ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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切っ掛けは今日は節分だぜというファングの一言だった。
「せつぶん?」
「あぁ、ずっと昔に遠い国から伝わったとかそうでないとかいう行事なんだけどな」
「豆をまいてなんだっけ、お寿司?」
「恵方巻きとか言ったっけか?米を炊いて酢でしめて野菜とか魚とかを海苔で巻いたやつだったよな……それを良い方角ってのを向きながら黙って食べるんだよな」
「……?」
どうにもコクーン市民には馴染みのない行事であったが、グラン=パルス出身の二人のやるぜという鶴の一声に圧されてしまったのであった。
思春期とかなんとかかんとか
「ほら、できたぜ」
「食べよ~」
そう言ってファングとヴァニラがとても楽しそうに差し出してきた皿の上には黒々とした海苔にまかれた米があった。中には魚が巻いてある。この料理を作ったのがライトニングだと言われたら、ホープは嬉々として食べただろう。が、生憎この皿の料理人は今現在寿司を配り歩いているファングとヴァニラである。
「これ……しょっぱくないですよね?酸っぱくないですよね?」
「あぁ?しょっぱくも酸っぱくもねぇよ、何言ってんだ」
恐る恐るホープがそんなことを聞けば、ファングに一蹴される。が、こうなっては食べるほかあるまい。現にスノウだって齧り付いているし、その向こうでは何やらサッズがファングとヴァニラ相手に話している。そのまま顔を顰めたりもんどりうったりせずに食べ進めているところを見ると、食べられる味のようだ。ホープが意を決して寿司に齧りつくと、海苔の匂いと酢飯の匂いが鼻腔いっぱいに広がった。魚の味も悪くない。もぐもぐと食べ進めて、最後の一口を飲み込んだところでライトニングが視界に入る。いや、気になって彼女のほうを見たというほうが正解か。
「……!?」
寿司を飲み込んでおいてよかった。ホープは心底そう思った。
「……っ」
ライトニングはむぐぅ、と口一杯に恵方巻きを頬張っているのである。しかも恵方巻きはホープの腕ほどの太さである。噛み切るのも咀嚼するのも大変らしく若干涙目で、ついでに中に巻かれた魚を零さないように一生懸命握っているものだからホープとしてはあらぬ方向に妄想が飛躍してしまう。
(ライトさん……!なんでそんなに一生懸命食べてるんですか可愛いですありがとうございます!)
もちろんそんなことを口に出すわけにはいかない。目を皿のようにしてライトニングの痴態めいた食事風景を見守っていると、すでに恵方巻きを食べ終えたらしいヴァニラがにやにやと笑いながらホープの頬をつついてきた。
「見すぎだぞ、青少年!」
「ライトさんが色っぽいからいけないんです!僕の頭の中であんなことやこんなこととかあまつさえそんなこととかになっちゃいますよ!」
そんなことを力説すると、ヴァニラは満面の笑みで頷いた。
「うん、だってライトのはちょっと太めに作ったから!」
その一言にホープは噛みついた。ホープ以外でライトニングにセクハラする者は、たとえ仲間でも容赦をしてはいけない。自分をさりげなく含めないのはそのセクハラが愛ゆえであるからだ。
「だからライトさんにセクハラしていいのは僕だけだっていつも言ってるでしょう!ファングさんにでもすればいいじゃないですか!それかサッズさん!」
「うん、だからファングのもサッズのもちょっと太いんだよ!バレて怒られたけどね!」
(やったんですか!)
