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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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こんばんは。なかなか時間が取れなくて更新できませんでした。
そんなわけでまたキンセブ。リア充シリーズとは別物です。
では、どうぞ。


拍手[2回]


「セブン、お前になら似合うはずだ」
休日の昼下がり、そう言ってキングが押しつけてきたのは、黒のエプロンドレス、つまりメイド服だった。
「え、と……?」
意味が分からず、セブンが答えに窮すると、キングはいつもと同じ、至って真面目な顔でこう言った。
「その格好で、俺に茶を淹れてくれ」


メイド服と悪態と


「そんな趣味、あったか?」
セブンはおそるおそる口を開いた。
「そんな趣味とは?」
が、逆にキングに聞き返されて言葉に詰まる。
「その、ええと……メイドに奉仕されて喜ぶ、ような」
メイド趣味と言ったところでキングのことだ、セブンに説明させるに違いない。なんとか言葉を探して出てきたのがその説明だったが、目の前の男は至って真面目な……ヤンキーだの強面だの厳ついだのと評される顔で、そんな趣味はないとのたまった。
「俺はメイド服だから喜ぶ訳ではない。セブンだから喜ぶんだ」
「じゃあなんでメイド服なんだ」
いつもの服だっていいだろう、とセブンが抗議すれば、キングはやっぱり真面目な顔で答える。
「お前なら似合うと思ったからだ。色々と楽しめそうだしな」
「!?」
後半の発言に身の危険を感じる。いくら恋人とはいえ、いくら休日とはいえ、昼間から身の危険を感じる事などあって良いものか。これだけはいかに押しに弱い自分でも断り切らなければ、とセブンは己を奮い立たせた。
「い、嫌だ!」
「何故だ」
「まだ昼だぞ!」
「どこに問題がある」
いや、とキングがセブンの頬に指先を伸ばした。するりと撫でられて何故だか背筋がぞくりと震える。
「何を、想像した?」
抱き寄せられて、耳元で囁かれる声に、名を呼ぶ声に、セブンは逆らえない。
「……っ、なんにも、想像なんか」
「たかがメイド服で茶を淹れるだけだ。お前のそういう格好はさぞかし目の保養になると思って楽しめそうだと言ったのだが」
かぁ、と頬が熱くなる。一瞬でもはしたない想像をしたのは事実だ。それはそういう関係である以上仕方ないのではなかろうか。が、おとなしく認めるのもなんだか癪で、セブンは声を張り上げた。
「だから!変な想像なんて……っ」
「メイド服で茶を淹れるだけだ。何が不満だ?」
「う……」
くどいようだがキングの表情は真面目で、セブンは言葉に詰まって押し黙る。ただでさえ断れない性格なのに、そんな表情を見たらもっと断れなくなる。
「わかったよ……キングの、ばか」
「ああ、俺はセブンにだけは馬鹿なんだ」
せめてもの反抗とセブンが毒づいた言葉は、全く通用しなかった。

☆☆☆☆

メイド服にはミニスカートとロングスカートがある。朱雀や皇国で使用人が着ているものはロングスカートの、いわゆるブリティッシュメイドというタイプである。ミニスカートタイプは本職ならずともコスチュームだけは着たい、という一般人の願望を叶えるものだ。
そして今、セブンが押し付けられたのは幸か不幸かロングスカートのタイプだった。
「なんで、こんなこと……」
ぶつぶつ文句を言いながら衣装に袖を通し、紅茶の準備をする。よほどリ○トンのパックかその辺のティーバッグで済ませてやろうかとも思ったが、セブン自身が身の危険を感じるのだ。不安要素は取り除いておくに限る。
「キング、ダージリンでいいな?茶葉がそれしかない」
キッチンから顔を覗かせて問えば、「あるものでいい」と至極嬉しそうな答えが返ってきた。
「選択肢を与えたいなら種類を買っておけ。どうせ私しか使わないけど」
キングの部屋の台所の主はセブンだ。朝から晩まで彼女はキングの食事を用意している。彼が台所に入るときは水を飲むときぐらいなものだ。それを皮肉ってやると、彼はこうのたまった。
「俺はセブンの料理以外を食べようとは思わない」
「……!」
自炊しろよ、と毒づいてやりたいところだが、セブンとて17歳の恋する乙女である。好きな男にそんなことを言われて、ドキドキしないはずがない。
「あ、な、何、言って……」
急速に頬が熱を持つ。胸の鼓動が高鳴る。慌ててキッチンに引っ込んで、平静を装ってお湯の様子を見てはみたが、平常心など取り戻せようはずもない。
「キングの、ばか……」
なんだか妙に悔しくて、セブンはまた悪態を吐いた。

☆☆☆

ティーセットを持ってキッチンから出たセブンを見たときのキングの表情は、なんとも彼らしくないものだった。
「ロックンロール……!」
ソファーで意味不明なことを口走りながら静かに身悶えるキングに、セブンはこんなことしか言えなかった。
「帰ってこい、キング。なんか怖い」
「すまん。あまりに似合っていて興奮した」
「……そうか」
誉められているはずなのになんだか素直に喜べなくて、彼女は小さくため息を吐いた。
「まあいい、ダージリンだ」
カップに紅茶を注いでテーブルに置く。そのまま隣に腰を下ろそうとすると、腕を引かれてキングの膝の上に座らされた。
「キング?」
「よく似合っている」
ちゅっ、と額に口付けられる。いつもされていることなのに、恥ずかしくてたまらない。
「せっかく淹れたんだから飲めよ」
「セブンの茶がうまいのは知っている」
だがとキングはセブンの耳元で囁いた。
「お前が期待していたとは知らなかった」
すっと腰に手のひらが当てられて、そのまま撫でさすられる。
「き、期待なんてしてない!」
何を、とも言われていないのに、熱を持った頬のままセブンは抗議した。
「まぁ、先に茶だな」
抗議を涼しい顔で受け止めて茶をすする様がとても憎たらしい。メイド服に袖を通してからは何の期待もしていないと誓えるが、結局はキングが望めば流されてしまうだろう自分にセブンはため息を吐く。
「結局、何されても私はキングが好きなんだろうな……」
自嘲じみた響きの呟きに、彼が当たり前だろうと言った。
「何があろうと俺がセブンを好きで、お前が俺を好きなのはオリエンスの常識だ」
なんて強引で、傲慢な言葉だろうとは思うけれど、それがなんだか嬉しい。
だから彼女は頷いた。
「うん……」
「さて、俺の望みを叶えて貰ったことだし、お前の期待にも応えてやろう」
ご褒美だ、セブン。
そう言って抱きしめてきた力強い腕に、
「期待なんかしてないって言ってるだろ」
と言いながらセブンはおとなしく身を委ねた。
「自分がしたいだけだろ」
「そうとも言う」
キングのばか、という捻りのない悪態は、降ってきた唇に吸い込まれていった。
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