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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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ようやく演習のレジュメが終わりました。そんなわけで懲りずに変態嘉音くんシリーズです。
いつも通りの大暴走なので格好いい嘉音くんは幻想と化しています。
さて、ここでお知らせですが、今日から一週間ぐらいかけてブログを「うみねこのなく頃に」の二次創作専用のものにしようと考えています。それに伴いオリジナルの作品は「花待館」に移動します。今後もよろしくお願い致します!
では、どうぞ。

雪降りランタンに口付けを



拍手[4回]


クリスマス。
それは欧米で生まれた行事で、イエス・キリストの誕生日を祝うものである。
が、しかし。日本ではそんなことはお構いなしにカップルがラブラブデートを繰り広げたり、色々な店が客の争奪戦を繰り広げたり、はたまた冬休み前の最後の登校日だったりする。
それはともかく、本日はクリスマスである。

雪降りランタンに口付けを

六軒島の右代宮本家はクリスマスパーティーの準備で大わらわであった。ただし一部を除いて。その一部というのは受験を控えた一人娘の右代宮朱志香のみなのだが、現在に限って準備に加わらないものが数名いた。
「トリック・オア・トリート!」
「きゃっ!ベ、ベアト!?」
赤と白のフリルやレースが可愛らしいゴスロリ風のサンタドレスを身に纏った朱志香に背後から抱きつくのは六軒島の魔女・ベアトリーチェである。
「朱志香、トリック・オア・トリートだぞぅ?」
ベアトリーチェは至極楽しそうに朱志香に抱きついたまま笑う。朱志香は仕方ないなと困ったように笑って、小さな包みを魔女の手の平に乗せた。
「メリークリスマス、ベアトリーチェ」
「なんだ、妾へのプレゼントを用意していたのなら普通に来るのであったな!」
「用意してるに決まってるだろ?トリック・オア・トリートなんて言わなくたって……」
「妾はハロウィンの方が似合うと思うてな……でも妾は嬉しいぞ!」
「喜んで貰えて良かったぜ!」
朱志香の部屋のベッドの上でそんな微笑ましいやり取りをする仲睦まじい少女達をじっと見ている一つの影があった。
「あの魔女め……僕の朱志香さんを僕の朱志香さんを僕の朱志香さんを……」
言わずもがな朱志香の恋人である使用人の嘉音である。彼は本来ならば食堂でツリーでも飾り付けているはずなのだが、どういう訳か朱志香のクローゼットの中に潜んでいた。ついでに言えば彼の機嫌はすこぶる悪い。婚約までした愛しの朱志香が魔女と仲睦まじく戯れていたからである。
「朱志香さんは僕の嫁なのに……それにしてもこのクローゼットいい匂いがする……朱志香さんの匂いかな」
が、しかし、彼の現在地はしつこいようだが朱志香のクローゼット。彼女が普段着ている洋服の宝庫である。さわり心地の良い生地と朱志香の移り香らしい甘い匂いに嘉音の不機嫌はたちまち緩和される。そしてこの匂いだけで朱志香が微笑むのを想像してみる。
『嘉哉くん……この服、新しく買ったんだけどどうかな……?』
可愛らしく頬を染めて彼女は新しいワンピースを身に纏ってこちらを見つめる。その仕草が愛おしくて彼は朱志香の頬を包む。
『とてもお可愛らしいです……朱志香さん』
『嘉哉くん……ありがと……』
朱志香は恥ずかしがって俯いてしまうだろうから、その可愛らしい顔をこちらに向かせて見つめ合うのだ。
『朱志香さん……』
『うん……?』
『あなたがあまりにお可愛らしいから……食べてしまいたくなってしまいます』
そう言えば彼女はますます頬を赤く染めて、恥ずかしげに笑うだろう。嘉音の大好きな太陽のような微笑みとはまた違う、恋する乙女のはにかんだ表情はきっと宇宙で一番可愛らしい。
『嘉哉くんなら……いいよ……?』
嘉音は感無量で朱志香の温かい身体を抱きしめて、桜色の唇に己のそれを近づける。
『朱志香さん……愛しています!』
ずべしゃっ。
彼女と口付けを交わしたと思ったら嘉音は朱志香の服に頭を突っ込んでいた。
「朱志香さん……僕はあなたの匂いだけでこの程度の妄想が可能です……早くいちゃいちゃしましょうね」
このときに限って嘉音の頭からは自重という言葉は吹き飛んでいたのであった。
「な……なあベアト」
不意に朱志香の不安そうな声が聞こえて彼は我に返る。彼女にもしものことがあったら大変だ。魔女が聞き返す。
「どうした朱志香?」
「この部屋……何か居ないか?」
「ふむ……不審者は居ないはずだがの」
ベアトリーチェが首を傾げるが、朱志香はふるふると首を横に振る。可愛い。
「なんかクローゼットから物音がして……」
「ふむ。安心するがよい朱志香。妾がそなたの平穏のために確かめてやろう!」
視界が遮られたと思ったら、がちゃ、と音がして目の前が明るくなった。
「……あ」
「え……?」
「……おい」
目の前の魔女が明らかにげんなりした顔になった。
「ちょっとお前、クローゼットから出てそこに座れ。妾が直々に制裁を加えてやろう」

