ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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こんばんは。もうすっかり夏ですね。
今回は零式「もし……」でキンセブ。「君に心を伝えるために」の続きのお話。
ところでオリジナルのほうでは作品数が多いので目次を作っているのですが、こっちでも作ったほうがいいですかね……?
では、どうぞ。
ただ一つの伝えたい言葉
今回は零式「もし……」でキンセブ。「君に心を伝えるために」の続きのお話。
ところでオリジナルのほうでは作品数が多いので目次を作っているのですが、こっちでも作ったほうがいいですかね……?
では、どうぞ。
ただ一つの伝えたい言葉
本日の授業が終わるとともに、キングは教室から出て駆け出した。自分のクラスの魔法陣を抜けて、目指すは愛しい彼女のクラス。他クラスに入っちゃ駄目クポ、というモーグリの注意も何のその、さっさと魔法陣に侵入して瞬く間に彼女……セブンの教室に辿り着く。息を整えると同時にドアが開いて……出てきた彼女は困ったような顔をした。
「何してるんですか」
ただ一つの伝えたい言葉
「何って、セブンちゃんとデートしようと思って」
それ以外に何が、と聞けば、初めてセブンがバンドの練習に来たときのように彼女の目に剣呑な光が宿る。
「わかりました。じゃあ練習に行きましょうか」
「デートは?」
「私は夕方からバイトですから、まっすぐ寮に帰ってくださいね」
セブンがこの学校……朱雀ペリシティリウム学園高校の生徒だと知ってから1ヶ月。キングと彼女の関係は変わらない。デートの名目でバンドの練習に連れて行かれ、彼女は最後まで見学するかバイトに行ってしまう。まっすぐ帰宅しろ、という言葉を添えて。おかげでギターの腕が上がった。ついでに散財もしなくなった。が、セブンが一向にデートしてくれないのである。
「俺、たまの帰り道だけじゃ我慢できないんだけど」
そう言えば、彼女は困ったように俯いた。
「セブン?」
「だって今日、バイトですし」
「帰りとか。寮の方向は同じだろ?」
それはそうですけど、とセブンはゴニョゴニョと口ごもる。その様は可愛らしいが、同時に煮え切らないものを感じるのも事実である。だから聞いてみた。
「デートは嫌か?」
「……嫌では、ないですけど」
「ならバイトが終わるまで待つ」
セブンが断れないのを良いことに押し切る。押し切られたセブンは納得いかない顔をしながら渋々頷いたのであった。
「では、私はこれで」
バイトの時間が近づくと、いつものようにセブンは空き教室から出て行った。その背中に後で、と声を掛けると、銀色の頭が縦に振られた。
「ようやくセブンちゃんとデートですか」
トレイがやれやれとため息をついた。
「キングにしてはよく続いてますよね」
「ね。前は1回デートしておしまいだったのに~」
ジャックが同調する。
「でもまぁ、セブンちゃん可愛いもんね~」
「あとは惚れた弱み、というやつですか。振られたら困りますね」
「そうそう。なんか本気っぽいし~。失恋ライブとか嫌だからね~」
「言ってろ!」
失礼極まりないバンドメンバーの言葉に若干傷付いたキングは座っていた机から降りて教室の扉を開く。そのまま外に出ようとすると、友人が待ちかまえていた。9組のマントを羽織った、派手なバンダナがトレードマークのその友人は、名をナギという。
「よう。愛しのお姫様はバイトか?」
「ああ。帰りに迎えにいく」
お姫様、とは当然セブンのことである。そう答えれば、ナギは実に楽しそうに目を細めた。
「なんだ」
「いやあ、セブンちゃんてあの子だろ?頼まれたら断れないって」
「ああ。可愛いよな」
「なぁ。で、そのセブンちゃんだけど」
ナギが声を潜める。もしやセブンに危機が迫っているのだろうか。彼女に迫ってくる男は自分の目の届く範囲で追い払っているが、とキングが思案していると、不穏な言葉が耳に入った。
