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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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C90新刊のWEB版になります。
LRFF13シークレットエンディング後、とてもワーカーホリックなホープ君がライトさんにとあるお願いをする話です。
同人誌版は後日BOOTHにて通販予定です。(エロシーンが大幅増量の予定です)
妄想による職業・世界観の捏造がございます。 




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           ☆
突然ではあるが、ホープ・エストハイムは研究者である。前の世界……コクーンとかパルスとか、ルシだのファルシだのといったものに翻弄された神話時代の世界からずっと思いを寄せていた可愛い恋人を部下に持ち、自分の研究成果が世間に認められ始めて一つ研究室を持たせてもらえるようになった新進気鋭の研究者だ。
大学を休学してまで逢いに来てくれた愛しい恋人……エクレール・ファロンをぜひ自分の助手にと願い出たのは、なにも私情だけではない。一緒にいたいと強く願ったのは確かだが、彼女の卒業論文を受け持っていた教授から偶然にも研究分野が同じだということを聞き、さらには就職先を巡って妹と一悶着あったということまで小耳に挟んだのだ。
『それなら僕の研究室に来て頂くというのはどうでしょう? 打診していただければ嬉しいのですが』
将来有望ならぜひとも、と打診してみれば、元来真面目でお人好しの気があるかの教授も、ちゃんとエクレールに打診してくれたのだろう。すぐに紹介状が届いて、ホープは小躍りしながら研究所の人事部に向かったのを覚えている。正式な手続きを経て彼女を助手として迎える手筈を整えた次の日に直接大学に出向いて採用決定を告げたのだった。
本当のところを言えば、少しだけ仕事に裂く時間が多いかな、とは思っていた。前の世界ではアカデミー最高顧問に就任していたのだし、今の世界でも父親はワーカーホリックの気があった。誕生日や旅行といった約束のある日は休暇を遠慮なくとってくれたから前の世界ほど仕事に忙殺されているわけではなかったのだが、息子のホープはと言えば遠慮なく仕事に忙殺されていた。休日出勤も残業もして、研究室で寝泊まりした日は一週間のうち、実に二日である。エクレールが助手として入ってきてからたったの一週間で身体に悪いからやめろ、と怒られた。
それでもやめなかったのは……否、やめられなかったのは、前の世界での残業癖がついていたからだろうか。エクレールを先に帰しても残業三昧だったのは、家に帰ったところで彼女がいないという生活に耐えきれなかったからかもしれない。前の世界でも仕事に忙殺されていたのは、結局のところルシとして生きるために奪った命に償うためでもあったし、エクレール……ライトニングが傍にいないという寂しさが心の中に積もっていたためでもある。
この世界に生まれてからもその寂しさは消えることはなく、学生の頃は暇さえあればエクレールの手がかりを探していた。……それなのに彼女は見つからなくて、だんだん研究に逃げ込むようになっていった。ホープが有名になれば、きっと彼女も気付くだろうと、半ば縋るように願っていた。その結果がこれである。
「ホープ、もういい加減に観念して家に帰ったらどうなんだ?」
彼女がこの研究室に就職してから数か月、今日でなくとも幾度となく聞いてきた言葉である。
「もうすこしだけ……今度の週末はちゃんと休みますから」
そう返事をすれば、彼女は怪訝な眼差しを向けた。休む、と明言したからだろうか。
「本当だな?」
その言葉に頷けば、それならと恋人が鞄を机に下ろす。
「付き合うよ。……それなら早く終わるだろう」
その言葉は嬉しかったが、早く終わっても独りきりの家に帰らなければならないのならば同じことだ。せめてエクレールが一緒に住んでくれていえばまた違うのだろうが、半ば癖のようになってしまった残業は監視でもしてもらえなければ治らないだろう。助手である彼女は口では帰れ、休めと言いつつも休日出勤や残業のたびに最後まで付き合ってくれているが、ホープが具体的にどの仕事で残業しているかを聞きはしない。ゆえに少し罪悪感が募っていたりもする。
「……それで? 毎晩何しているんだ?」