数分後。ようやくベアトリーチェの説教(「ストーキングなどをしていないで真面目に仕事をしろ」という至極まともなものであった)から逃げてきた嘉音はバラ庭園を歩いていた。
「あの魔女め……ちょっと自分が朱志香さんと仲がいいからって愛し合う二人をくっつけさせないだなんて……でも朱志香さん、可愛かったな……」
もとはといえば仕事も放り出して朱志香のクローゼットに潜り込んでいた嘉音自身に原因があるのだが、今の彼にはそんなことは些細な問題だった。先ほどベアトリーチェの説教を受けていたときに見た戸惑う朱志香の表情がとても可愛かったからである。
「そういえば……結局渡せなかった……はぁ……あの魔女め!」
ポケットの中から小さな箱を取りだして溜息を吐く。そしてまた魔女への恨みを募らせる。
嘉音がクローゼットに潜り込んでいた理由は唯一つ、朱志香にクリスマスプレゼントを渡すためであった。この日のために節約に節約を重ね、朱志香を盗撮するためのフィルム代さえも涙を呑んで我慢して、休みの日を存分に使って買い求めた愛しい朱志香へのクリスマスプレゼント。これが渡せるのならば、今日一日の仕事を全て放り出して雷を落とされても嘉音は本望だった。
が、しかし。現実はそんなに甘いものではなかった。抜け出して朱志香に会いに行こうと思ったら仕事をしていなければいけないはずの紗音がゲストハウスにいる譲治(新島で仕事があったらしく、ついでにと泊まりに来ていた)のもとに脱走していたり、朱志香が忙しそうだったりとなかなかタイミングが合わないのである。
「何処か無理にでも時間を作って渡さないと……ん?」
バラ庭園の真ん中に見知った影を見つけたような気がして立ち止まる。
はたしてその影は仕事をしているはずの紗音と譲治であった。
「譲治さん……」
「紗代……」
「譲治さん……」
「さ、紗代……」
名前を呼び合って見つめ合うだけという行動をしているだけで、その先にはなかなか進まない。
「何だあれは……」
ぼそりと呟いた所で見つめ合う恋人達には届かない。
「譲治さん……」
「紗代……仕事は大丈夫なのかい?」
「大丈夫です、それより私譲治さんと……」
紗音は譲治の手を両手で握りしめ、自分の方に引き寄せる。
「ラブラブ……したいです!」
「うん、気持ちは嬉しいんだけど……そろそろゲストハウスに入らないかい?」
「譲治さんったら……照れ屋さんなんですからもう!」
進んだと思ったらしょうもないことを話し合っている。紗音はともかく譲治はバラ庭園でいちゃつくことの恥ずかしさと12月の寒空の中でコートも着ずに立ちつくしているのとで震えていた。
「いやほら紗代、紗代へのプレゼントも僕の鞄の中だし!」
「プレゼントですか!嬉しいです!私も譲治さんに愛情てんこ盛りのラブラブセーター編んだんです!」
「嬉しいよ、紗代……プレゼント渡したいからゲストハウスに入らないかい?」
「はい、譲治さん!セーター以外にも期待してくださいね!」
「紗代のブレンドしてくれる紅茶かな?期待しているよ!」
そうして二人は仲良く手を繋いでようやくゲストハウスへと歩いていった。
「やっと行ったよ……譲治様風邪引くだろあれ……僕も朱志香さんと……いちゃいちゃしたいなぁ……」
そう願って瞼を閉じれば自然と朱志香が微笑みかけてくれる。
『嘉哉くん!』
『朱志香さん……』
嘉音の瞼の裏の朱志香は頬を赤く染めて後ろ手に隠していた細長い包みを取り出す。去年もらったものよりも包み紙が格段に高級だ。
『これ……クリスマスプレゼント!べ、別に恋人同士だからって嘉哉くんのだけ奮発した訳じゃないんだからな!』
朱志香の言葉が照れ隠しなことぐらい彼には分かっている。その愛情が嬉しくて、緩む頬を抑えきれない。
『ありがとうございます……今年は、僕だけに奮発してくれたんですね……中を見ても?』
『う、うん……気に入ってくれると嬉しいんだけど……』
先ほどよりも頬を染めてもじもじと嘉音の反応を待つ彼女が可愛らしい。だからその仕草をじっくり見つめながら包みを開ける。中から現れたのは紺色の生地に金色のストライプの入ったネクタイだった。
『ネクタイ、ですか』
『うん……この間、嘉哉くんからネクタイもらったから……その、嘉哉くんにも似合いそうだなって』
彼を見つめる朱志香は耳まで赤く染まっていて、瞳もこころなしか潤んでいる。とても可愛い。
そう言えばこの間朱志香にネクタイを贈ったことを思い出す。いつも同じ柄というのも味気ないだろうと一生懸命探したのを思い出して、彼女も同じように一生懸命嘉音に似合う柄を探したのだろうと想像する。
『素敵な柄です……朱志香さんが僕に似合うと言ってくれるなら、きっと似合うはずですよ』
『そ……そうかな……それなら良かった……』
恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに笑う朱志香に心臓の鼓動が高鳴る。
『朱志香さん』
『嘉哉くん……?』
きゅっと彼女の両手を握って、嘉音は真っ直ぐ朱志香を見つめる。
『知っていますか?』
『え……何を?』
『ネクタイを異性に贈る意味……です』
『……?』
彼女が首を横に傾げる。可愛い。あまりに可愛くてその身体を腕の中に閉じこめる。
『よ、嘉哉くん!?』
『知りたいですか?』
『う、うん……』
『ネクタイを異性に贈るのは……その異性を束縛したい……という意味があるのだそうですよ』
耳元で囁けば朱志香はびくりと体を震わせた。
『あ、え……そ、束縛!?』
『僕は朱志香さんになら束縛されたいです……朱志香さんは……いかがですか?』
『え、えっと……わ、私も、嘉哉くんになら……その、えっと……!』
朱志香が腕の中でわたわたと言葉を紡ぐ。ああもう可愛らしい。だから嘉音は朱志香の頬を優しく包んで顔を近づける。
『朱志香さん……』
『よ、嘉哉、くん……』
そうして、そのまま唇を重ね合わせた。
「朱志香さん……愛しています……」
「おい嘉音。お前仕事はどうした」
朱志香の盗撮写真を抱きしめて感無量の嘉音はベアトリーチェの声で現実に引き戻された。いろいろと規制が必要な妄想をやめて渋々振り向く。
「仕事なんか知りませんよ。というか何でここにいるんですか。存在全否定しますよ?」
「あのな……妾お前に存在全否定されても朱志香に言いつけるだけだからいいんだが」
「じゃあ人格全否定?」
ベアトリーチェの顔が引きつる。
「お前朱志香に近づくやつには慈悲の欠片もねぇのな」
「あるわけないじゃないですか」
だよなぁ、と魔女は溜息を吐く。
「それより大変だぞ!」
「何がですか?」
「朱志香に……」
「朱志香さんに?」
「朱志香にウサ耳が生えた!」
「なんだってぇ!?」