「最近男がまとわりついているとかいないとか」
「俺だろう」
「うちの生徒らしいけど、お前だったら言わねえよ。だいたいお前、お姫様のバイトの帰りに一緒に帰ったことあんのか?」
「なん……だと……」
その男とやらは随分セブンと親密らしい。キングが長らく許されなかったバイト上がりを一緒に帰るほどに。
なんとなく、面白くない。
なんとなく、腹の中がむかむかする。
なんとなく、その男に殺意がわく。
「まぁ本命なんだから大切にしろよ」
じゃあな、とナギは魔法陣に向かって歩いていく。
「俺もセブンちゃんに会いに行こうかね」
とっても面白くない。そんなわけでキングは教室に戻ると、一言言い放った。
「ちょっとセブンとデートしてくる」
途端に上がった抗議の声はこの際聞かないことにした。
「いらっしゃいませ」
ドアをくぐると、店員の声に迎えられる。セブンがバイトしているのは楽器店に併設された小さな喫茶店だ。特に混んでいるわけでもない店内で、彼女はすぐに見つかった。
ただし、どこかで見たような男と共に。
「もう、愚痴るだけならここじゃなくても良いでしょう?」
セブンがテーブルに伏せている金髪の男の頭を撫でている。男は「でもよぉ……」と涙声でまだ愚痴っているらしい。
「気持ちは解らないではないですけど、お客さん入れられないです。話ならいつでも聞きますから、ね?」
金髪男はぐずぐずと鼻を啜りながら本当だな、と確認する。
「ええ、本当です」
その様を見るセブンの眼差しはとても柔らかい。キングには決して見せない眼差し……まるで女神エトロのようだと思った。
「邪魔して悪ぃ……礼は、ちゃんとする」
そう言って顔を上げた金髪男の額に、セブンが優しく唇を落とした。その様はとても仲睦まじく、容易にキングの堪忍袋の緒を引きちぎった。
「セブン!」
気にくわない。その心のままに彼女を呼べば、セブンと金髪男は弾かれたようにこちらを見た。
「キング!?どうしてここに……」
「あぁん?知り合いかセブン?」
「え、ええ……バンドはどうしたんですか!まだ練習のはずでしょう!」
セブンの目に浮かんでいた焦りの色はない。今はその代わりに疑問の光が浮かんでいる。
「セブンについて噂を聞いた。心配になったから来た」
なるほどそいつがそうか、と呟けば、金髪男が「なんだコラァ」と柄悪くこちらを睨む。負けじとキングが睨み返せば、辺りに不穏な空気が立ちこめる。が、その無言の険悪な空気を破ったのはセブンであった。
「2人とも座ってください」
彼女にしては珍しい、怒りを孕んだ声。その声に圧されるようにして、男2人は席に着く。すると彼女はテーブルの上のメニューを2人の間に静かに置いた。
「その中から何品でも注文してください」
「あ、ああ」
「おう」
おっとり系の彼女が珍しく見せた怒りは、少しだけ怖かった。
エスプレッソとキャラメルマキアートを運んできたセブンは、一言こう言った。
「あなたが私を本当に好きなら、信じてください」
その背を見送りながら、金髪男が口を開いた。
「おめーの言ってた噂ってアレだろ、セブンに男がつきまとってる、ってやつだろコラァ」
「何故それを?」
「相談されてたからに決まってんだろコラァ。……解決済みだけどな」
解決済みかと愕然とするキングをよそに、それより、と男が言葉を紡ぐ。
「テメェだろ、セブンのカレシコーホってのは。……あ~……何だっけ」
「キングだ。……何でナギは今頃……」
「ナギの野郎の思惑なんざ知らねえよ。俺はナインってんだけどよ、……セブンを頼んでいいのか?」
ナインが突然そんなことを言った。
「つってもアレか、分かんねーか」
「ああ、分からん」
何故こいつがそんなことを言うのだと眉間にしわを寄せていると、うーん、とナインが頭をがしがし掻いた。
「俺ぁセブンの幼なじみなんだけどよ、アイツに頼りっきりだし……たまにはアイツの役に立ちてぇと思ったんだけどな……」
