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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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明日はコミケ1日目なのでくりかせワンドロ様に投稿した作品をサルベージ。

くりかせです。そして歌仙ちゃん女体化です。

ではどうぞ。

海に似ている

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とある日の遠征途中、海を見た。きらきらと夏の陽の光に当たって輝く、雲一つない空と同じ色の海だ。その色に、何故だか大倶利伽羅はこの場にはいない恋人を思い出した。
大倶利伽羅には恋人がいる。歌仙兼定という打刀だ。藤色の髪に翡翠の色をした瞳をしていて、華やかな印象を持つ刀剣女士である。最初は歌仙に関心などなかったし、むしろ遠巻きに見られていたと言ったほうが正しいだろう。それがとある調査任務でひょんなことから喧嘩になり、……どういう因果か、飲み友達になったはずが恋仲になった。最初はどこか避けていたような歌仙の態度も次第に柔らかくなり、声色や視線に甘いものが混じるようになった。さて大倶利伽羅の態度はどうかと言えば、ほとんど変わらない。もともと他人に干渉されるのを嫌う性質である。だが、歌仙のことに関してはもう無関心ではいられないし、実際無関心を装って、歌仙の話題にじっと耳を澄ましていることが多くなった。それに歌仙が怒るかと言えば、そういうわけでもなかった。眉を垂らして寂しそうに、仕方がないね、と笑うのだ。
(そういえば、海に誘われていたか)
細川と伊達の刀で本丸の近くにある海に行かないかと誘われていたのを思い出す。歌仙から伝えられて、行かないとすげなく返したのが昨日のこと。そのときも、歌仙は寂しそうに、悲しそうに笑って、仕方がないねと言ったのだ。
(……悪いことをしたか……?)
だが、歌仙に断ってもどのみち大倶利伽羅は他の伊達の刀によって連行されるだろう。遠征から帰った後にでも、燭台切が歌仙くんから聞いていると思うけど、と前置きしてこう言うのだろう。
『歌仙くんには断ったみたいだけど、伽羅ちゃんは強制参加だから』
なんという横暴だろうか。拒否権はないのだろうか。同じ厨を預かるものでも、歌仙は大倶利伽羅に何かを誘うとき(だけ)はあんなにも控えめ(人見知り)で、おとなしい(人見知り)だというのに。まるで虎とマルチーズではないか。とはいえ、歌仙には断ってしまったのに、当日しれっと海へ行く面子の中に混ざっていたら、歌仙はどう思うだろう。矜持の高いあの刀は、傷つくのではあるまいか。
(なら、直接歌仙に言ったほうがいいか)
歌仙は恋人なのだ。自分のあずかり知らぬところで傷ついてほしくないし、そんなことを許しはしない。誰かに傷つけられるのも、勝手に傷つくのも許さない。
(帰ったら、どう光忠を躱すかだな)
絶対に一番に歌仙に会う。そうでなければ、悲劇しか待っていないだろう。そう決意を固めて、大倶利伽羅は帰途を急いだ。





