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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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段々暖かくなってきましたね。……暑くなってきた気がします。
仕事のほうも頑張れそうです。まだまだ通販についてのアンケートも募集中です。
あと零式は2週目7章に入りました。
そんなわけで今回もキンセブリア充シリーズ。
では、どうぞ。

リア充たちの結末~幸せな奇跡~



拍手[1回]


寒い冬の朝のことだった。
その日もセブンの部屋に朝食をとりに来ていたキングがこんなことを言った。
「そろそろ準備をするか」
随分前に結婚するぞ、と言われて頷いた記憶があるが、それかとセブンが聞くと、彼はそうだと答える。
「まだ籍も入れていないことに気付いてな」
「そういえばそうか」
じゃあ、と彼女は言葉を紡ぐ。
「先にみんなに報告しないと」


リア充たちの結末~幸せな奇跡~


「結婚することにした」
そうキングとセブンが告げたときの教室の様子はそれはもうとんでもないものであった。
素直に喜ぶものが数名、諦めたように祝福する者が数名、そして「月のない夜が楽しみだな」と物騒な発言をするサイスと「セブン泣かせたら闇討ちだから☆」とやっぱり物騒な発言をするシスコン、もといジャック。
ついでに一瞬にして混沌の坩堝と化した教室を呆然と見ているモーグリとトンベリというのが内訳だ。
「本気か?」
「本気だ」
キングがエイトの短い問いに短く答える。
「次の作戦まであと3日しかない。結婚式の準備は終戦のあれこれで当分出来ないぞ」
「分かってる。でも、結婚する、って事だけは言っておきたくて」
セブンがはにかんでそう言った。可愛い。
「三日後の作戦で終戦だ。そうしたら時期を見て式を挙げる」
「では、お二人の結婚式のためにも頑張りましょう!」
そう言ったのは素直に喜んでくれたデュースだ。
「セブンのウェディングドレスも選ばないとね」
同じく喜んでくれたレムもそう笑った。
「じゃあ~、みんなで選びにいこうよ~」
「あたしゼ○シィ買ってくるわ」
シンクもケイトもそう笑う。あの生温かい視線が嘘のようだ。
「何はともあれ、キング、セブン。おめでとうございます」
クイーンがそう微笑んで、サイスが膨れっ面の泣きそうな顔で「幸せになれよ」と言った。



魔導院は辺り一面瓦礫だらけで、嘗ての0組の教室も破壊されていた。
マキナやレムはクリスタルに昇華し、0組は傷だらけで生還した。
「結局、お前たちの結婚式、挙げられなかったな」
楽しい話の途中で、エイトがふと呟いた。
「指輪も買いに行かせてやれなかった」
「気にするな」
キングはそう呻く。
「また考えるさ」
セブンの手をぎゅっと握って言えば、セブンが頷いた。
「それに、もう戦争はないんだ。ゆっくり考えるよ」
「そうだな。急いで挙げることはない。結婚祝いにチョコボのクッションをやろう」
エースが血で汚れた顔で笑った。
「YES、NOって書いてあるやつ」
「そんなのどこに売ってんだコラァ」
ナインが売ってるとこ見た事ねぇ、と笑う。
「やめなさいエース、シャレになりません」
トレイが諫める。
「そうだよ~、それよりコスプレセットがいいなぁ」
ジャックのその言葉にうんうん、と頷いていた妹たちがぎょっと目をむいた。
「あんた何考えてんの!?」
「忘年会か!」
ケイトとサイスがつっこむ。
「え~、いいと思うんだけどなぁ」
「またの機会にな」
残念がるジャックに、セブンが微笑んだ。
もう、またの機会なんて来ない。
ウェディングドレス選びも、結婚祝いも、結婚指輪も、何もない。それどころか、0組の存在すら忘れられてしまうだろう。
これが、終わりなのだ。
それでも、とキングはセブンの手を握り締めた。
「キング?」
「セブンと、結婚できて良かった。お前と出会えて、良かった」
セブンが照れくさそうに笑った。
「私もだよ。……こんなにいい兄弟に、恋人に巡り会えて良かった」
もう誰も自重しろとは言わない。
例え今週の標語も『部屋でやろう』だとしても。