セブンの恋模様を応援してやりたかったが、片思いしていた才色兼備のエミナ女史がイザナ先生とつきあっていると聞いてそれどころではなかったらしい。キングを見るまで、セブンに好いた男がいることすら忘れていた、とはナインの弁である。
「……好いた……男……?」
「おう。考えろって言われて考えたけど、つきあっても良いとか言ってたぜ」
「じゃあ……俺の今までの努力は……」
セブンに好いた男がいたなんて、知らなかった。彼女も何も言わなかったから、困っていたのかもしれない。いや、もしかしたら自分がその好いた男かもしれんと無理矢理自分を鼓舞してみる。それを見ていたナインが、ため息をついた。
「気になんなら聞いて見ろよ。……多分、無駄じゃねえと思うけど」
あ、こいつ、イイ奴だ。
ちょっとだけ嬉しくなった。
結局セブンがバイトを上がる時間まで2人はグダグダと居座り、バイト帰りにデート、というキングの企みはもろくも崩れ去った。が、そんなことより、である。
「明日からはちゃんとバンドの練習に出てくださいね?」
そう至極真面目な顔で諭すセブンの左手をぎゅっと握る。
「聞いてるんですか?」
「ああ。……セブン」
「はい」
「好きな奴がいるって……本当か?」
セブンの身体がびくりと跳ねた。
「な、何言い出すんですか!そっ、それ、っ、どこで!」
「ナインが」
「ナインっ!」
セブンに叱りつけられたナインは、だってよ、と唇を尖らせる。
「セブンにはいつも世話になってるからよ」
「だからってなんで本人にばらすんですかっ!」
え、とキングは彼女を見つめる。耳が赤い。可愛い。
「言っちまえよ!」
力強い声が夕暮れのルブルムに響く。背中を押されるように、キングはセブンの腕を引いて、彼女の身体を抱き締めた。当たり前のことながら、彼女は逃げようとじたじたと身をよじる。
「え、……っ!?」
「セブン……好きだ。俺と一生添い遂げてくれ」
セブンの動きが、止まった。いや、世界が止まった、ような気がした。
「え……ええっ!?」
セブンが我に返って、世界は再び動き出す。
「俺の気持ちは初めて逢ったあの日から変わらない」
「それ、は……知ってましたけど、っ!そんな告白されても、私どう答えたらいいか……」
「分かった」
その薄い肩を掴んだまま、身体を話す。
「良ければ肯いてくれ」
セブンの銀色の頭が、僅かに、だが確かに縦に動いた。
「キング……」
初めて、名前を呼ばれる。
「好きです……」
ただ一つ、伝えたい言葉が伝わった。
「何してるんですか」
ただ一つの伝えたい言葉
「何って、セブンちゃんとデートしようと思って」
それ以外に何が、と聞けば、初めてセブンがバンドの練習に来たときのように彼女の目に剣呑な光が宿る。
「わかりました。じゃあ練習に行きましょうか」
「デートは?」
「私は夕方からバイトですから、まっすぐ寮に帰ってくださいね」
セブンがこの学校……朱雀ペリシティリウム学園高校の生徒だと知ってから1ヶ月。キングと彼女の関係は変わらない。デートの名目でバンドの練習に連れて行かれ、彼女は最後まで見学するかバイトに行ってしまう。まっすぐ帰宅しろ、という言葉を添えて。おかげでギターの腕が上がった。ついでに散財もしなくなった。が、セブンが一向にデートしてくれないのである。
「俺、たまの帰り道だけじゃ我慢できないんだけど」
そう言えば、彼女は困ったように俯いた。
「セブン?」
「だって今日、バイトですし」
「帰りとか。寮の方向は同じだろ?」
それはそうですけど、とセブンはゴニョゴニョと口ごもる。その様は可愛らしいが、同時に煮え切らないものを感じるのも事実である。だから聞いてみた。
「デートは嫌か?」
「……嫌では、ないですけど」
「ならバイトが終わるまで待つ」
セブンが断れないのを良いことに押し切る。押し切られたセブンは納得いかない顔をしながら渋々頷いたのであった。
「では、私はこれで」