怒られたにもかかわらず満面の笑顔によかったですねと生返事を返しながらライトニングを見ていると、恵方巻きの最後の一口を何とか口に入れたところであった。入れたというよりは押し込んだと言ったほうが正しいが、白い米粒を白い指先で口の中に入れるのはやめていただきたいとホープは思った。あらぬほうへ飛躍した妄想が、今度はとんでもない方向に飛翔しているからである。
「ライトさん……可愛すぎです……」
やっぱりパルムポルムの家に戻ったときに父親からカ○オミニを借りて来るべきだったかとか、端末から電気屋を探して手ごろなカメラを買っておくべきだったかとか、全く以てどうしようもないことを考えながらホープはライトニングに近寄って水を差しだした。なんとか寿司を咀嚼して飲み下した彼女はありがとうと言って水を受け取る。
「ファングから気を付けろと言われていたが、予想以上に太かったな……ホープは大丈夫だったか?」
「え、あ……はい」
ヴァニラによるセクハラ被害に遭ったファングが何に気を付けろと言ったのか、ホープにはなんとなくわかる。が、どういう言い方をしたのかが気になった。
「……あの、ファングさんなんて言ってたんですか?」
「喉に詰まらせないように気を付けろ、と。……やたら神妙な顔だったがな」
「……無難だなぁ」
珍しい、とホープが感心していると、ライトニングが怪訝そうな顔をした。
「どうした」
「いえ、その、恵方巻きに関して……セクハラをはたらいた人がいまして」
「……そうか」
ライトニングが頭を抱えた。
「被害者はライトさんとファングさんとサッズさんです」
「……そう、か……」
「ちなみに犯人はヴァニラさんです」
「……道理でファングが茶化さなかったわけだ」
溜息をつくライトニングの手をホープはぎゅっと握った。
「でも、頑張ってお寿司食べてるライトさん、可愛かったです」
「……!」
白皙の美貌が真っ赤に染まる。水を取り上げて、その身体を抱きしめた。
「僕、妄想を自重するの、とっても大変だったんですからね?」
「は……?」
によによと外野の視線が飛んでくるのをホープは痛いほど感じていた。が、もう気にならない。ライトニングが自分の腕の中にいるからである。ついでにホープの顔はライトニングの胸に埋もれているが、今更恥じらうこともない。
「大好きな人があんな形のものを口に含んでたら、妄想しちゃいますよ」
「食事時にそういう発言はやめろ」
非常に品のない発言を窘められても、ホープの腕の力は緩まない。
「ご飯のときは下ネタ発言やめます。……でも、これならいいですよね?」
「……!?」
背伸びをしてライトニングの頬にちゅっと音を立てて口付けて、耳元で囁く。
「僕が大人になったら、僕の恵方巻きも食べてください」
いろんな意味で、というところは省略した。ホープとしては大人になる前であっても自分の作った恵方巻きを食べてほしい。絶対に今日食べたものより美味しい寿司を巻いてみせる。全く品のない方面の話は大人になってからでいい。耐性はあるものの、きっとライトニングが対象だったらくらくらしてしまいそうだから。
その意図を察してくれたのであろう、彼女はひどく優しく微笑んで……ホープの額をちょんと小突いた。
「全部終わったら……練習だな」
「はい!」
風は冷たかったけれど、二人でくっついているから温かかった。
全部終わったら巻き寿司の練習をして、ついでにカメラを購入しようとホープは固く決意したのであった。
おわり
「せつぶん?」
「あぁ、ずっと昔に遠い国から伝わったとかそうでないとかいう行事なんだけどな」
「豆をまいてなんだっけ、お寿司?」
「恵方巻きとか言ったっけか?米を炊いて酢でしめて野菜とか魚とかを海苔で巻いたやつだったよな……それを良い方角ってのを向きながら黙って食べるんだよな」
「……?」
どうにもコクーン市民には馴染みのない行事であったが、グラン=パルス出身の二人のやるぜという鶴の一声に圧されてしまったのであった。
思春期とかなんとかかんとか
「ほら、できたぜ」
「食べよ~」
そう言ってファングとヴァニラがとても楽しそうに差し出してきた皿の上には黒々とした海苔にまかれた米があった。中には魚が巻いてある。この料理を作ったのがライトニングだと言われたら、ホープは嬉々として食べただろう。が、生憎この皿の料理人は今現在寿司を配り歩いているファングとヴァニラである。
「これ……しょっぱくないですよね?酸っぱくないですよね?」
「あぁ?しょっぱくも酸っぱくもねぇよ、何言ってんだ」
恐る恐るホープがそんなことを聞けば、ファングに一蹴される。が、こうなっては食べるほかあるまい。現にスノウだって齧り付いているし、その向こうでは何やらサッズがファングとヴァニラ相手に話している。そのまま顔を顰めたりもんどりうったりせずに食べ進めているところを見ると、食べられる味のようだ。ホープが意を決して寿司に齧りつくと、海苔の匂いと酢飯の匂いが鼻腔いっぱいに広がった。魚の味も悪くない。もぐもぐと食べ進めて、最後の一口を飲み込んだところでライトニングが視界に入る。いや、気になって彼女のほうを見たというほうが正解か。
「……!?」
寿司を飲み込んでおいてよかった。ホープは心底そう思った。
「……っ」
ライトニングはむぐぅ、と口一杯に恵方巻きを頬張っているのである。しかも恵方巻きはホープの腕ほどの太さである。噛み切るのも咀嚼するのも大変らしく若干涙目で、ついでに中に巻かれた魚を零さないように一生懸命握っているものだからホープとしてはあらぬ方向に妄想が飛躍してしまう。
(ライトさん……!なんでそんなに一生懸命食べてるんですか可愛いですありがとうございます!)