「朱志香さん!」
朱志香の部屋に駆けつけると、部屋の主である朱志香がくるりとこちらを向く。サンタドレスが相変わらず可愛らしい。
がしかし、彼女の頭には天井に向かってぴんと立つグレーのウサギの耳が生えている。それでもやっぱり可愛い。
「嘉哉くん!……どうしよう、ウサ耳が……」
「魔法でも掛けられましたか?」
朱志香の手を取ってそう問いかければ、彼女は不安そうな顔でこくんと頷く。
「実はその……あのオッサン……ロノウェが来てさ、『悪魔が贈るらぶらぶ☆クリスマス大特集』って雑誌に載ってたのを適当に……」
「……あのオッサン……」
実はウサ耳朱志香に萌えたいがためにやったことではなかろうかと嘉音は疑わざるを得ない。ロノウェにとっては全くもっていい迷惑だろうが、今この瞬間、嘉音は疑念と同時に感謝の念までも抱いていた。
ウサ耳を不安そうにぴょこぴょこと揺らす朱志香は可愛い。普段から可愛いのだがウサ耳を付けると小動物的な可愛らしさが備わって、ついつい膝の上に載せて可愛がりたくなる。
「どうしよう……嘉哉くん……」
だから彼女の手をきゅっと握りしめて囁いた。
「大丈夫です、朱志香さんは僕がお守りします!」