傷だらけの身体で談笑するのは疲れるもので、一人、また一人と兄弟たちは体力も気力も尽きた者から眠りに落ちていった。
それが永遠の眠りであることはわかっていたが、最後に残った二人は素知らぬふりをした。
「……結局、また出会った時に戻ったな」
キングが懐かしげに呟いた。
「なにが?」
セブンが首を傾げれば、彼は2人きりだ、と言う。
アレシアに引き取られて間もない頃、外局には2人の子供しかいなかった。
最初に引き取られたセブンと、間をおかずに引き取られたキングだ。
考えてみれば、あの頃から2人の間にはほかの兄弟たちとはどこか違う絆があった。
「セブン、俺はおそらくあの頃から、お前が好きだった」
血まみれの顔が優しく笑う。その表情がとても愛しい。だから、セブンも微笑んだ。
「私もだよ、キング。言葉が無くても心が通ってる、そう感じたときから……キングのことが好きだった」
そうか、とキングが言う。照れくさそうに。
その頬に血の気が戻ることは無いけれど、それでも、愛しい。
「マザーの子守歌、いつかエースに歌ってやりたかったな……少ししか私も覚えてなくて」
「俺はお前に歌ってやりたかった。……子供の頃から、ずっと」
もう握られた手に力は入らない。
2人の体力も気力も、限界だ。
それでも、セブンは唇を開く。
「終わりまであなたといたい……もうそれしか確かな思いがない……か……」
「まさに……今の、俺たちだな」
セブンと最期を迎えられて幸せだ。
そうキングが言った。
「幸せ、か……そうだ、キング、誕生日おめでとう。……ようやく、結婚、出来るな……」
もう、セブンの体力は尽きてしまった。
気力だって限界だ。
朱雀を守って、恋人と……伴侶と兄弟たちと最期を迎えられる。
それはとても幸せだ。
(あぁ、でも)
一つだけ。一つだけ願うなら。
(この先の未来を、見たかったな……)
仲間と、兄弟たちと、……キングと共に。
「セブン」
優しい声が、遠い。
「ずっと、愛してる、キング」
おやすみ。
それだけを絞り出して、セブンは瞼を閉じた。
この先の未来を、幸せな夢を見るために。



「セブン」
呼んだ名前に、応えはない。
「俺も、愛してる」
間に合わなかった愛の言葉は、虚空に消えた。もうキングも保たない。わかっているのに、セブンももう目覚めないのに、不思議と心は凪いでいた。
朱雀をルルサスから守れた。兄弟たちが一人も欠けることがなくここまで来た。
それは幸せなことだったから。
(だが、それでも……)
セブンと生きていく未来が見たかった。それだけが彼の心残りだ。
「セブン……」
血の気のない、冷たい身体は傍にある。
けれど、もし次の生があるならば、キングの魂がセブンに導いてくれるだろう。
だから、握り締めた小さな手を、そっと離した。
「俺たちは、ずっと一緒だ。今も、昔も……これからも」
未来永劫、どんなに生が巡ろうと、愛している。
そっと呟いて、キングも目を閉じた。
永遠に醒めない夢を見るために。



夢を見た。
他愛もない夢だ。
朱雀ペリシティリウム高校でバンドを組んでいるキングは、ある日偶然見かけたセブンという少女に一目惚れする。
セブンは大人しくて可憐で、たまに鋭い少女だった。
どこか懐かしい彼女を気合いを入れてナンパして、すったもんだの末に恋人になった。
そこから2人は同じ大学に進み、孤児院と警察に就職すると同時に結婚する。
そうして、今度こそ幸せを掴みとる。
そんな、幸せな夢だった。



「夢……?」
ぱち、と目を開いたキングは呆然と呟いた。
痛みはほとんど感じないが、体が重い。血を流しすぎたらしい。
が、重い首を回してみれば、見慣れた景色は間違いなく0組の教室だ。
死んだならば、夢など醒めるはずがない。
いや、夢などそもそも見ない。
であるならば、自分たちは生きているのだろうか。そうならば、もし奇跡が起こったならば、と隣を見た。隣には眠りにつく前と同じように、愛しい彼女が眠っている。
「セブン」
軌跡が起きていることを願って、重い体をおして、セブンの白い頬を撫でる。
いつもの温かさが手のひらに伝わって、キングは思わず泣きそうになった。
そのまま顔を近付けて、そっとその唇に己のそれを触れあわせる。
決して長くはない口付けのあと、セブンの瞼がゆるゆると開いた。
「あ、れ……生きて、る?」
寝起きのような掠れた声さえ愛おしい。
「ああ……生きている」
2人であたりを見回せば、兄弟たちはいつもの寝顔で、安らかな寝息を立てている。
「生きてる」
つぅ、とセブンの頬を涙が一筋伝わった。
「私たちは、ここにいるんだ……」
生きて、ここにいる。
それが嬉しいと思える。
その僥倖を噛み締めて、キングはセブンの細い身体をかき抱いた。
「ずっと一緒だ」
「うん」
「あいつらが言ってたみたいに、指輪を買いに行こう。……結婚式を、挙げよう」
うん、とセブンが頷いた。
「まず、隊長に報告しないとな」
「ああ。きっと喜んでくれるだろう」
う~ん、と兄弟の誰かがなにやら言葉を発した。
もうすぐ起き出すことだろう。
誰かの足音が聞こえる。
夢見た、新しい未来が始まる。
風にはためく朱い旗のそばを、例の『部屋でやろう』の標語プリントが舞い上がっていった。

終わり
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