ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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遅刻のホワイトデーSSです。ジュミラです。
ジュミラ書くと2をクリアしていないせいかこういうのを多く書いてしまう……。早くクリアしたいです。今分史ミラちゃん仲間にして借金返済してます。ツンデレ可愛いよツンデレ。天然正史ミラ様もツンデレ分史ミラちゃんもどっちも可愛いです。
では、どうぞ。
親愛なる君に愛をこめて
ジュミラ書くと2をクリアしていないせいかこういうのを多く書いてしまう……。早くクリアしたいです。今分史ミラちゃん仲間にして借金返済してます。ツンデレ可愛いよツンデレ。天然正史ミラ様もツンデレ分史ミラちゃんもどっちも可愛いです。
では、どうぞ。
親愛なる君に愛をこめて
風霊盛節、火旬の最後の日。ミラはジュードにチョコレートなる菓子を大量に貰った。海の果てのどこぞの国で有名なバレンタインデーなる祭りで、本来は女性が男性にチョコレートを贈るのだという。
さて、本日はその一節後。風霊終節は火旬の最後の日。これまた海の果てのどこぞの国で有名なホワイトデーなる祭りの日だそうだ。なんでも前節にチョコレートを貰った男性がお返しを上げる日だとかなんだとか。
ならば、ミラもジュードにお返しをせねばなるまい。チョコレートは大層美味かった。それに見合うもの、いや、それ以上のものを返したい。そう考えて、ミラははたと首をひねった。
「お返しは食べ物でなくてはならないのだろうか……?」
親愛なる君に愛をこめて
ミラに料理はできない。食べるのは好きだが、料理をしたことはない。人参を切ったことはあっても、カレーを作ったことはない。材料を切るだけでは調理とは言えない。オルダ宮で読んだ『一から始める明日の献立』という本にそう載っていた。その本を参考にして料理をしてもよいのだが、生憎彼女が今いるのはジュードの実家だ。なんとなく立ち寄ってみたくてジュードと共に立ち寄ったのだが、この家の台所に立つのは珍しく何となく気が引けた。何よりも覚束ない手つきで料理をして、折角の台所を吹っ飛ばしてしまうことにでもなったら、ジュードもジュードの両親も悲しむだろう。その様を見るのは、いや、自分のせいでそんなことになるのはミラだって悲しい。
「料理はやめるか……」
が、料理をやめたところで何を上げるという選択肢があるわけでもない。ミラのお気に入りの抜け殻コレクションはジュードが虫嫌いだという事実から嫌がらせにしかならないと却下した。やはりエリーゼやレイアたちと共にカラハ・シャールに出向くべきだったか。そう彼女がため息を吐いたとき、不意に肩が温かいものに包まれた。掌の感触がする。
「ミラ?」
柔らかい低温に胸の奥が温かくなる。ジュードだ。
「どうしたの?」
「今日はホワイトデーというやつだろう?君に何を返したらいいか、どうにも悩んでな」
え、とジュードの声が詰まる。もしかしたら言ってはいけないことだったのかもしれない。だが、相談せずにはいられなかった。
「私は料理はできない。だが、他に何を贈ったらいいのか皆目見当もつかなくてな。……ジュード、君は何が欲しい?」
振り向かずに肩におかれた掌に自分の掌を被せてそう問いかけると、彼は何とも形容しがたい呻き声を発して黙り込んでしまった。
「……ジュード?」
「……その、僕は、ミラがくれるものなら何でもいいけど……きっとそれだとミラは困るんじゃないかなって」
「何故だ?」
確かに困るが、彼は何故そんなことを知っているのだろうか。首を傾げると、苦笑する気配が伝わってくる。
「ほら、前に夕飯何にする?ってみんなに聞いたとき、何でもいいって言われて……僕も随分悩んだから。……戦闘がおろそかになるぐらいにね」
普段はああいうこと、なかったんだけど。ジュードはそう笑った。でもね、と続ける。
「こういうのは、気持ちが大事だと思うから。僕は、ミラが何かあげたいって気持ちだけで、充分だよ」
☆☆☆
そう言われたものの、ミラとしては貰いっぱなしというのは性に合わなかった。気持ちだけで充分なら、チョコレートを大量に贈る必要などない。今のミラは精霊なのだ。精霊は空腹も眠気も感じない。マナがなければ生きられないが、食事でマナを摂取できるわけではない。