本丸に帰りつき、報告を部隊長の一期一振に任せてまっすぐに歌仙の部屋へと急ぐ。
「歌仙」
障子の外からいるか、と声を掛ければ、入っていいよと返事が返ってくる。からりと障子をあけて、その隙間から忍び込む。
「入るぞ」
空いた障子を元通りに閉めれば、冷房のひんやりとした空気が大倶利伽羅を迎え入れる。本を読んでいたらしい歌仙がぱたんと本を閉じて、茶を用意してくれる。
「どうぞ」
「もらうぞ」
冷たい麦茶が遠征で乾いた喉を潤しながら通り過ぎる。一息に飲み干せば、麦茶の入った水差しが傾けられて、もう一杯注がれた。
「遠征で、何かあったのかい」
「いや……」
「そうなのかい? 貴殿は用がなければ来ないから、何かあったのかと……」
何も用がなくて来たわけではない。だが、ふわりと控えめに向けられる笑顔が愛らしくて、一瞬、ほんの一瞬だけ呼吸を忘れた。そのことにはっと気づいて、慌てて口を開く。
「昨日の、海の件だが」
「あ、ああ。……貴殿は、行かないんだろう? 燭台切にはもう話したよ」
「……俺はたぶん強制参加だから、参加する……と、思う」
「そうなのかい……?」
「ああ。光忠ならやる。絶対に俺を引きずっていく」
歌仙がぽかんと口を開いて、それから拗ねたように視線をそらした。
「じゃあ、僕が誘っても、無駄だった、ということじゃないか」
「……いや、そういうわけでは」
「じゃあなんだい」
「……あんたは、俺が行かないと言ったら、行かないでいてくれるか」
「……え」
歌仙は首を傾げる。
「答えろ」
「……行くけど?」
なんということだ。海へ行かないと言ったのは大倶利伽羅なのだから、歌仙が行こうが行くまいが彼女の勝手なのだが、恋人を差し置いて水着姿を見せびらかすのはよろしくない。件の海は本丸付属の土地らしいので関係ないものが紛れ込む心配はないのだが、それでも燭台切や鶴丸に恋人の水着姿を見られるのは我慢しがたい。
「……なら、俺も行く」
「……どうせ貴殿は強制参加だろう」
「問題ない」
まあいい、と歌仙が溜息を吐いた。それから、立ち上がる。
「どうせ何かあったんだろう。……おいで、大倶利伽羅」
誘われたのは歌仙の胸だ。後ろをついていって、布団に横になった彼女の上に覆いかぶさる。袴と帯を解いて、着物を開ける。あらわになった白い胸に顔を押し付けると、そこは柔らかく大倶利伽羅を迎えてくれた。
「重くないか」
「重くないよ」
よしよしと頭を撫でられる。出陣があった日や遠征から帰ってきた日などは決まって歌仙の部屋を訪れて、こうして豊かな胸に包まれるのが彼女と恋人になった大倶利伽羅の日常だった。
「……海の件だけど、貴殿は水着を持っているのかい?」
「持っていない。……明後日だったか? 海」
「そうだよ。……明日、買いに行かなければならないね」
優しい声が耳を打つ。
「あんたはもう買ったのか」
「買ったよ。話を貰ったその日にね、貴殿が喜んでくれそうなやつを」
「そうか」
ならば、上に羽織るものを一枚買ってやる必要があるだろう。
「俺が一枚、羽織るものを買う。だから、ずっとそれを着たままでいろ」
「泳ぐためのものとは思えないから、それは構わないけれど」
「光忠や鶴丸に見せるのは癪だ」
そうかい、と歌仙が笑う。上下する身体に、なぜか海の中にいるような心地がする。
「……遠征から帰る途中、海が見えた」
「おや、いいねぇ。晴れていたかい?」
「ああ。……あんたみたいだと思った」
歌仙の目のいろは、美しい翡翠の色だ。それが、時折青く見えることがある。あの海の色によく似た青い色を、美しい瞳が映すのだ。その時が大倶利伽羅は好きだったし、そういう時を好んで傍にいた。それだけではない。歌仙兼定という刀は、この本丸全員の命をはぐくんでいる。海が多くの命をはぐくむように、本丸全員分の飯を炊き、洗濯をする。彼女は初期刀なのだから、この本丸に招かれた刀は例外なく歌仙に人の身での過ごし方や戦い方を教わる。だからだろうか、彼女は(小夜左文字曰く)人見知りでありながら、多くの刀に好かれていた。その包容力すら、海に似ている。
「あんたは、海だ」
「主が持っていた音楽に女は海、なんて歌詞があったけれど」
「俺の腕の中で違う男の夢など見させるか」
「では、確かめるために今夜は君の腕の中で寝なくてはね」
くすくすと笑うさまが、愛しい。
「僕の部屋の風呂を使うといい。……ここで、待っているから」
海に似ている恋人の胸から身を起こし、立ち上がる。
「いや、自分の部屋で済ませてくる。……すぐ戻るから、待っていろ」
今日の夜は長くなりそうだと、大倶利伽羅はしらず口元を緩めていた。





翌々日、海に行った先で白いビキニ姿の歌仙から一時も離れず、ずっと隣に張り付いていた大倶利伽羅に、小夜左文字が怪訝そうな眼差しを向けていたのはまた別の話である。

おわり
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