六軒島で怪奇現象が起こるのはいつもの事である。全くもって不思議な事ではない。
だから朱志香にウサ耳が生えるのも不思議な事ではないのだが、戻す方法が分からない事にはどうしようもない。とりあえず部屋を出てふらふらする事にした。
「そういえば尻尾って付いているんですか?」
「え……ど、どうだろう……」
聞けば朱志香は頬を赤らめて腰のあたりを探る。
「……あ、生えてる……」
ほら、と背を向けた彼女には間違いなくグレーの尻尾が生えていた。ウサギの尻尾が皆そうであるように、小さくて丸くてふわふわしている。
「触っても?」
「だ、だめ……恥ずかしいから駄目だぜ!」
「そんな!一生のお願いです、ちょっと触るだけですから他に何もしませんから朱志香さんのふわふわの可愛らしい尻尾を触らせてくださいっ!」
食い下がれば朱志香は頬を赤く染めてぶんぶんと首を横に振る。
「いくら嘉哉くんのお願いでもそれは駄目だぜ!」
「どうしても……駄目ですか?」
「だ……駄目っ!」
きっぱりと拒絶されて嘉音は少しだけショックを受けた。だがしかし朱志香の嫌がる顔が可愛いので良しとする。
「分かりました……諦めます。朱志香さんのウサ耳が揺れるのを眺めて我慢します……」
「うん……ごめんね……」
「朱志香さんは悪くありません!全てはあのオッサンが悪いんです!」
しょげた顔を見たくなくて、朱志香の肩を掴んで叫べば彼女は驚いた顔をして、それから小さく笑った。
「朱志香さん?」
「嘉哉くん、可愛い」
「……へ?」
「サンタの格好してそういう事言うの、本当可愛いぜ!」
嘉音は可愛いと言われるのは好きではない。朱志香と恋仲にならない時分はそう言われるたびに反発していた。それなのに今、彼女に可愛いと連呼されているのに全く不快にならない。
愛の力とは全く素晴らしい。
だから彼も朱志香の手を握って見つめ合う。
「朱志香さんの方が可愛いですよ……」
「嘉哉くん……」
「朱志香さん……」
そうして、二人の唇が近づいて。
「……あ!譲治兄さんに勉強教えてもらう約束忘れてた!」
不意に朱志香が身を翻して走って行ってしまったので嘉音は一人その場に取り残される。
「……忘れるほど僕と一緒にいたかったんですね……朱志香さん、今行きます!」
気を取り直していつも通り朱志香を追いかけ始めた彼に、彼女の頬がリンゴのように赤く染まっていた事など知るよしもないのであった。

