しい教育を受けてあまり島の外へ出られない朱志香をベアトリーチェは優しく抱きしめたものだった。
ずっと一緒で、これからも朱志香の傍には自分がいるものだと思っていた。
だからだろうか。
朱志香が誰かほかの男に恋をしたと知ったときに胸がずきりと痛んだのは。
野ばら
朱志香が嬉しそうに誰かの話をするのは3度目で、その話題の人間が男であったのは2度だった。
6年前は彼女のいとこで、今はどうやら彼女に使える使用人の男のようだ。朱志香は気づいてはいないが、今も昔も相手も少なからず彼女の事を思っているのだろうということが話の中から察せられる。
それを思い出してベアトリーチェはああ、と呟いた。
(1度目は、6年前のは、妾が譲り受けると言ったのだったか)
けれども預かった恋心は所詮は預かりもの。
朱志香の一部と一つになれたのに、自分の心の中にそれは溶け込もうとはしなかった。
それどころか溶けあわない恋心にベアトリーチェの心が耐え難い痛みを訴えた。
「それで、……ベアト?どうしたんだ?」
自分は話を聞いている間にいつの間にか考え込んでいたのだろう、対面で自分に話を聴かせてくれていた朱志香が首を傾げる。
「いいや。……朱志香」
「うん?」
「その……」
うまく言葉が出てこない。だから代わりに朱志香の身体を腕の中に閉じ込めた。
「ベアト……?」
「……妾は、嫉妬しているのかもしれぬ」
「嫉妬?」
7つの大罪の1つ。
朱志香には決して味わわせたくない苦い恋の味。
「朱志香が愛した、全ての存在に……妾は嫉妬している」
そうか、とベアトリーチェは気づいた。
ずっと感じていた心の痛みは朱志香が愛する全てへの嫉妬で、自分は朱志香に恋をしているのだと。
朱志香が微笑む気配がして、温かな手が背に回される。
「私はベアトも大好きだよ」
(けれども朱志香、そなたの好きは妾の好きとは違うのだろう?)
それが切なくて悲しくて、ベアトリーチェは目を閉じた。
いつだったか朱志香に蒔いた恋の種は、自分に向けて咲いてほしいといつの間にかベアトリーチェは思っていた。
けれど、朱志香の恋心を自分に向けるにはもう全てが遅過ぎた。
懸命に伸ばした手は、朱志香に届かなかった。
震える指先が触れたのは、薄桃に染まった頬ではなく、温度をなくした青白いそれだった。
だからベアトリーチェは全てを箱の中に隠すことを決めた。
朱志香が愛した全ての記憶も、ベアトリーチェが朱志香に抱いた恋心も、誰にも見られない宝箱に隠してしまうと決めた。
朱志香が愛した男との対戦の席を立って、ベアトリーチェは部屋に戻った。
ベッドの上には世界で一番愛しい少女が眠っている。
「朱志香……」
桃色の唇に自分の唇をそっと重ねる。
10月5日が終わって世界が壊れる前にゲーム盤からさらってきた朱志香は、次のゲーム盤が終わると言うのにまだ目を覚まさない。
「朱志香……妾は寂しいぞ……妾と黄金郷をつくるんじゃねぇのかよぅ……」
あの日、朱志香が自分の名前を継いだ日、ベアトリーチェは今度こそ彼女と一つになれたと喜んだ。
全てを捨てて、自分を選んでくれたのだと喜んだ。
けれども新しい無限の魔女となった朱志香は愛した全てと運命を共にすることを選んだのだ。
「金蔵の気持ち、今なら分かるぞ……もう、そなたをどこへもやらぬ。妾はそなたのそばから離れぬ。だから、だから妾と共に生きてくれよぉ……」
何度も朱志香に口づけて、涙を流してその身体にすがりついた。
朱志香がここにいることはベアトリーチェ以外誰も知らない。知られてはならない。
本当は家具に知らせて、目覚める方法を探るべきなのだろう。けれどももしあの男に知られてしまったら、また朱志香はベアトリーチェの下からいなくなってしまうから。
それはベアトリーチェにとって、耐え難い苦痛なのだ。
そして、それは目覚めぬ朱志香も同じだった。幼いころにベアトリーチェと育んだ愛は彼女の心の一番綺麗な場所にしまってあった。
けれどもその清らかすぎる思い出は今の朱志香には辛いばかりで、自分の運命も乱れた恋心も何もかもを忘れてしまいたくて、一心に魔法を使った。
全てを壊して、何もない牢獄に放り込んでくださいと嵐の空に願った。
それでもチェス盤の外から舞い戻った愛しい人に守られて、カーテンの中にもぐりこんだ。それがベアトリーチェがゲーム盤で死にゆく自分にくれた最後の贈り物だと気付いたのは、全てが終わる寸前にチェス盤から誰かの腕の中に抱きしめられてからだった。
(これが……私への、罰……)
愛しい人は島の外。自分はもう、帰れない。
ベアトリーチェはもう、朱志香を離さない。それこそ首輪でベッドにつないででも彼女をつなぎとめようとするだろう。
(ごめんね……)
その言葉さえ誰に向けて紡いでいるのかわからない。
そのまま朱志香は微睡みの底に落ちて行く。
(今はベアトと一緒にいたいから……)
幼い日に一緒に遊んだ、ベアトリーチェとの記憶を夢見ながら。
無限の魔女は気付けなかった。
手折った花が目覚めるには、愛を囁く言葉が必要だったことを。
眠り姫が目覚めるには、包み込む愛が必要だということを。
だから朱志香は眠り続ける。彼女がベアトリーチェの恋心を知るその日まで。
おわり
厳しい教育を受けてあまり島の外へ出られない朱志香をベアトリーチェは優しく抱きしめたものだった。
