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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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お久しぶりです。2月3日の原稿は無事脱稿しました。ラブコメっぽい小説本です。
そんなわけで今回もホプライです。そろそろラブコメっぽいのも書きたい。
では、どうぞ。

あなたのそばに


拍手[13回]


前を歩く彼女の赤いマントがゆらゆらと揺れる。彼女が動くたびにつられて動く、召喚獣が散らす花びらの色をしたそれは彼女に授けられた片翼のようだ。彼女が跳躍するたびにまるで翼のように翻る。そのゆらゆら揺れる片翼の端を掴んで、彼はそっと囁いた。
「あなたのことが、好きです」

あなたのそばに

想いを告げられたライトニングは戸惑うようにホープを見つめた。アクアブルーの瞳がどうして、と語っている。深紅のマントの端を掴んだまま、ホープはもう一度、今度ははっきりと言葉を紡ぐ。
「ライトさんが好きです」
「ホープ……」
「好きなんです……」
縋るように深紅の布を額に当てて言葉を絞り出せば、困ったような声が返ってくる。
「……お前、どうして……そんな」
「あなたのそばにいたいんです……ずっと、あなたのそばにいて……あなたを守りたい」
「だから、そんなことを?」
はい、と頷くと途端にするりとホープの手からマントが抜けて行った。
「それが私を好きだという理由なら、それは単なる思い違いだ。……あんなことがあったから、勘違いしたんだろう」
妙に硬い声のライトニングの表情を見ることは叶わなかった。

きまずい、とホープは膝を抱えた。
何が原因かなんてわかっている。
先日ライトニングに告白し、思い違いだと一刀両断された。ホープがあまりにも泣きそうな顔をしていたから、他の仲間たちですらホープの恋心に触れてはこなかった。
「はぁ……ライトさん……」
こんなにも好きなのに、守りたいと思っているのに、ライトニングはそれすら拒絶する。けれども、ふわふわと舞い踊るマントはあの時に見た彼女の戸惑いを如実に表していて、それがホープを焦らせた。
『勘違いしたんだろう』
そんなはずはないのだと心が張り裂けそうだった。
彼女はどうしてあんなことを言ったのだろう。
何回考えても答えは出ない。
何回目かのため息を漏らしたところで、どうした、と声を掛けられた。
「何に悩んでいる?」
ライトニングだ。あなたに告白を断られた原因についてですとは口が裂けても言えない。口を閉ざしてふるふると首を横に振ったが嘘を吐け、と一蹴された。
「……この間のことか」
「……はい」
座る彼女の横でぎゅっと抱えた膝をきつく握って俯く。二人の間に降りた沈黙を破ったのはライトニングだった。
「吊り橋効果……って知ってるか」
「はい」
学校でそういう話になることも多かったから、吊り橋効果は知っている。気になる女の子をノーチラス・パークのお化け屋敷に連れて行ってカップルになった、という友人の自慢話ならいくつも聞いたことがある。
「……今のお前の気持ちは、吊り橋効果によるものだ」
「だとしても、本当に恋になるんです」
「ホープ……」
戸惑ったような声が名を呼ぶ。
「あの時……パルムポルムで抱きしめられた時、ライトさんがこんな細い体で僕を守っていてくれたんだって……胸が張り裂けそうでした。あの頃僕はスノウのせいにしないと何もできなくて……ライトさんや他の人たちに当たり散らしてたけど……ライトさんに一人で逃げろって言われたとき、あなたを置いて逃げることなんてできないと思ったんです」
顔を上げて、ライトニングの肩を掴む。クリスタルのような青を湛えた瞳が沢山の感情を綯交ぜにしてホープを見つめる。
「あの時から、ライトさん……あなたが、あなただけが好きなんです」
「……っ」
青い瞳が揺れて、閉ざされる。
「お前には……まだ早い」
「それでも!僕の気持ちは変わらない!」
桃色の髪がライトニングが首を振るのと一緒にふわふわと揺れる。それは21歳の女性が否定を表すというよりは小さな少女が駄々を捏ねるような仕草で、ホープの胸はますます締め付けられる。
「ダメだ!私は……私、は……っ」
ひとりで生きるって決めた、そう小さく聞こえた気がして、ホープが気が付いた時には彼女をぎゅっと抱き込んでいた。
両親を喪って、妹を養うために彼女はライトニングになった。子供の彼女を封印して、大人の彼女になった。
「ライトさん」
「……」
「僕が、あなたを守ります。あなたをひとりになんてしない」
だから、待っていて。そう囁いてもライトニングの頭はふるふると横に振られる。だからホープは動いた。
桃色の前髪をかき分けて、白い額に口付ける。
「……っ!」
びくりとライトニングが震えた。
「愛しています。あなたの傍で、ずっとあなたを守りたい」
昔のお伽噺のように跪いて、ぺたんと座り込む彼女の右手を取って、その指先に唇を寄せた。
「ホープ……」
「何年経っても、僕の気持ちは変わりません。だから……僕にはまだ早いというなら、相応しい歳になるまで待っていてくださいね」
一方的に押し付けた約束にライトニングは怒らなかった。
ふわりと頼りなさげな微笑みを浮かべて、彼女は言った。
「私に覚悟ができるまで、待ってくれるというのなら」

おわり
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