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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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とりあえず……カノジェシです。しかもまともなのと変態シリーズの境目です。
まともなのにしては嘉音くんが変態、変態シリーズにしてはいい話で締められている。そんな感じです。
では、どうぞ。

抱き枕幻想曲



拍手[5回]


 嘉音がその情報を仕入れたのは偶然であった。
本当に偶然であった。
だがしかし、その情報は嘉音を魅了してやまなかった。
朱志香の部屋を掃除していたときに見つけた文化祭のパンフレットにその情報は載っていた。
「文化祭……行きたい……」
気になってパンフレットを捲ったのが運の尽きだ、なとど言うことはない。
そんなことを言う余裕がないぐらいに彼はその情報に魅了されていたのだから。
「朱志香さんの抱き枕カバー……1700円……!」

抱き枕幻想曲

抱き枕、と聞いて連想されるものは眠りを快適にするために使われる目に優しい色の長いクッションである。が、この場合の抱き枕とは少々違う意味もある。少なくとも嘉音にとっては。
嘉音は朱志香のことが好きである。どこが好きかと問われたら一日中語れるぐらい好きである。さらには一日中朱志香にくっついていたいという密かな野望を抱いている。
そんな彼にとって抱き枕は愛しい人と寝るときも一緒にいられる素晴らしいアイテムなのである。
「そういえばこの間譲治様があと10数年で抱き枕やシーツが流行るって言ってたな……」
その譲治も抱き枕やシーツになって紗音の部屋に保管されている。本人にはとても言えないが。それはともかく、譲治の予言によればなんでもアニメやゲームのキャラクターがしどけない格好で横たわっている絵が描かれているものになるらしい。
改めてパンフレットを見る。
「朱志香さん……可愛い……」
困ったように頬を染めた制服姿の朱志香が表面、もっと頬を染めてこちらを軽く睨む朱志香が裏面に描かれている。ちなみに裏面はフリルの沢山付いたノースリーブのネグリジェである。
「ん……?ネグリジェ……?」
このネグリジェは見覚えがある。朱志香が夏に学校の交流会とやらで鎌倉に行ったときに持っていったネグリジェだ。確かこれは上着とズボンがセットで付いていたような気がする。
「……誰かが僕の朱志香さんのネグリジェを脱がせた……!?」
それはとても許し難いことである。朱志香の美しい生足を拝んでいいのは彼だけだからである。だが、しかしである。
『べ、別に嘉哉くんのために脱いだ訳じゃなくて、えっと、そのっ……!』
脳裏に浮かぶ乱れたネグリジェ姿の朱志香が頬を赤く染めて困ったように言い訳する。その姿はいつもよりも艶を増していて、嘉音の心臓は跳ねっぱなしだ。
『朱志香さん』
『……?』
彼女の上に覆い被さって至近距離で見つめ合う。
『どんな朱志香さんもお可愛らしいです……愛しています、朱志香……』
『嘉哉くん……私も……私も好き……』
『あなたともっと触れあいたいです……』
『うん……』
朱志香が微笑んで彼に手を伸ばした。
「……お嬢様……僕のためにこの抱き枕カバーを作ってくださったんですね……絶対買い占めます」
朱志香はまだ屋敷に戻ってきていない。けれども彼には彼女の優しさが眩しく光り輝く太陽のように思えて、嘉音は新島に向かって微笑んだ。
「このパンフレット……もう五冊ぐらい貰えるかな……」

「ただいま、嘉音くん」
「お帰りなさいませ、お嬢様」
朱志香に挨拶をすると、彼女は照れたようにはにかむ。これが二人きりのときであったら嘉哉くん、朱志香さんと呼び合えたのだろうなぁと嘉音は少し残念に思う。少しの間はにかんでいた朱志香がきゅっと表情を引き締めた。
「あの、さ……嘉音くん、今時間ある?」
「お嬢様のためならばいくらでもございます!」
力一杯答えると、朱志香の表情が不思議そうに緩む。可愛い。
「……う、うん、あの、ちょっと、いいかな……?」
「はい」
どのような用件だろうか。デートのお誘いかもしれない。例えば以下のような。
『嘉哉くん、今度の日曜、空いてる……?』
『はい、その日は休みです』
『あのさ……映画のチケットがね、二枚あるんだけど……』
『喜んでお供させて頂きます……朱志香』
『ありがと……大好き、嘉哉くん』
『僕も朱志香のことが大好きです!』
「……嘉音くん?」
「……!はい!」
妄想の世界から帰ってくると、朱志香が心配そうな顔をしてこちらをのぞき込んでいた。
「あの……時間ないんならまた後でいいんだぜ……?」
「いいえ、大丈夫です!さあ、参りましょう!」
彼女の手を取って部屋へと駆け出すと、数歩遅れて着いてくる。
「え、あの、え……?」
慌てる声も可愛らしくて、嘉音は少しだけ走る速度を緩めた。