話がずれた。
今はジュードに何を贈るかを考えなくてはならない。すでに太陽は中天を過ぎており、今節の火旬もそろそろ終わりを迎える。その前に、何か。
そう思いながら潮風に吹かれていると、ふと以前読んだ恋愛小説の一節が脳裏をよぎった。
確か、人目を忍ぶ恋人たちが、互いに贈り物をする場面だった。
夜会に紛れて、ダンスを踊るふりをしながら、男が軽く腕を上げて、袖を軽く振って会場の外に出ていく。それは二人で落ち合おうという秘密の合図。
それを見た女は急いで会場から抜け出して、男を見つけるや否や声を出さずに羽織っていたショールをふわふわと振って見せる。
そして愛の言葉を交わした二人は、互いの胸元を飾っていた花のコサージュを交換するのだ。この素晴らしい夜を忘れないようにと。
忘れないでほしい。それはたしかにミラの中にもある感情で、何故だか捨て去ることができないものだった。
ならば、共に過ごした日々を忘れぬようにと何か、あの花のようなものを贈るのがいいのかもしれない。
「シルフ」
風の大精霊を呼び出して、イル・ファンまで乗せてくれと頼みこむ。
「今日はジュードと一緒じゃなかったの?」
「そのジュードに贈りたいものがあるのだよ。ル・ロンドではすぐにわかってしまうだろう?」
「イル・ファンでもわかると思うけど。……まあ、いいよ」
他ならぬミラの頼みだし、とシルフはつっけんどんに言い放って、ミラをふわりと空に浮かべた。
「ふむ……あとでシルフにも何かお礼をするとしよう」
途端にどこか照れたような気配が伝わって、彼女は思わず微笑んだ。
☆☆☆
ミラがいない、と気づいたのはおやつの時間に差し掛かってからだった。今日のおやつはパンケーキにする予定だったが、ジュードの部屋にも医院のほうにも、ついでに宿泊処ロランドにもいない。
今のミラは精霊だとジュードとて気づいていた。ジルニトラで一度消えた命の灯が再び灯ったのは奇跡だと思ったが、彼女の太ももから落ちた精霊の化石が教えてくれた。だから、彼女が最後まで一緒にいてくれるように、ジュードはずっと願っていたのだ。
それなのに、いない。
港にいる人に尋ねると、昼ごろに長い金髪の女性が空を飛んで行った、という答えが返ってきた。
(ミラ……)
今日はホワイトデーなんだよ、と恨みがましく心の中で呟く。
(一緒にいたいのに、なんで一人でどこか行っちゃうんだよ……)
我儘かもしれない。だけど、ミラがいないと寂しい。ミラが精霊界に帰るとしても、ジュードは生きていかれるけれど、それでもミラが隣にいてくれたほうがずっと楽しいに決まっている。それなのになんで、と恨みがましく晴れた空を見上げていると、不意に強い風が吹いた。
もしかして、と目を凝らしていると、ふわふわと揺れる金髪が視界に入った。こちらに背を向けて港に立った彼女を呼ぶ。
「ミラ……?」
「む?ジュードか。どうしたのだ?」
振り返ったミラは小さな箱をそれは大事そうに抱えて、心なしか嬉しそうな表情をしていた。無事でよかった、と安堵する気持ちとどうして何も言わずにいなくなったのかという憤慨が綯交ぜになって、気がつけば彼女の肩をきつく握り締めていた。
「どうしたのだ、じゃないよ!なんで何も言わずにどっか行っちゃうのさ!?心配したんだよ!?」
思っていたより大きな声が出た。ミラがびくりと体を震わせる。次いで彼女の驚いたような表情が、しゅんと悲しげに萎れてしまった。そのことにジュード自身が驚いて、何か言おうと言葉を探す。それより先にミラの唇が動いた。
「すまない、ジュード……心配をかけてしまった」
「うん、本当に、心配した……どこに行ってたの?」
「イル・ファンに……君への贈り物を買いに」
その姿がなんだか可愛らしくて、気付けばぎゅっと抱きしめていた。
「もう……気持ちだけで充分って言ったのに」
その言葉に嘘偽りはない。ミラに貰ったペンダントは友情の証。ジンテクスの化石はミラの意志の為に。バレンタインデーのチョコレートは、食べ物が大好きなミラに喜んでほしくて大量に贈ったものだった。ミラが喜んでくれれば充分だった。
でも、お返しが貰えるのは嬉しい。純粋に、嬉しい。
「とある恋愛小説の一節を思い出してな、これならいいかと思ったのだ」
そうして彼女は小箱を取り出して、こちらに差し出した。
