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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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そんなわけで零式SSです。またリア充シリーズ。
では、どうぞ。

自重しません勝つまでは


拍手[3回]


「キング、セブン。今週の標語も「部屋でやろう」なのですが、一応渡しておきますね」
トレイがそれはそれは嫌みたらしい声色でプリントを突きだしてきた。
「なぁ、トレイ。何かあったか?」
恐る恐る尋ねたセブンに、彼は憤然と頷いた。
「何があった」
そのキングの問いに、何故かトレイの眉がつり上がる。
そうして彼は両手で顔を覆って泣き叫んだ。
「何もかにもありませんよ!先週自重しろと言ったでしょう!もう私のダイナマイトアローでこのリア充爆発させたい!」

自重しません勝つまでは

現在地、リア充が多い場所第三位の噴水広場。
現在時刻、放課後。
現状、デートという名の依頼達成の為の待ち合わせ。
下級生の女子に捕まっていたセブンがようやく来て、これから出掛けるところであった。
「なぁ、キング。ダイナマイトアローは人に向けたら駄目だよな」
まるで先週ダークネビュラをぶっ放してきたサイスのように取り乱すトレイを見ながら、セブンの囁きにキングは頷く。
「隊長から怒られるな」
「リア充爆発しろって言いたいんだろうけどな」
「良いですかキング、セブン!先週からこんなものが出回っているんですよ!」
そう言ってトレイが再び突きだしてきた紙は例のアレではなかった。それを見たセブンの目が見開かれる。次いで頬が真っ赤に染まった。それを見届けてたっぷり数秒後。キングは頭を抱えたくなった。
「……なんだこれは」
「なんだこれはじゃないでしょう!私さっきからこんなセリフばっかりじゃないですか!」
例のアレと同じ紙には、でかでかと「熱愛発覚!幻の候補生はリア充だった!」と書かれている。見出しの下にはお決まりのごとくサロンでセブンを膝の上に乗せてイチャイチャとリア充丸出しで弁当を食べるキングの写真が載っている。
「人気がなかったはずなのに」
「セブン。インビジ、装備してますよね」
ああ、とセブンがぽんと両手をうつ。
「インビジか……どうりで気付かなかったわけだよ」
「認識する力って何でしたっけ」
泣きそうなトレイにセブンは慌てふためいて彼を宥めようとする。
それは他の兄弟たちに対しても見てきたけれど、そのたびに何か得体の知れない感情に襲われていた。こうして恋人になって、それは焼き餅だと知ったが、改めてみてみればそれもセブンの美点の一つだと気付かされる。そんなことを考えていて、トレイの説教、もとい泣き言を聞き流していたキングはついとセブンの袖口を引っ張った。
「セブン。そろそろ行くぞ」
「あ、ああ……じゃあトレイ、私たちは任務があるから」
「くれぐれも外でリア充しないでくださいね」
うん、と曖昧に頷いた彼女の目は、泣き言という名の説教のせいで若干潤んでいた。

依頼はつつがなく終わった。大量発生したプリンはファイガのおかげで早々にただのスライム状の何かと化した。
そんなこんなで、2人で町を歩いていると、何故だか市民たちの生暖かい視線を感じた。
「セブン、これはどうだ?」
フリルの可愛らしいワンピースをセブンの胸に押し付ける。
「え、これ、か……?」
戸惑う彼女に、キングは頷いた。
「ああ。似合うんじゃないか?」
「い、いや、そんな年じゃ……」
「まあスカートは短いかもしれんが、揃いのショートパンツを買えば良い話だ」
「だからそんな年じゃないんだけど」
そんな可愛らしいことを言うセブンの両肩をキングは掴んだ。
「セブン」
「う、うん」
「お前はもう少し好きな格好をすべきだ。特に俺の前ではな」
恋人だろう?と白い額に口付ければ、いろんな方面からリア充爆発しろと囁きが聞こえてくる。だが、そんな怨みの声も恥じらうセブンの可愛らしさの前では何の役にも立たない。店の主から「兄さんたち熱いねぇ。カップル価格で安くしとくよ」と言われるのも照れくさいが温かい。だがしかしである。次の店主の言葉に2人は揃って頭を抱える羽目になる。
「なんだ、どっかで見たと思ったら兄さんたちアレじゃねえか!噂のラブラブカップル!魔導院のチラシで見たぜ」
ごめんなさいやっぱり通常価格で買います俺の財布で。
思わずそんなことを口走りそうになった。

魔導院の寮に帰り着いた時は、すっかり日が暮れていた。
セブンの手には例のワンピースが入った袋が握られている。それがなんだか嬉しくて、彼女はつないだ手にきゅっと力を込めた。
「どうした」
「ん、いや……なんか、幸せだな、って」
そうか、とキングが答えて手に力が込められる。
「俺もだ」
その答えが愛おしい。
「なぁ、キング」
「なんだ」
「私、キングが好きだ」
前を向いたまま、そう言葉を紡ぐ。2人でいる度に実感していた。膝の上に載せられて腹を撫でられるのも、口付けられるのも、きっとキングだから照れくさいけれど嬉しいのだ。彼の表情は見えないが、つないだ手を痛いほどに握られた。
「俺もだ」
かすれ掛けた声が耳朶を打つ。
「俺も、セブンが好きだ」
その言葉に答えるより早く、セブンの手が引っ張られる。よろけたところをぎゅっと抱き止められた。
「もう、自重しなくて良いかもしれんな」
その声につられるように、セブンは頷いた。恥ずかしいけど、本当は嬉しかったりもするから。
だから、もう自重しない。
自分たちがアギトになるその日までは。
なったら次の日から考えよう。
そうしてどちらからともなく微笑みかけて、軽く唇を触れ合わせた。
愛しているという気持ちを込めて。
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