部屋に着くと朱志香は頬を赤く染めて、文化祭のパンフレットを手に取った。
「あのね……今度の文化祭、一緒に来て欲しいんだ……」
「朱志香さんのお願いとあらば何でもお聞きしますよ?」
きゅ、と彼女の手を握りしめて囁くと、彼女は何故か少しだけ表情を曇らせた。
「来てくれるだけでいいから……今度の文化祭……生徒会の販売物があって、それ、見られるの恥ずかしいから……」
「朱志香さん……」
俯く朱志香の肩をそっと抱く。潤んだ目で見つめてくるのが愛おしい。
「嘉哉くん……」
「文化祭のパンフレット、僕に5冊ぐらいくださいますか?」
朱志香の身体が一瞬強張る。
「み……見たの……?」
「朱志香さんのことをもっと知りたくて……」
「そっか……全校生徒に配った分に余りがあるから……明日持ってくるよ」
恥ずかしそうに頬を染める朱志香は本当に可愛らしくて、嘉音は抱き枕カバーを絶対に買い占めようと決意したのであった。

文化祭当日。
入り口でパンフレットを受け取り、嘉音は真っ先に生徒会の部屋へと向かう。と、見知った人物に遭遇した。白いスーツに赤い髪の青年である。
「……戦人様じゃないですか」
「よう、嘉音くん」
朱志香の従兄弟の右代宮戦人である。気さくに声を掛けられれば答えはするが、嘉音にとってはそれ以上に気になることがあった。
「……どうしてここに?」
「朱志香の抱き枕カバー。知ってるだろ?」
「ええ。買い占めるために来ましたから」
「身内に恥をさらすようでアレだけど1つでいいから回収してくれ、って頼まれたんでな」
「……僕のお嬢様が……」
「ついでに紗音ちゃんからも買い占めてくるように頼まれたんだが……譲治の兄貴の抱き枕じゃなくていいのか?」
「姉さん!?」
そういえば紗音は今日は仕事だった。出がけにやたら恨めしげな顔で見送られたので覚えている。
「まぁ3枚買って朱志香に渡すって言ったら納得してくれたけどな」
「……いつもの姉さんです」
そういえば紗音は朱志香のシーツや抱き枕カバーも3枚ずつ持っていたなと嘉音は思い出す。3枚ずつというのはまだいいほうで、譲治の抱き枕カバーなどダース単位で購入しているのを彼は知っている。結婚資金が心配である。
「……紗音ちゃん、昔からそうだっけ?」
「そうじゃないですか?この間も夏の祭典の戦利品を眺めて『譲治様萌え~』って言ってましたし」
「……そういえば紗音ちゃんに絵を描かせると昔から何を描かせても譲治の兄貴になったような覚えが……」
「今でもそうですよ」
戦人が遠い目をした。
「……朱志香、元気かな……」
「お嬢様は僕の嫁です」
戦人はぎょっとしたように嘉音を見る。
「嫁!?」
「嫁です」
「いやでもそれ、やばいんじゃ……夏妃伯母さんとか」
「やばくないです。お嬢様の抱き枕カバーは僕が買い占めます!」
「……お一人様10枚までだぞ」
戦人のツッコミは勿論聞こえていなかった。