もちろんそんなことを口に出すわけにはいかない。目を皿のようにしてライトニングの痴態めいた食事風景を見守っていると、すでに恵方巻きを食べ終えたらしいヴァニラがにやにやと笑いながらホープの頬をつついてきた。
「見すぎだぞ、青少年!」
「ライトさんが色っぽいからいけないんです!僕の頭の中であんなことやこんなこととかあまつさえそんなこととかになっちゃいますよ!」
そんなことを力説すると、ヴァニラは満面の笑みで頷いた。
「うん、だってライトのはちょっと太めに作ったから!」
その一言にホープは噛みついた。ホープ以外でライトニングにセクハラする者は、たとえ仲間でも容赦をしてはいけない。自分をさりげなく含めないのはそのセクハラが愛ゆえであるからだ。
「だからライトさんにセクハラしていいのは僕だけだっていつも言ってるでしょう!ファングさんにでもすればいいじゃないですか!それかサッズさん!」
「うん、だからファングのもサッズのもちょっと太いんだよ!バレて怒られたけどね!」
(やったんですか!)
怒られたにもかかわらず満面の笑顔によかったですねと生返事を返しながらライトニングを見ていると、恵方巻きの最後の一口を何とか口に入れたところであった。入れたというよりは押し込んだと言ったほうが正しいが、白い米粒を白い指先で口の中に入れるのはやめていただきたいとホープは思った。あらぬほうへ飛躍した妄想が、今度はとんでもない方向に飛翔しているからである。
「ライトさん……可愛すぎです……」
やっぱりパルムポルムの家に戻ったときに父親からカ○オミニを借りて来るべきだったかとか、端末から電気屋を探して手ごろなカメラを買っておくべきだったかとか、全く以てどうしようもないことを考えながらホープはライトニングに近寄って水を差しだした。なんとか寿司を咀嚼して飲み下した彼女はありがとうと言って水を受け取る。
「ファングから気を付けろと言われていたが、予想以上に太かったな……ホープは大丈夫だったか?」
「え、あ……はい」
ヴァニラによるセクハラ被害に遭ったファングが何に気を付けろと言ったのか、ホープにはなんとなくわかる。が、どういう言い方をしたのかが気になった。
「……あの、ファングさんなんて言ってたんですか?」
「喉に詰まらせないように気を付けろ、と。……やたら神妙な顔だったがな」
「……無難だなぁ」
珍しい、とホープが感心していると、ライトニングが怪訝そうな顔をした。
「どうした」
「いえ、その、恵方巻きに関して……セクハラをはたらいた人がいまして」
「……そうか」
ライトニングが頭を抱えた。
「被害者はライトさんとファングさんとサッズさんです」
「……そう、か……」
「ちなみに犯人はヴァニラさんです」
「……道理でファングが茶化さなかったわけだ」
溜息をつくライトニングの手をホープはぎゅっと握った。
「でも、頑張ってお寿司食べてるライトさん、可愛かったです」
「……!」
白皙の美貌が真っ赤に染まる。水を取り上げて、その身体を抱きしめた。
「僕、妄想を自重するの、とっても大変だったんですからね?」
「は……?」
によによと外野の視線が飛んでくるのをホープは痛いほど感じていた。が、もう気にならない。ライトニングが自分の腕の中にいるからである。ついでにホープの顔はライトニングの胸に埋もれているが、今更恥じらうこともない。
「大好きな人があんな形のものを口に含んでたら、妄想しちゃいますよ」
「食事時にそういう発言はやめろ」
非常に品のない発言を窘められても、ホープの腕の力は緩まない。
「ご飯のときは下ネタ発言やめます。……でも、これならいいですよね?」
「……!?」
背伸びをしてライトニングの頬にちゅっと音を立てて口付けて、耳元で囁く。
「僕が大人になったら、僕の恵方巻きも食べてください」
いろんな意味で、というところは省略した。ホープとしては大人になる前であっても自分の作った恵方巻きを食べてほしい。絶対に今日食べたものより美味しい寿司を巻いてみせる。全く品のない方面の話は大人になってからでいい。耐性はあるものの、きっとライトニングが対象だったらくらくらしてしまいそうだから。
その意図を察してくれたのであろう、彼女はひどく優しく微笑んで……ホープの額をちょんと小突いた。
「全部終わったら……練習だな」
「はい!」
風は冷たかったけれど、二人でくっついているから温かかった。
全部終わったら巻き寿司の練習をして、ついでにカメラを購入しようとホープは固く決意したのであった。
おわり
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