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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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お久しぶりです。卒業式も終わって、無事に新社会人として生活を始めました。更新も少しずつできたらいいなぁと思っています。
そんなわけでホプライです。
春コミに出したホプライ本と同じ設定の数年後ネタシリーズです。ちゃんと設定については補完をして、シリーズ単体で読めるようにしていきます。13-2は買ったもののまだプレイしてないのでクリアしたらそのネタも入れていけたらと思っています。とりあえずアルティマニアの情報だけで適当に出しているので、間違っていたらご指摘お願いします。

では、どうぞ。

悪夢


拍手[7回]


コクーンが落ちたあの日、夢を見た。
愛しい人がいなくなり、命を懸けて探す夢を。
居なくなった彼女はコクーンを支える柱になったと思われていたのに、どこにもいなかった。ようやく見つけた彼女の手掛かりは、それだけで自分に命を賭けさせた。
それなのに、この世ならぬ場所で戦っていた彼女は、物言わぬ冷たいクリスタルになっていた。
そんな夢を見た。

悪夢

今日もそんな夢を見た。空調が聞いているにもかかわらずホープは全身冷や汗塗れになって飛び起きた。
「夢、か……」
鼻腔を満たす、家とは違う匂いにほっと息を吐く。すると隣の気配が動いた。
「ホープ?大丈夫か?」
優しい声が耳朶をくすぐる。ライトニングの声だ。
「ライトさん……っ」
ぎゅっと衝動のままに彼女に抱き着く。旅をしていた頃は彼女の胸に埋もれていたけれど、今は彼女を抱きしめられる。
夢でよかった。
本当にそう思った。

コクーンが落ちたのはかれこれ4年ほど前に遡る。あの日、ホープはライトニングにこう言った。
『あなたが好きです、ライトさん。……僕と、結婚してください』
それに対して、ライトニングはこう答えた。僅かに頬を染めながら。
『お前の気持ちが大人になっても変わらなければ……待っている』
その答え通り、ライトニングは待っていてくれた。4年という月日を、待ち続けていてくれた。一度はルシ騒動の中心人物として身分を剥奪された彼女は、今ではグラン・パルスを知る唯一の軍人として職場に戻ることを許された。その忙しさと互いの気持ちを試すためという理由から、一年に一度しか逢えなかったが、ホープはそれでも幸せだった。
理由なんて説明できない。
ライトニングと物理的に会えなくても、心はずっと繋がっていると信じられるから。
たまに来るメールも電話も、何もかもが愛おしくてたまらないから。

だから、あんな夢を見てしまうのだろうかとホープは考えをめぐらせた。
「ホープ」
寝間着越しに感じるライトニングの体温が心地よい。嫌なことを全部忘れさせてくれる。これが夢ではないのだと実感させてくれる。だからこそ涙があふれて止まらなかった。
「……悪い夢を……見たんです」
「……そうか」
ルシ騒動の頃からホープの夢見は悪いほうだった。が、あの時は実際にあった出来事と不安から見た夢だった。
では今日の夢は?
分からない。
ライトニングがホープを置いてどこかに行ってしまうなんて考えたくもないし、実際考えてすらいなかった。
声を絞り出して言葉を紡ぐ。
「ライトさんが……いなくなってしまって」
「……ああ」
「僕が、何もかも捨てて……あなたに会いに行くんです。……でも、……ライトさんはクリスタルになってしまって……っ」
夢で感じた絶望感が今更ながら蘇る。
「世界が……終わってしまうんです」
「……っ!」
腕の中でライトニングが息をのむ。涙に濡れた顔のまま白皙の美貌を覗き込めば、動揺を色濃く映したまま、彼女は視線をうろうろと彷徨わせていた。
「ライトさん?」
「……いや……私も……同じような夢を見ていた」
狼狽えたような声にホープは息が止まる思いがした。
「え……」
「セラもホープと同じような夢を見たと言っていた。私とスノウがいなくなって……探しに行く夢を見た、と。……毎晩そんな夢を見たせいで一晩中スノウがセラを宥める羽目になって……やつれていたな」
初めて悪夢を見た晩、セラは夫に抱き着いて……もとい、スノウの巨体を締め上げて一晩中泣き明かしたのだという。筋骨隆々としたあの巨体を締め上げる腕力があの細腕のどこにあるのだろうとホープの背筋に悪寒が走る想いがしたが、胸の中にしまいこんで再びライトニングを抱きしめた。
「僕はライトさんを締め上げたりしません……でも、ライトさんがいない夢を見たときは……怖くて悲しくて、一晩中泣き明かしました。僕は、ライトさんがいないと……もう、怖くてたまらないんです」
だから、どこにも行かないで。
そう囁いた瞬間、また涙があふれた。
「なあ、ホープ」
温かい手のひらが背中を撫でる。
「あの夢は、そういう未来も……いや、その未来が一番ありえた可能性なのかもしれない、そういうことなのだろうと私は思う」
「何故です?」
「あの騒動で、沢山の人間が死んだ。パージされた市民も、ルシを捉えようとした兵士たちも、……ファルシに踊らされた人間も……沢山死んだ。私たちだって殺さなかったわけじゃないだろう?」
それは確かなことだった。ブーメランで、魔法で、ホープだって命を奪わなかったわけではない。仕方なかったと割り切ることしかできなかっただけだ。
「夢の中で、私たちが殺した人間に償うために、私はあの場所で戦うことを決めた。……償いだと思った。だが……」
背中を撫でていたライトニングの腕がぎゅっとホープを抱きしめる。
「そうすることでお前たちに過酷な運命を強いていた。……これ以上に夢でよかったと思った夢はなかった」
「ライトさん……」
「もしかしたら本当に『愚かな女神』が存在していて、私たちにこういう運命がありえたと夢をみせているのかもしれない。だが、私はどこにもいかない。奪った命を忘れることもない」
おまえたちを悲しませるくらいなら、私はここにいる。
ライトニングは確かにそう言った。その体温に、柔らかな声に、あの絶望が癒される気がした。
「ずっと、そばにいてください」
僕があなたを迎えに行きますから。そう囁けば、小さく笑い声が弾けた。
「ああ、私はここにいる。……ずっと、待ってる」
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