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なかなか更新できなくて申し訳ありません!
もう少ししたら更新できるようになるといいな。
そんなわけで今回は「テイルズオブエクシリア」のジュード×ミラで書きました。
注意
・ジュード君が変態。
・鼻血出てます。
では、どうぞ。
「闇夜の静寂の中で」
伝えたいことがあった。
伝えられないことがあった。
伝えようとしたことがあった。
けれど、伝えられなかった。
それでも確かに幸せだった。
隣にいることができたから。
これは、そんな幸せの一つ。
闇夜の静寂の中で
ある昼下がりのことである。宿で本を読んでいたミラが不意に問いかけた。
「ジュード、夜這いとはなんだ?」
この爆弾発言に、ジュードは飲みかけの紅茶にむせかえった。
「よ、夜這いって!」
「うむ。この本に書いてあったのだ」
そう言って彼女に見せられた本はやはりというか何というか、そう言う方面の本だった。
「本に書いてあること、あんまり信用しちゃだめだからね?そう言う本は特に」
「む……」
なんとか注意を逸らそうとそんなことを言ってみるが、ミラの好奇心の前にはかなわない。
「信用してはならないというのは分かったが、夜這いというのはどういうものだ?書物を信用してはならないのならば、君の言うことは信用しても良いのだろう?」
「いやまぁそうだけど……」
夜這いがどんなものかぐらいはジュードだって知っている。
だが、ミラに教えれば、きっと体験したいと言い出すだろう。
体験。
ふと思いついて、ジュードはミラの手を握った。
「体験……したいの?」
「できるならしてみたいな」
きょとんと首を傾げてそんなことを言う彼女に、彼はこう申し出た。
「じゃあ、僕がやってあげるよ……今晩」
途端にミラとのやましい妄想が頭の中を駆け巡って、ジュードは鼻血を吹いて倒れ込んだ。
その晩のことである。
ジュードはなるべくやましい妄想をしないようにして、ミラの部屋の前まで辿り着いた。ノックをして、ミラの名前を呼ぶ。
「ジュード?」
「は、入っても……いいかな」
「ああ。今鍵を開けよう」
ドアが開いて、ミラが顔を覗かせた。
「み、ミラ……本当に、いいの?」
「うむ……書物に書いてあることは、脚色があるとはいえ人間の営みなのだろう?そうであるなら、ぜひ経験したいと思うよ」
その無邪気な微笑みが愛おしくて、ジュードは彼女を抱きしめた。
「む、これが男女間の抱擁というものか。エリーゼと交わしたものとは少し違うような……」
ピントがずれたことを呟くミラの声に、ただの感心とは違った色が混じる。
「ミラ?」
「あ、いや、何でもない」
抱きしめているからミラの表情は見えない。
ジュードとて彼女を抱きしめているだけで温かくて柔らかい感触や甘い匂いが伝わってきて、どうにかなってしまいそうなのだ。
「ミラ」
彼女の名前を囁いて、腕の力を強める。
ジュードの胸に柔らかい感触がむにゅりと触れて、本当にどうにかなりそうだ。
妄想をなんとか振り切れば、どきどきと高鳴る鼓動が、彼女のそれと重なり合う。
「ミラ……?」
「な、なんだ?」
ミラにしては珍しい、上擦った声を聞く。ミラの温かくて速い鼓動が、ジュードにある仮定を与えた。
「緊張……してるの?」
「い、いや、そんな、ことは……」
「でもミラ、いつもより脈が速いよ」
途端に腕の中でミラがびくりと身を震わせた。
「そう、か」
「うん。僕と同じ……だね」
「ジュードも……緊張、しているのか」
「してるよ……ミラだから」
むにゅむにゅと柔らかい感触と鼻腔をくすぐる甘い匂いで、ジュードはいよいよどうにかなってしまいそうだった。だから、ミラに囁く。
「僕、こんなの初めてだけど……出来るだけ、優しくするから」
「う、うむ……よろしく、頼むよ」
彼女が頷いたのを見て、ジュードは抱きしめていた腕を下ろした。今度はミラの肩と膝裏に腕をまわし、横抱きにしてベッドに連れて行く。
寝台の上に彼女を横たえると、自分も彼女に覆い被さった。
「夜這いとは……こういうものなのか」
「そうだよ」
唇が触れそうな距離で、そんなことを囁きあう。
「だからね、ミラ」
ミラの細い指に自分のそれを絡めて、軽く力を込める。
「僕以外の人に、こんなこと頼んじゃダメだからね?」
「ジュード以外に、こんなこと頼めないよ」
その囁きを合図に、そっと唇を重ねた。
夜明け前、ミラがふと目を覚ますと胸に顔をうずめて、鼻から血を垂れ流しながら眠るジュードがいた。
「……ジュード?」
名前を囁くと健やかな寝息が聞こえてくる。
「寝るか鼻血を流すか、どちらかにした方がいいぞ?」
とりあえず鼻血で濡れた寝間着が肌に張り付くので、着替えることにする。ついでに湯浴みでもしてこようとベッドから起き上がると、途端に布団の中に引きずり込まれた。
「ジュード」
「ミラ……どこ行くの」
「寝間着が濡れてしまったから、湯浴みに」
「ダメ……」
「ジュード……」
むにゃむにゃとそんなことを呟くジュードに、ミラは頭を抱えた。
そもそも昨夜、ミラの胸元を血まみれにしたのはジュードである。おかげで胸元と寝間着は凄惨な状況になっているし、ジュードの顔にしたってべったりと鼻血がついている。
こんな姿を仲間に見せるのは彼だって本意ではないだろう。
「ジュード、湯浴みをしなければ。君も私も血まみれだ」
「あとで」
「……起きて、いるのだろう?」
ジュードは答えない。
その代わりにジュードの顔が胸元にうずまる。
本当ならば引き剥がして浴場に連れて行くべきなのだが、どういうわけかミラにはそうする気が起きなかった。
「ジュード……私は、きっと……」
囁きかけた言葉を、ミラはぐっと飲み込んだ。
伝えて良いものか分からなかったから。
今はこうしていられても、いずれ別れは訪れる。
そしてそれはそう遠い未来の事ではないのだ。
もしも彼が起きていて、ミラの気持ちを知ってしまったら、その別れは辛いものになるだけだから。
だから喉元までせりあがった言葉を無理やり胸の奥に押し込めた。
代わりに彼女は胸元で幸せそうな寝顔を見せる少年をきつく抱きしめた。
「起きろジュード。不審者として通報されてしまうぞ」
不審者、の単語にジュードははっと目を覚ましたが、自分の顔がミラの胸元に埋まっていることに再び鼻血を出すのであった。