手元を覗き込んだエクレールがため息を吐く。それはそうだろう、今日中に片付けなければならない仕事もないし、纏めておきたいデータは午後であらかた纏めてしまった。研究のための旅行も、取材のアポイントからホテルの手配まで、数日前に全て済んでいる。つまるところ、やることがないのだ。
「ちょっと、書き物を」
嘘ではない。彼女がいない間、ホープとエクレールがかつて生きていた世界のこと、あの世界が終わるまでの手記を、毎晩記していた。今でも半ば習慣のように書きつけているそれは、この世界ではどうしても絵空事にしか思われないだろう。だが、それでもよかった。分かるものにだけ伝わればいい。これは論文でも研究でもないのだから。
だが、仕事ではないと知った瞬間に彼女はきりりと眉を吊り上げて、早く帰れ、と唸った。それだけ心配されて、愛されているのだと心の中が温かくなる半面、こういう時に限ってもっと彼女と一緒にいたくなる。だから資料を持つ細腕を掴んで、じゃあ、と囁いた。
「じゃあ、僕の生活、監視してください。勿論住み込みで」
は、とグロスの艶めく唇から吐息が漏れる。こいつは何を言っているんだと言わんばかりに見開かれたアイスブルーの瞳が今日も可愛らしい。
「お、おまえ、……疲れているんだ。もう今日は帰って寝ろ」
有給休暇も振替休暇も碌々取っていないだろう? とおそらくは言いたいことを丸々飲み込んで労ってくれるのは嬉しいが、もうちょっとだけ、と欲が出る。エクレールが言っていることは本当のことで、有給休暇と振替休暇をあまりにも取らなかったため、今朝方総務部にこっ酷く叱られてきたところだ。遥か東国では長時間労働と休日返上は美徳であると言われているとは聞くのだが、この国ではそういうわけにもいかなかった。ただし、だ。
「エクレールさんがこれを着て監視してくれたら、僕は今日まっすぐ家に帰って、明日から貯まっているお休みを消化しますよ」
我ながら悪くはない条件だと思う。ホープがほとんど休暇を取らないかったせいで、せっかくエクレールと恋人同士になったのにもかかわらずデートが出来なかった。その埋め合わせ、というわけではないが、明日から二週間ほど休みを取ればずっと家で一緒にいられる。エクレールはホープが休暇を取っていないと言ったが、彼女だって自分に付き合って休日出勤をしてくれている。大分消化しなければならない休暇が溜まっている筈だ。
「で、明日から僕の家で一緒に過ごしましょう。これ、市販品ですけど買ったんです。二週間あればエクレールさんにぴったりのメイド服が作れるはずです」
ほらこれ、と黒地のワンピースと白いエプロン、所謂メイド服を乗せてやるとたちまち彼女の頬が引きつった。
「なんでそんなもの買ったんだ」
「似合うかなと思いまして」
「いつの間に」
「一昨日の夜ですね。家に帰ってぼうっとタブレットを眺めていたら見つけて」
なにもホープはメイド服の通販サイトをわざわざ眺めていたわけではない。どこかで休暇を取ってエクレールとデートに行こうと思って密かに計画を練っていたわけである。現代社会というのは便利なもので、通販という便利なシステムが確立している。コクーンにいた頃は端末から通販ショップのページに入り、品物を選べば自動決済で即時手に入れることが出来た。この世界では全くその通りとはいかないが、それでも注文すれば半日もかからずに届けてくれる。店が開いている時間に帰ることが出来ない身(帰らないだけだが)としてはとてもありがたいことだ。
とにかく、デートに行くには服が必要だ。ワードローブのスーツが三着、普段着と言えばシャツにくたびれてきたスラックスなどという手持ちでは、デートに行けるだけの服がない。今まではスーツでどうにかなっていたが、これから先はそうもいかないだろう。家に招くならそれなりの部屋着を用意したいし、デート用の服だって欲しい。何着あっても多いことはないだろうといろんなページを見て、いろんな服を購入した。そのさなかにうっかり……そう、ついうっかりタップする場所を間違えてメイド服の通販ページ(しかも本格的だった)に行きついたのだ。
無論最初はびっくりして戻ろうとした。だが、脳裏にありありと浮かんでしまったのだ。
最愛の恋人、すなわちエクレールのメイド姿を。
フリルのついた白いカチューシャはきっとエクレールの薔薇色の髪に似合うだろう。黒地のワンピースも、真っ白なフリルのついたエプロンも、きっと彼女の白い肌とメリハリのある体型を際立たせてくれるに違いない。清楚という言葉がぴったりのエプロンドレスを着て、いつも研究室に来る時のような笑顔を見せてくれたら、どんなに素敵なことだろう。

つづく
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