「ジュード」
「うん」
「私は、君と出会って、旅をして、本当に幸せだ。この素晴らしい思い出をずっと忘れない。……だから」
君も、どうか忘れないでほしい。
その言葉はとても切実で真摯で、ジュードの心に重く響いた。
「忘れないよ」
忘れられるわけがない。
そう答えると、彼女はまるで花開くように微笑んだ。
「では、真摯で親愛なる君に、これを」
愛をこめて。
その言葉と共に、小箱はジュードの手のひらに収まった。
おわり
さて、本日はその一節後。風霊終節は火旬の最後の日。これまた海の果てのどこぞの国で有名なホワイトデーなる祭りの日だそうだ。なんでも前節にチョコレートを貰った男性がお返しを上げる日だとかなんだとか。
ならば、ミラもジュードにお返しをせねばなるまい。チョコレートは大層美味かった。それに見合うもの、いや、それ以上のものを返したい。そう考えて、ミラははたと首をひねった。
「お返しは食べ物でなくてはならないのだろうか……?」
親愛なる君に愛をこめて
ミラに料理はできない。食べるのは好きだが、料理をしたことはない。人参を切ったことはあっても、カレーを作ったことはない。材料を切るだけでは調理とは言えない。オルダ宮で読んだ『一から始める明日の献立』という本にそう載っていた。その本を参考にして料理をしてもよいのだが、生憎彼女が今いるのはジュードの実家だ。なんとなく立ち寄ってみたくてジュードと共に立ち寄ったのだが、この家の台所に立つのは珍しく何となく気が引けた。何よりも覚束ない手つきで料理をして、折角の台所を吹っ飛ばしてしまうことにでもなったら、ジュードもジュードの両親も悲しむだろう。その様を見るのは、いや、自分のせいでそんなことになるのはミラだって悲しい。
「料理はやめるか……」
が、料理をやめたところで何を上げるという選択肢があるわけでもない。ミラのお気に入りの抜け殻コレクションはジュードが虫嫌いだという事実から嫌がらせにしかならないと却下した。やはりエリーゼやレイアたちと共にカラハ・シャールに出向くべきだったか。そう彼女がため息を吐いたとき、不意に肩が温かいものに包まれた。掌の感触がする。
「ミラ?」
柔らかい低温に胸の奥が温かくなる。ジュードだ。
「どうしたの?」
「今日はホワイトデーというやつだろう?君に何を返したらいいか、どうにも悩んでな」
え、とジュードの声が詰まる。もしかしたら言ってはいけないことだったのかもしれない。だが、相談せずにはいられなかった。
「私は料理はできない。だが、他に何を贈ったらいいのか皆目見当もつかなくてな。……ジュード、君は何が欲しい?」
振り向かずに肩におかれた掌に自分の掌を被せてそう問いかけると、彼は何とも形容しがたい呻き声を発して黙り込んでしまった。
「……ジュード?」
「……その、僕は、ミラがくれるものなら何でもいいけど……きっとそれだとミラは困るんじゃないかなって」
「何故だ?」
確かに困るが、彼は何故そんなことを知っているのだろうか。首を傾げると、苦笑する気配が伝わってくる。
「ほら、前に夕飯何にする?ってみんなに聞いたとき、何でもいいって言われて……僕も随分悩んだから。……戦闘がおろそかになるぐらいにね」
普段はああいうこと、なかったんだけど。ジュードはそう笑った。でもね、と続ける。
「こういうのは、気持ちが大事だと思うから。僕は、ミラが何かあげたいって気持ちだけで、充分だよ」
☆☆☆
そう言われたものの、ミラとしては貰いっぱなしというのは性に合わなかった。気持ちだけで充分なら、チョコレートを大量に贈る必要などない。今のミラは精霊なのだ。精霊は空腹も眠気も感じない。マナがなければ生きられないが、食事でマナを摂取できるわけではない。
話がずれた。
今はジュードに何を贈るかを考えなくてはならない。すでに太陽は中天を過ぎており、今節の火旬もそろそろ終わりを迎える。その前に、何か。
そう思いながら潮風に吹かれていると、ふと以前読んだ恋愛小説の一節が脳裏をよぎった。
確か、人目を忍ぶ恋人たちが、互いに贈り物をする場面だった。
夜会に紛れて、ダンスを踊るふりをしながら、男が軽く腕を上げて、袖を軽く振って会場の外に出ていく。それは二人で落ち合おうという秘密の合図。