件の抱き枕カバーは大盛況だったようで、嘉音が10枚買ったときには段ボールの山が半数近く開いていた。戦利品を手に朱志香の元へと向かう。教室に入った途端に黄色い声が上がっても気にしない。
「朱志香さん!」
「嘉哉くん、来てくれたんだ……ありがとう!……あれ、戦人?」
「よ、朱志香。……なんだよ、お前珍しい格好してるじゃねぇか」
朱志香はフリルの沢山付いたゴスロリドレス姿で、さながら魔女っ子といった風である。白い肩が見えているのも可愛らしい。
「ライブの衣装だよ。……それより戦人もありがとな。あれいろんな人に買われるの、恥ずかしくて……」
「そういうと思って10枚買ってきた。紗音ちゃんの分、3枚ここで渡していいか?」
戦人がそう聞けば朱志香はきょとんと首を傾げる。
「紗音の分、限定10枚だっていったら確保しろって言ってたから取っておいてあるぜ?」
「……」
拍子抜けしたような安堵したような表情の戦人を放っておいて嘉音は朱志香に問う。
「ところで朱志香さん、ライブは……」
「あ、あぁ、もうすぐだぜ。……嘉哉くん、その荷物……」
「朱志香さんの抱き枕カバーです」
「……ありがとう。身内以外にあれをあんまり流通させるのは気が引けて……っていうか売れないもの作ってどうするんだよ……」
はぁ、と朱志香が溜息を吐く。彼女の友人らしき巫女服姿の少女がニコニコ笑いながら朱志香に声を掛けた。
「ジェシー、抱き枕カバー凄い売れ行きだって!」
「……どのくらいだよ?」
「午前中だけで完売しそうだって!午後の分12時ぐらいに来るって連絡来たよ~」
「うわぁぁぁ、なんでそんなに売れるんだよ!?」
「でもほら、ジェシの彼氏君も買ってるじゃん!」
「う……」
朱志香は頬を真っ赤に染めて俯く。その肩をコスプレ姿の少女達が押す。
「ほらジェシ、もうすぐライブだよ~?……大丈夫?」
「大丈夫だぜ……」
そう返すと彼女は気持ちを切り替えるように首を振って、あの明るい笑顔で楽しんでいってくれ、と言ったのであった。

その夜のことである。
「嘉哉くん……ちょっといいかな?」
「はい」
頬を赤く染めた朱志香に呼び止められ、嘉音は彼女の部屋に来ていた。
「今日はありがとうな……抱き枕カバー、あんなに買ってるとは思わなかったけど……」
「朱志香さんとずっと一緒にいたいんです……」
きゅっと手を握れば、朱志香は頬を真っ赤に染めてはにかんだ。
「嘉哉くん……」
「朱志香さん……僕はこの世に生まれてきて本当に良かったと思います」
きょとんと不思議そうに朱志香が首を傾げる。
「あなたとこうしていられるのが僕は何より幸せなんです」
「うん……」
「だから、朱志香さん」
「ん?」
「結婚しましょう」
一瞬の沈黙。
そのまま見つめていると、朱志香は先ほどよりも顔を赤く染めて口をぱくぱくさせていた。
「け、結婚って……その、あの、ま、まだ……えっと……!」
「お嫌ですか……?」
朱志香の嫌がることはしたくない。嘉音との結婚を朱志香が望まないのであれば彼は黙って引き下がらざるを得ないのである。が、彼女は首を横に振った。
「ち、違うの……その、まだ嘉音くん、16才だろ?」
「はい……ですが僕にはもう朱志香さんを幸せにする準備は出来ています!」
「そ、そうじゃなくて……法律ではあと2年待たないと結婚できないんだ」
そう諭す朱志香の表情はとても残念そうで、嘉音の胸がちくりと痛む。
「では、朱志香さん」
「ん?」
「婚約しましょう」
「え……?」
彼女の顔に浮かぶのは軽い驚きの表情。それすら愛おしい。
「僕が18になったら結婚してくれるんですよね?」
「あ、うん……」
「それなら、僕はあと2年このお屋敷で頑張ります。18になったらすぐに使用人を辞めて、ただの嘉哉としてあなたを迎えに行きます」
ぱふん、と朱志香が嘉音の胸に飛び込んでくる。
「嘉哉くん……!大好き、愛してる……!」
幸せいっぱいの涙声が愛しくて、嘉音は朱志香をきつく抱きしめた。
「僕もです……愛しています、一生幸せにします!」

今日も六軒島は平和である。朱志香さんと婚約した僕には向かう所敵なしだ。来週は朱志香さんと指輪を見に行く約束をした。
朱志香さんの抱き枕になれない夜も沢山あるけれど、そんな夜は朱志香さんの抱き枕が僕を癒してくれる。
だから僕は幸せだ。僕はもう家具じゃない、お嬢様のお婿さんだ。魔女も魔法ももうどうでも良くなった。僕にとっての魔女は文化祭で見た朱志香さんのゴスロリ魔女っ子だけだ。
とりあえず幸せ絶頂の僕はチャイナドレス姿の朱志香さんとらぶらぶいちゃいちゃする妄想をしながらこの物語を締めくくろうと思う。
朱志香さん、愛してます!

魔女の棋譜
使用人・嘉音
妄想が現実になった。幸せ絶頂のようで2年後を心待ちにしている。
「朱志香さんは僕の嫁。……ちょっと白馬に乗る練習してきます」(本人談)

うみねこのなく頃に、生き残れたのは全員……かもしれない。

おわり。
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社会人
趣味:
読書、小説書き等々
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