嘉音がようやっと朱志香を捕まえたのはバラ庭園のあたりであった。
「朱志香さん!」
「嘉哉くん!?」
追いついて後ろから抱きしめる。驚いて身を捩る様が可愛らしい。
「僕もお供させて頂きます」
「え、べ、別に構わないぜ?」
「ありがとうございます、朱志香さん……」
「うん……」
そんな事を囁きあっていると、向こうから譲治と紗音がやってくるのが見えた。
「お、来た来た!譲治兄さん、紗音、こっち!」
朱志香がウサ耳をぴょこぴょこ揺らしながら飛び跳ねる。あんまり飛ぶとスカートがめくれてしまうのではと嘉音が密かに危惧したとき、事件は起こった。
「朱志香ちゃん、ちっとも呼びに来ないからどうしたのかなと思ってたんだけど……」
「い、いやその、ちょっと立て込んでて……きゃっ!?」
冬らしく強い風がバラ庭園を吹き抜ける。朱志香のスカートの裾を巻き上げる。
このままではまずい。何故なら朱志香のスカートの中身を見て良いのは嘉音だけだからである。
だからその瞬間、彼はほとんど無意識に動いていた。
「お嬢様のスカートの中身を見て良いのは僕だけですっ!」
「きゃっ、か、嘉音くん!?」
譲治や紗音に見えないように朱志香の前に滑り出る。ちょうど嘉音の頭で見たくとも見えないはずだ。
よくやった僕、と彼が思ったのもつかの間、赤と白のひらひらの布が目の前に垂れ下がる。風が止んだのだ。
「か……嘉音くん……」
「あれ……?」
とりあえず前に一歩踏み出すと布は視界から消え去った。
「……まさか」
朱志香の方を見ると彼女は頬を先ほどよりも真っ赤に染め上げて羞恥に震えていた。きっ、と涙を湛えた眼に睨まれる。まずい。これは非常にまずい。朱志香のスカートの中に頭を突っ込みたくてあんな行動をしたと思われていそうである。
「あ、あの、朱志香さん……これは……」
「嘉哉くんの……変態~っ!」
事実そう思っていたらしく、嘉音の言葉を遮って朱志香は走り去ってしまった。
「ち、違うんだ朱志香ぁぁぁぁっ!話を聞いてぇぇぇっ!」
彼の叫びが空しくバラ庭園にこだました。

それから色々とあって、嘉音と朱志香が二人きりになったのは夕食後の事であった。
「朱志香さん……今日は色々と申し訳ございませんでした」
「あ……そ、その、うん……びっくりしただけだから」
ふわりと微笑んでくれる朱志香が愛おしい。ポケットから小さな箱を取りだして朱志香の手の平に載せる。
「メリークリスマスです、……朱志香」
「これ……私に?」
「はい。気に入ってくださるといいのですが……」
朱志香はゆっくりと小箱を開け、中に納められていたものに僅かに目を見開いた。
「指輪……?」
「はい。僕と朱志香の……婚約指輪です」
それを聞いた朱志香は指輪を左手の薬指にはめる。サイズもぴったりだ。測っておいて良かった。
「私と……嘉哉くんの……ありがとう、嘉哉くん!」
朱志香がぱふんと嘉音に抱きついた。温かくて柔らかいその身体を嘉音は思う存分抱きしめる。
「嘉哉くんに……私もプレゼント用意したんだぜ……?」
「いただけますか……?」
「うん……」
彼女が体を離して小さな包みを彼に手渡す。
「開けても?」
「うん……気に入ってくれたら、いいな」
朱志香の視線を感じながら包みを開ける。
「懐中時計……凄く、見やすいです」
「何か実用的なものの方がいいかなと思って……」
その気遣いが嬉しくて、彼は再び朱志香を抱きしめた。
「ありがとうございます、朱志香!」
「嘉哉くん!」
「今年は最高のクリスマスになりました……」
「私も、凄く楽しめたよ……」
朱志香の目をじっと見つめる。彼女も嘉音の目をじっと見つめる。
「朱志香、愛しています……」
「嘉哉くん……」
そうして、二人の唇がゆっくりと重なった。

六軒島は今日も平和である。朱志香にウサ耳が生えたり魔女がその辺で遊んでいたりと不思議な事は多いけれど、若い恋人達は今日も元気である。
今宵はクリスマス。魔女がハロウィンを混ぜたがったようではあるけれど、クリスマスである。
この聖なる夜に、全ての者たちに幸あらんことを!
……というよりも、僕と朱志香さんが幸せでいられますように!

魔女の棋譜

使用人・嘉音
なんやかんやで朱志香と幸せ恋人ライフを満喫中。色々と買い物をしているようだが、そんな貯金で大丈夫か?
「大丈夫だ、問題ない」(本人談)
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プロフィール
HN:
くれさききとか
性別:
女性
職業:
社会人
趣味:
読書、小説書き等々
自己紹介:
文章書きです。こちらではうみねこ、テイルズ、FF中心に二次創作を書いていきたいと思います。
呟いています→@kurekito

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