バイトの時間が近づくと、いつものようにセブンは空き教室から出て行った。その背中に後で、と声を掛けると、銀色の頭が縦に振られた。
「ようやくセブンちゃんとデートですか」
トレイがやれやれとため息をついた。
「キングにしてはよく続いてますよね」
「ね。前は1回デートしておしまいだったのに~」
ジャックが同調する。
「でもまぁ、セブンちゃん可愛いもんね~」
「あとは惚れた弱み、というやつですか。振られたら困りますね」
「そうそう。なんか本気っぽいし~。失恋ライブとか嫌だからね~」
「言ってろ!」
失礼極まりないバンドメンバーの言葉に若干傷付いたキングは座っていた机から降りて教室の扉を開く。そのまま外に出ようとすると、友人が待ちかまえていた。9組のマントを羽織った、派手なバンダナがトレードマークのその友人は、名をナギという。
「よう。愛しのお姫様はバイトか?」
「ああ。帰りに迎えにいく」
お姫様、とは当然セブンのことである。そう答えれば、ナギは実に楽しそうに目を細めた。
「なんだ」
「いやあ、セブンちゃんてあの子だろ?頼まれたら断れないって」
「ああ。可愛いよな」
「なぁ。で、そのセブンちゃんだけど」
ナギが声を潜める。もしやセブンに危機が迫っているのだろうか。彼女に迫ってくる男は自分の目の届く範囲で追い払っているが、とキングが思案していると、不穏な言葉が耳に入った。
「最近男がまとわりついているとかいないとか」
「俺だろう」
「うちの生徒らしいけど、お前だったら言わねえよ。だいたいお前、お姫様のバイトの帰りに一緒に帰ったことあんのか?」
「なん……だと……」
その男とやらは随分セブンと親密らしい。キングが長らく許されなかったバイト上がりを一緒に帰るほどに。
なんとなく、面白くない。
なんとなく、腹の中がむかむかする。
なんとなく、その男に殺意がわく。
「まぁ本命なんだから大切にしろよ」
じゃあな、とナギは魔法陣に向かって歩いていく。
「俺もセブンちゃんに会いに行こうかね」
とっても面白くない。そんなわけでキングは教室に戻ると、一言言い放った。
「ちょっとセブンとデートしてくる」
途端に上がった抗議の声はこの際聞かないことにした。
「いらっしゃいませ」
ドアをくぐると、店員の声に迎えられる。セブンがバイトしているのは楽器店に併設された小さな喫茶店だ。特に混んでいるわけでもない店内で、彼女はすぐに見つかった。
ただし、どこかで見たような男と共に。
「もう、愚痴るだけならここじゃなくても良いでしょう?」
セブンがテーブルに伏せている金髪の男の頭を撫でている。男は「でもよぉ……」と涙声でまだ愚痴っているらしい。
「気持ちは解らないではないですけど、お客さん入れられないです。話ならいつでも聞きますから、ね?」
金髪男はぐずぐずと鼻を啜りながら本当だな、と確認する。
「ええ、本当です」
その様を見るセブンの眼差しはとても柔らかい。キングには決して見せない眼差し……まるで女神エトロのようだと思った。
「邪魔して悪ぃ……礼は、ちゃんとする」
そう言って顔を上げた金髪男の額に、セブンが優しく唇を落とした。その様はとても仲睦まじく、容易にキングの堪忍袋の緒を引きちぎった。
「セブン!」
気にくわない。その心のままに彼女を呼べば、セブンと金髪男は弾かれたようにこちらを見た。
「キング!?どうしてここに……」
「あぁん?知り合いかセブン?」
「え、ええ……バンドはどうしたんですか!まだ練習のはずでしょう!」
セブンの目に浮かんでいた焦りの色はない。今はその代わりに疑問の光が浮かんでいる。
「セブンについて噂を聞いた。心配になったから来た」
なるほどそいつがそうか、と呟けば、金髪男が「なんだコラァ」と柄悪くこちらを睨む。負けじとキングが睨み返せば、辺りに不穏な空気が立ちこめる。が、その無言の険悪な空気を破ったのはセブンであった。
「2人とも座ってください」
