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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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ええと、この間の「Romance~」のNG編です。
ホントにごめんなさい。
嘉音くんが変態です。
ただの変態です。
あと妄想しすぎです。

では、どうぞ。




拍手[1回]


「僕だって……お嬢様のことが好きだった……!お嬢様……!」
それでも、金蔵亡き今、朱志香が当主になるのは時間の問題。
そうなればきっと、嘉音が彼女と結ばれることはないだろう。
--ならば、僕がその障害を取り除きますから……あなたを鳥籠から出しますから……!だから、お嬢様……!
「朱志香様は僕の嫁ぇぇぇぇぇぇ!」
もはやいろいろ台無しだが、朱志香への愛が暴走しきった嘉音は全く気づかない。
「もうちょっと給料溜まったら最高級の婚約指輪買いますぅぅぅぅ!」
彼はまだ16歳なので結婚できないのだが、嘉音はそんなことに微塵も気づかない。ますますデッドヒートしつつある彼の耳に、哀れむような声が飛び込んできた。
「おいたわしや……嘉音さん……」
「……熊沢さん、何やってるんですか」
急に冷めたように振り向くと、東屋の柱から半身を出した熊沢はもういちどおいたわしや、と呟いた。
「この年寄りは何も見ておりません……ああそれでもおいたわしや……」
「いや、ですから」
嘉音の返事も聞かず、熊沢は語り続けた。
「まだ嘉音さんは結婚できない年齢なのに……」
「聞いてたじゃないですか!」
聞いていた。
明らかに聞いていた。
しかし老女はほっほっほ、と笑って首を横に振る。
「ですからこの年寄りは何も見ておりません……ああおいたわしやお嬢様……嘉音さんからの婚約指輪はいつになることやら……」
「最初から聞いてた!?」
再度叫ぶと、熊沢は急にしんみりとした表情になった。
「奥様の警戒も、若いお二人には恋の炎が燃え上がる要因となったのです……」
そう言いながら取り出した一冊の本に、嘉音は戦慄した。
「そ、それ……僕の……!」
「嘉音さん、使用人室の押入の中にこの本が」
「僕の『お嬢様とらぶらぶ☆ティータイム』じゃないですか!」
熊沢が取り出したのはB5サイズの100ページほどの本。この『お嬢様とらぶらぶ☆ティータイム』、いわゆる同人誌と呼ばれるものだが、嘉音はこの本にとても強い愛着を持っていた。
「嘉音さん、あまり右代宮家の内情を脚色しすぎるのはどうかと思いますよ?」
そう、この同人誌、嘉音の著作だったのである。
去年の夏まで3ヶ月間頑張った。
漫画の製作技法も小説の書き方も1人で勉強した。
同人誌の出し方も某夏の大型イベントへの申し込みも紗音に教わりながら頑張った。
「いいんです!僕とお嬢様の甘酸っぱい恋の物語なんですから!」
内容は紗音の検閲が入って、結局は嘉音と朱志香の身分を越えた甘いラヴストーリーになってしまったが、彼は後悔していない。
「右代宮家のことを出し過ぎるのも良くないと思いますよ……ほっほっほ……」
熊沢は嘉音の手に同人誌を置くと傘を差して東屋を去っていった。
「良いじゃないですか……」
実際、嘉音の初めて出した同人誌は売れた。紗音に店番をして貰ったことも功を奏したのかもしれない。
彼が店番の時に売れるのは紗音が譲治との新婚風景を描いた『貴方と私の朝の風景』(こちらも100ページほどの本である)が多かったからだ。一部の客には嘉音の本と彼の顔を見比べて怪訝な顔をする者もいた。
だが、そんなことは些細なことだと思ったのだ。
張り切って新刊を出したその年の冬のイベントも、今年の夏のイベントも二人は満喫した。
しかし、紗音はともかく嘉音の現実は同人誌のようにはいかない。
朱志香と愛を語らいながらお茶を飲み、あまつさえ夏妃に怒られるようなことをすることなど夢のまた夢だ。
だから嘉音はせっせと年二回のイベントに出かけては朱志香の高校の生徒が出している彼女が描かれた本を買いあさり、自室で読みふけるのだった。
「良いじゃないですか……婚約指輪を買うお金を今から貯めていても、結婚式の計画を立てていても……」
たとえ叶わない恋だとしても、嘉音の朱志香への気持ちに嘘はない。だからこそ彼は創作活動でその恋心を存分にアピールし、人間になれた暁には同人誌を一緒に読んで彼のことをもっと好きになって欲しいのだ。
嘉音はそのための努力は惜しまない。仕事を適当にさぼって朱志香の学校へ双眼鏡持参で行ったとしても、朱志香に幻滅されることは決してしない。
「お嬢様は僕の嫁なんですから……」
普段の仏頂面はどこへやら、若干鼻の下がのびた嬉しそうな顔で嘉音は呟くと、同人誌の表紙に書いたメイド服の朱志香に頬ずりした。


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