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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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文字通りおまけです。
後編で大暴走した理御さんはほとんど出番がないです、すみません……。
もっぱらシャノジョーとヤス→朱志香です。
もうカオス。
では、どうぞ。

注意
・ヤスが暴走しております。
・紗音が変態的に譲治大好きです。
・ヤス→朱志香ですが、カノジェシ前提です。
・幻想や同一人物説は全く採用されていません。

帰ってきた風雲児? おまけ



拍手[3回]


ぴんぽーん、とチャイムが鳴る。自宅で経営の勉強をしていた右代宮譲治はそれを聞いて玄関へと向かった。
「はい、今出ます」
玄関の向こうにそう返事をしたが、彼には来訪者の心当たりはなかった。
(僕は今日誰とも約束してないし……父さんかな?いやでもそんな話は聞いていないな……)
再びぴんぽーん、と間抜けな音が鳴る。
(本当に誰だろう……宅急便?お中元にはまだ早いけど、……!)
急に来訪者の予想がついて、譲治はぎくりと身を強張らせた。
(まさか……い、いや、今日は、そんな話は……)
そんなはずはない。譲治は自分の想像を懸命に否定した。そして扉の取っ手を掴んで、開ける。
「……」
相手が何か言う前に閉める。
「譲治?どうしたの?」
母の絵羽が不審そうな顔でこちらにやってくる。
「あ、いや……その」
「お客さん?」
「あ、な、なんでもないんだ!」
こうなったら開けるしかない。譲治は意を決して扉を開けた。
「どちらさ……っ!?」
絵羽が息を呑む。
「譲治さん」
譲治は頭を抱えた。
「来ちゃいました!」
可憐な声が嬉しそうにそう紡ぐ。絵羽が叫んだ。
「紗音ちゃぁぁぁぁん!?」
そこにいたのは私服姿で大きな鞄を持った右代宮本家のメイド・紗音だった。

帰ってきた風雲児? おまけ

紗音の出現に絵羽が絶叫している頃、六軒島では理御が帰ってきて早々に始まった騒ぎに夏妃が深々と溜息を吐いていた。
「お……奥様?」
その眉間に刻まれた皺に怯えながらメイドが声を掛けると、夏妃はまた溜息を吐いた。
「安田さん。あの騒がしいのを止めてきなさい」
安田、もといヤスは夏妃の目が真剣な光を宿しているのを確認すると問い返した。
「……理御様もいらっしゃいますが……」
「構いません。それと紗音はどこに行ったのですか?」
「それが、実は……」
真実を告げれば夏妃の頭痛はさらに増すだろうとヤスは感じた。
どうしようもない理由なのだ。
ロンドンに留学していた理御に朱志香の抱き枕や写真を送った報酬として3泊4日の旅を与えられたので、譲治を攫いに行きました、などと誰が言えようか。
「早く言いなさい」
「あの、それが……」
やはり言い淀む。夏妃の苛立った表情が怖くて、けれども言うのも憚られて、どうしようと考えた末に口を開いた途端電話のベルが鳴った。受話器を取ると間髪入れずにもしもし、と声が掛けられた。
「もしもし、右代宮です」
『ヤスちゃん?私だけど夏妃姉さんを今すぐ呼んで』
電話の主は絵羽だった。何やら緊迫した様子にヤスは慌てて夏妃の手に受話器を押しつける。
「奥様、絵羽様からです」
「え、絵羽さんから……?……もしもし、夏妃です。……はい、紗音は……紗音?」
ヤスはそろそろと後退りして夏妃から離れる。
「紗音なら今日は勤務……え?そちらに?」
(ああ、奥様から怒りの炎が見える……)
そうして彼女は脱兎のごとく駆けだした。
「しゃのぉぉぉぉん!あなたは今日仕事でしょう!今すぐ帰っていらっしゃぁぁぁい!」
夏妃の怒鳴り声を聞きながら。