彼女にしては珍しい、怒りを孕んだ声。その声に圧されるようにして、男2人は席に着く。すると彼女はテーブルの上のメニューを2人の間に静かに置いた。
「その中から何品でも注文してください」
「あ、ああ」
「おう」
おっとり系の彼女が珍しく見せた怒りは、少しだけ怖かった。
エスプレッソとキャラメルマキアートを運んできたセブンは、一言こう言った。
「あなたが私を本当に好きなら、信じてください」
その背を見送りながら、金髪男が口を開いた。
「おめーの言ってた噂ってアレだろ、セブンに男がつきまとってる、ってやつだろコラァ」
「何故それを?」
「相談されてたからに決まってんだろコラァ。……解決済みだけどな」
解決済みかと愕然とするキングをよそに、それより、と男が言葉を紡ぐ。
「テメェだろ、セブンのカレシコーホってのは。……あ~……何だっけ」
「キングだ。……何でナギは今頃……」
「ナギの野郎の思惑なんざ知らねえよ。俺はナインってんだけどよ、……セブンを頼んでいいのか?」
ナインが突然そんなことを言った。
「つってもアレか、分かんねーか」
「ああ、分からん」
何故こいつがそんなことを言うのだと眉間にしわを寄せていると、うーん、とナインが頭をがしがし掻いた。
「俺ぁセブンの幼なじみなんだけどよ、アイツに頼りっきりだし……たまにはアイツの役に立ちてぇと思ったんだけどな……」
セブンの恋模様を応援してやりたかったが、片思いしていた才色兼備のエミナ女史がイザナ先生とつきあっていると聞いてそれどころではなかったらしい。キングを見るまで、セブンに好いた男がいることすら忘れていた、とはナインの弁である。
「……好いた……男……?」
「おう。考えろって言われて考えたけど、つきあっても良いとか言ってたぜ」
「じゃあ……俺の今までの努力は……」
セブンに好いた男がいたなんて、知らなかった。彼女も何も言わなかったから、困っていたのかもしれない。いや、もしかしたら自分がその好いた男かもしれんと無理矢理自分を鼓舞してみる。それを見ていたナインが、ため息をついた。
「気になんなら聞いて見ろよ。……多分、無駄じゃねえと思うけど」
あ、こいつ、イイ奴だ。
ちょっとだけ嬉しくなった。
結局セブンがバイトを上がる時間まで2人はグダグダと居座り、バイト帰りにデート、というキングの企みはもろくも崩れ去った。が、そんなことより、である。
「明日からはちゃんとバンドの練習に出てくださいね?」
そう至極真面目な顔で諭すセブンの左手をぎゅっと握る。
「聞いてるんですか?」
「ああ。……セブン」
「はい」
「好きな奴がいるって……本当か?」
セブンの身体がびくりと跳ねた。
「な、何言い出すんですか!そっ、それ、っ、どこで!」
「ナインが」
「ナインっ!」
セブンに叱りつけられたナインは、だってよ、と唇を尖らせる。
「セブンにはいつも世話になってるからよ」
「だからってなんで本人にばらすんですかっ!」
え、とキングは彼女を見つめる。耳が赤い。可愛い。
「言っちまえよ!」
力強い声が夕暮れのルブルムに響く。背中を押されるように、キングはセブンの腕を引いて、彼女の身体を抱き締めた。当たり前のことながら、彼女は逃げようとじたじたと身をよじる。
「え、……っ!?」
「セブン……好きだ。俺と一生添い遂げてくれ」
セブンの動きが、止まった。いや、世界が止まった、ような気がした。
「え……ええっ!?」
セブンが我に返って、世界は再び動き出す。
「俺の気持ちは初めて逢ったあの日から変わらない」
「それ、は……知ってましたけど、っ!そんな告白されても、私どう答えたらいいか……」
「分かった」
その薄い肩を掴んだまま、身体を話す。
「良ければ肯いてくれ」
セブンの銀色の頭が、僅かに、だが確かに縦に動いた。
「キング……」
初めて、名前を呼ばれる。
「好きです……」
ただ一つ、伝えたい言葉が伝わった。
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