それを見た女は急いで会場から抜け出して、男を見つけるや否や声を出さずに羽織っていたショールをふわふわと振って見せる。
そして愛の言葉を交わした二人は、互いの胸元を飾っていた花のコサージュを交換するのだ。この素晴らしい夜を忘れないようにと。
忘れないでほしい。それはたしかにミラの中にもある感情で、何故だか捨て去ることができないものだった。
ならば、共に過ごした日々を忘れぬようにと何か、あの花のようなものを贈るのがいいのかもしれない。
「シルフ」
風の大精霊を呼び出して、イル・ファンまで乗せてくれと頼みこむ。
「今日はジュードと一緒じゃなかったの?」
「そのジュードに贈りたいものがあるのだよ。ル・ロンドではすぐにわかってしまうだろう?」
「イル・ファンでもわかると思うけど。……まあ、いいよ」
他ならぬミラの頼みだし、とシルフはつっけんどんに言い放って、ミラをふわりと空に浮かべた。
「ふむ……あとでシルフにも何かお礼をするとしよう」
途端にどこか照れたような気配が伝わって、彼女は思わず微笑んだ。
☆☆☆
ミラがいない、と気づいたのはおやつの時間に差し掛かってからだった。今日のおやつはパンケーキにする予定だったが、ジュードの部屋にも医院のほうにも、ついでに宿泊処ロランドにもいない。
今のミラは精霊だとジュードとて気づいていた。ジルニトラで一度消えた命の灯が再び灯ったのは奇跡だと思ったが、彼女の太ももから落ちた精霊の化石が教えてくれた。だから、彼女が最後まで一緒にいてくれるように、ジュードはずっと願っていたのだ。
それなのに、いない。
港にいる人に尋ねると、昼ごろに長い金髪の女性が空を飛んで行った、という答えが返ってきた。
(ミラ……)
今日はホワイトデーなんだよ、と恨みがましく心の中で呟く。
(一緒にいたいのに、なんで一人でどこか行っちゃうんだよ……)
我儘かもしれない。だけど、ミラがいないと寂しい。ミラが精霊界に帰るとしても、ジュードは生きていかれるけれど、それでもミラが隣にいてくれたほうがずっと楽しいに決まっている。それなのになんで、と恨みがましく晴れた空を見上げていると、不意に強い風が吹いた。
もしかして、と目を凝らしていると、ふわふわと揺れる金髪が視界に入った。こちらに背を向けて港に立った彼女を呼ぶ。
「ミラ……?」
「む?ジュードか。どうしたのだ?」
振り返ったミラは小さな箱をそれは大事そうに抱えて、心なしか嬉しそうな表情をしていた。無事でよかった、と安堵する気持ちとどうして何も言わずにいなくなったのかという憤慨が綯交ぜになって、気がつけば彼女の肩をきつく握り締めていた。
「どうしたのだ、じゃないよ!なんで何も言わずにどっか行っちゃうのさ!?心配したんだよ!?」
思っていたより大きな声が出た。ミラがびくりと体を震わせる。次いで彼女の驚いたような表情が、しゅんと悲しげに萎れてしまった。そのことにジュード自身が驚いて、何か言おうと言葉を探す。それより先にミラの唇が動いた。
「すまない、ジュード……心配をかけてしまった」
「うん、本当に、心配した……どこに行ってたの?」
「イル・ファンに……君への贈り物を買いに」
その姿がなんだか可愛らしくて、気付けばぎゅっと抱きしめていた。
「もう……気持ちだけで充分って言ったのに」
その言葉に嘘偽りはない。ミラに貰ったペンダントは友情の証。ジンテクスの化石はミラの意志の為に。バレンタインデーのチョコレートは、食べ物が大好きなミラに喜んでほしくて大量に贈ったものだった。ミラが喜んでくれれば充分だった。
でも、お返しが貰えるのは嬉しい。純粋に、嬉しい。
「とある恋愛小説の一節を思い出してな、これならいいかと思ったのだ」
そうして彼女は小箱を取り出して、こちらに差し出した。
「ジュード」
「うん」
「私は、君と出会って、旅をして、本当に幸せだ。この素晴らしい思い出をずっと忘れない。……だから」
君も、どうか忘れないでほしい。
その言葉はとても切実で真摯で、ジュードの心に重く響いた。
「忘れないよ」
忘れられるわけがない。
そう答えると、彼女はまるで花開くように微笑んだ。
「では、真摯で親愛なる君に、これを」
愛をこめて。
その言葉と共に、小箱はジュードの手のひらに収まった。
おわり
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