ヤスは右代宮本家の使用人だ。小さい頃からこの家にずっと勤めてきた。一生勤め上げてもいいとすら思っている。
だから彼女はいつも紗音や嘉音のことが理解できない。
(アイドルは遠くから眺めているのが良いのに……紗音も嘉音さんも分かってない)
譲治は好青年だから紗音が憧れるのも分からないではない。けれども追い回して結婚しようなんて考えるのはヤスには理解できなかった。
(それに嘉音さんのお嬢様に対する態度!あれは何!?まるでお嬢様は僕の妻だと言わんばかりにっ!)
そう。嘉音は勤め始めた当初から朱志香に恋心を寄せていた。最近では朱志香と手を繋いでみたり、抱き寄せてみたりとヤスにとっては我慢ならない行動が目立つようになってきた。
そして今現在ぎゃあぎゃあと騒いでいるのは朱志香の(自称)兄である理御と嘉音だった。
「……いいよね、制裁加えても。別にいいよね、ベアトリーチェ様」
背後でベアトリーチェが頷いた気がした。
「お嬢様は私のアイドルなの。それなのにアイドルといちゃいちゃするとかどういうことなの?理御様だってそうよ、自称お兄様だからってお嬢様のお尻を抓ったりして……ああ思い出したらイラッときた」
足音を忍ばせて朱志香の部屋の前に辿り着く。
中にはウィルという理御の恋人が突っ立っていて、理御と嘉音が朱志香に抱きついている。
「……」
ぴしり、と音を立ててヤスの中の何かが砕け散った。
朱志香につく悪い虫を退治すべく、どこからともなくバズーカを取り出す。その照準を嘉音に合わせ、引き金を引く。
「ふぎゃっ!?」
「嘉音くん!?」
轟音と共に嘉音が吹っ飛ぶのを見ながら理御に照準を合わせて躊躇せずに引き金を引く。
「うわっ!」
「理御!」
理御が吹っ飛んでウィルに抱き留められるのを横目に朱志香のもとに走る。
「お嬢様!ご無事でしたか!?」
「え……え!?」
朱志香は驚愕の表情を浮かべていて、彼女の無事が一応確認できるとヤスは安堵の溜息を吐いた。
「お嬢様、男はみんな狼なんですよ?自称お兄様といえども油断してはいけませんよ?お屋敷には奥様か私がいるから良いようなものの……」
「や、ヤス……あのね、その……」
朱志香が狼狽える。
「特に嘉音さんなんて使用人の勤めも忘れてお嬢様のストーカーをしている変態じゃないですか!」
「僕は変態じゃない!」
嘉音が横から反論するのにヤスは噛みついた。
「いつもお勤めさぼってお嬢様のお部屋に入り浸ってるじゃない!お嬢様は私たちのアイドルなのよ!?アイドルは遠きにありてのぞむものなのよ!いつも陰から見守って支えてあげるのが私たちファンの勤めでしょう!?」
「……それはストーカーとは違うのか?」
ウィルのツッコミを無視して彼女は続ける。
「お嬢様の抱き枕もブロマイドも全部持っているのは素晴らしいわ。でもたとえ抱き枕を100枚持っていたってアイドルといちゃいちゃするなんて言語道断よ!ベアトリーチェ様が許したって私が許さない!」
初めて朱志香と出会った時、ヤスは彼女こそ六軒島の、いや銀河のアイドルだと確信したのだ。朱志香は太陽のように明るくて、桜の花のように美しくて、ヤスには彼女が天使に見えた。だからヤスは朱志香を守り、彼女が全宇宙が誇る歌姫というアイドルとして羽ばたくまで見守ろうと決心したのであった。
朱志香が口を開く。
「ヤス」
「はい」
「私、ね……大学卒業したら嘉音くんと結婚するんだ」
時が、止まった。
理御が断固反対と叫ぶ声が遠く聞こえる。
「……え?」
「それに、私にとってヤスは大事な友達だから……ヤスにも友達、って思って貰いたいんだ……」
「友達……」
朱志香がヤスの手をきゅっと握る。
「駄目、かな……」
「駄目じゃないです!」
そう叫ぶと朱志香が少しだけ微笑んだ。
「だから、大事な友達が大切な婚約者とケンカしてるの見るの、辛いから……そんなこと言っちゃダメだぜ?」
朱志香の結婚に断固反対したかった。けれど彼女があまりに幸せそうだから、ヤスはついつい頷いた。
「……でも、お嬢様」
「ん?」
「お嬢様を泣かせる奴には私、容赦しませんから!」
そう、これは彼女を慕う全ての者たちへの宣戦布告。乙女の辞書には諦めるなんて単語はない。それを教えてくれたのは朱志香だから、ヤスはまだ諦めない。
まだ戦いは始まったばかりだ。
だからヤスは宣戦布告するのだ。
「私はお嬢様が世界で一番大好きなんです!」
そしてこの直後、余計に騒がしくなったと夏妃が雷を落としに来ることになる。

翌日、紗音とヤスは大広間の掃除を命ぜられた。
「うぅ、私はただ私の譲治様に会いに行っただけなのに……ぐすっ」
夕方、絵羽に連行されて新島まで帰ってきた紗音は夏妃や源次からこっぴどく怒られた。本人はそれを悪いとは思っていないらしく、朝からこの調子なのであった。だからヤスは溜息を吐く。
「そういうことするの、よくないわ。……紗音」
「なに?」
「またミステリー小説読むから、貸して」
「あれ、この間はもう飽きたって……」
紗音がきょとんと首を傾げる。
「読むことにしたの。お嬢様とまた、ミステリーについて語り合いたいから」
「……そう」
紗音が溜息を吐く。
「だからね、紗音」
「ん?」
「お嬢様を泣かせたら、ベアトリーチェ様が許しても私が許さないんだからね!」
これは宣戦布告だ。
右代宮家に嵐を巻き起こす風雲児と、朱志香につきまとう変態にだけではない。老若男女、人間だろうがそうでなかろうが、朱志香を慕う者全てへの宣戦布告。
ヤスはモップを持ったまま力強く前を見据えた。
絶対に負けないという、意志を持って。

終わり
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