ずっと一緒で、これからも朱志香の傍には自分がいるものだと思っていた。
だからだろうか。
朱志香が誰かほかの男に恋をしたと知ったときに胸がずきりと痛んだのは。
野ばら
朱志香が嬉しそうに誰かの話をするのは3度目で、その話題の人間が男であったのは2度だった。
6年前は彼女のいとこで、今はどうやら彼女に使える使用人の男のようだ。朱志香は気づいてはいないが、今も昔も相手も少なからず彼女の事を思っているのだろうということが話の中から察せられる。
それを思い出してベアトリーチェはああ、と呟いた。
(1度目は、6年前のは、妾が譲り受けると言ったのだったか)
けれども預かった恋心は所詮は預かりもの。
朱志香の一部と一つになれたのに、自分の心の中にそれは溶け込もうとはしなかった。
それどころか溶けあわない恋心にベアトリーチェの心が耐え難い痛みを訴えた。
「それで、……ベアト?どうしたんだ?」
自分は話を聞いている間にいつの間にか考え込んでいたのだろう、対面で自分に話を聴かせてくれていた朱志香が首を傾げる。
「いいや。……朱志香」
「うん?」
「その……」
うまく言葉が出てこない。だから代わりに朱志香の身体を腕の中に閉じ込めた。
「ベアト……?」
「……妾は、嫉妬しているのかもしれぬ」
「嫉妬?」
7つの大罪の1つ。
朱志香には決して味わわせたくない苦い恋の味。
「朱志香が愛した、全ての存在に……妾は嫉妬している」
そうか、とベアトリーチェは気づいた。
ずっと感じていた心の痛みは朱志香が愛する全てへの嫉妬で、自分は朱志香に恋をしているのだと。
朱志香が微笑む気配がして、温かな手が背に回される。
「私はベアトも大好きだよ」
(けれども朱志香、そなたの好きは妾の好きとは違うのだろう?)
それが切なくて悲しくて、ベアトリーチェは目を閉じた。
いつだったか朱志香に蒔いた恋の種は、自分に向けて咲いてほしいといつの間にかベアトリーチェは思っていた。
けれど、朱志香の恋心を自分に向けるにはもう全てが遅過ぎた。
懸命に伸ばした手は、朱志香に届かなかった。
震える指先が触れたのは、薄桃に染まった頬ではなく、温度をなくした青白いそれだった。
だからベアトリーチェは全てを箱の中に隠すことを決めた。
朱志香が愛した全ての記憶も、ベアトリーチェが朱志香に抱いた恋心も、誰にも見られない宝箱に隠してしまうと決めた。
朱志香が愛した男との対戦の席を立って、ベアトリーチェは部屋に戻った。
ベッドの上には世界で一番愛しい少女が眠っている。
「朱志香……」
桃色の唇に自分の唇をそっと重ねる。
10月5日が終わって世界が壊れる前にゲーム盤からさらってきた朱志香は、次のゲーム盤が終わると言うのにまだ目を覚まさない。
「朱志香……妾は寂しいぞ……妾と黄金郷をつくるんじゃねぇのかよぅ……」
あの日、朱志香が自分の名前を継いだ日、ベアトリーチェは今度こそ彼女と一つになれたと喜んだ。
全てを捨てて、自分を選んでくれたのだと喜んだ。
けれども新しい無限の魔女となった朱志香は愛した全てと運命を共にすることを選んだのだ。
「金蔵の気持ち、今なら分かるぞ……もう、そなたをどこへもやらぬ。妾はそなたのそばから離れぬ。だから、だから妾と共に生きてくれよぉ……」
何度も朱志香に口づけて、涙を流してその身体にすがりついた。
朱志香がここにいることはベアトリーチェ以外誰も知らない。知られてはならない。
本当は家具に知らせて、目覚める方法を探るべきなのだろう。けれどももしあの男に知られてしまったら、また朱志香はベアトリーチェの下からいなくなってしまうから。
それはベアトリーチェにとって、耐え難い苦痛なのだ。
そして、それは目覚めぬ朱志香も同じだった。幼いころにベアトリーチェと育んだ愛は彼女の心の一番綺麗な場所にしまってあった。
けれどもその清らかすぎる思い出は今の朱志香には辛いばかりで、自分の運命も乱れた恋心も何もかもを忘れてしまいたくて、一心に魔法を使った。
全てを壊して、何もない牢獄に放り込んでくださいと嵐の空に願った。
それでもチェス盤の外から舞い戻った愛しい人に守られて、カーテンの中にもぐりこんだ。それがベアトリーチェがゲーム盤で死にゆく自分にくれた最後の贈り物だと気付いたのは、全てが終わる寸前にチェス盤から誰かの腕の中に抱きしめられてからだった。
(これが……私への、罰……)
愛しい人は島の外。自分はもう、帰れない。
ベアトリーチェはもう、朱志香を離さない。それこそ首輪でベッドにつないででも彼女をつなぎとめようとするだろう。
(ごめんね……)
その言葉さえ誰に向けて紡いでいるのかわからない。
そのまま朱志香は微睡みの底に落ちて行く。
(今はベアトと一緒にいたいから……)
幼い日に一緒に遊んだ、ベアトリーチェとの記憶を夢見ながら。
無限の魔女は気付けなかった。
手折った花が目覚めるには、愛を囁く言葉が必要だったことを。
眠り姫が目覚めるには、包み込む愛が必要だということを。
だから朱志香は眠り続ける。彼女がベアトリーチェの恋心を知るその日まで。
おわり
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