ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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お久しぶりです。
色々ありましてまだEP7を読んでいません。今週中に読み始められたら嬉しいと言うことで……。
そんなわけでまたベアジェシです。
何だかもう捏造設定てんこ盛り。……でもベアジェシ、好きです。
それではどうぞ。
「晴れた日の花畑」
色々ありましてまだEP7を読んでいません。今週中に読み始められたら嬉しいと言うことで……。
そんなわけでまたベアジェシです。
何だかもう捏造設定てんこ盛り。……でもベアジェシ、好きです。
それではどうぞ。
「晴れた日の花畑」
六軒島の森の奥には美しい花畑がある。
ベアトリーチェはその花畑を愛していた。四季を通じて様々な花を咲かせるその場所は、六軒島の夜の主の目を飽くことなく楽しませた。
ドレスよりも宝石よりも美しい花畑はベアトリーチェだけが知る秘密の場所だった。
いつからかその花畑に一人の少女が来るようになった。
ベアトリーチェはその少女を愛し、慈しんだ。
晴れた日にしか会えなくても、それでもベアトリーチェは嬉しかった。
この花畑で共に遊べる少女がいることが、何よりも嬉しかった。
晴れた日の花畑
窓の外は酷い雨が降っていた。
朝の天気予報では今日は晴れだといっていたのにと右代宮朱志香は忌々しげに外を見やる。
雨は嫌いだった。
船がでないから学校に通うことも出来ず、島の中を歩き回ることも出来ず、ずっと屋敷に閉じこめられるだけだからだ。
屋敷は充分すぎるぐらいに広いのに、何故か空気が澱みがちで息が詰まる。
加えて朱志香の目の前に広げられている問題集が彼女の気分を酷く落ち込ませた。問題集の広すぎる余白が朱志香に彼女の学力を嫌というほどに教えてくれる。正解の書かれない問題集を見たときの母の小言が容易に想像できてしまい、彼女は本日何度目かも分からない溜息を吐いた。
母の小言には必ずと言っていいほど『右代宮家の跡継ぎ』という言葉が出てくる。その度にこの家が自分にとってどれほどの価値があるのかと叫びたくなる。
自宅に呼んで遊べるような友達は朱志香にはいない。母に固く禁じられているからだ。
年の近い使用人の紗音だって本当は遊んではいけないと母に言われているのだ。
だから、小さな頃から朱志香には右代宮家が鳥籠に見えていた。
どんなに反抗的に育っても、決して逃れられない鳥籠に見えていた。
だから彼女はよく島の中を逃げ回っていた。
日溜まりの中で、花の香りと蝶々の舞に包まれて全てを忘れて微睡んでいた。
けれどもそれは晴れた日のみ。
雨が降っている間は右代宮家にしか居場所がないのに、その右代宮家から朱志香は逃れたかった。
「……あぁもう……うぜーぜ……」
勉強なんて嫌いだ。
雨なんて嫌いだ。
けれども雨が降ったぐらいで気分が沈む彼女自身が一番嫌で、朱志香は机から離れるとベッドに丸まった。
「雨なんて……」
窓の外は酷い雨が降っていた。
これでは雛鳥も来られないだろうとベアトリーチェは物憂げに外を見やる。
雨は嫌いだった。
まだ己の姿が見えていた頃は金蔵が雨の日でも通ってきた。金蔵の話を聞きながら紅茶を飲むのが楽しみだった。
けれども今はそれもない。
金蔵は自分を蘇らせようと躍起になって、部屋に入らせてもくれない。
あんなに自分に会いたいといっているのだから顔ぐらいは見せてやりたいが、向こうから拒まれては仕方がない。
だから彼女は退屈だった。
寂しかった、というほうが妥当だろうか。
屋敷に行けば魔女の姿が見える家具は彼女を丁重にもてなした。しかしそれは友人同士で喋るのとは全く違う交わりだった。ベアトリーチェの求める交わりは家具が主人をもてなすようなものではなく、仲の良い友人同士がじゃれ合うようなものだった。
ベアトリーチェはこの島にそんな友人などいなかった。
ただただ金蔵が部屋の封印を解くことを望みながら、来ない客人を待ちながら、ふと見つけた花畑でぼんやりと怠惰な日々を送っていることしかできなかった。
島に縛り付けられた魔女にとって、六軒島は鳥籠そのものだったのだ。
一人きりの鳥籠だったのだ。
それがいつからか、どこからか雛鳥が迷い込んできた。
雛鳥は見えない檻を破ろうと片翼を羽ばたかせては阻まれて蹲っていた。
その姿に己を重ねたからだろうか。気が付けば雛鳥はベアトリーチェの片翼の中でうとうとと微睡んでいたのだった。
その時から雛鳥は晴れた日だけに花畑に来るようになった。つまる所、雛鳥と遊ぶのがほとんど唯一の楽しみだったベアトリーチェにとって、その楽しみを奪う雨は何よりも憎むべき敵だったのである。
「朱志香……」
雛鳥の名前を物憂げに呼ぶ。会いたい。とても会いたい。少しでいいから朱志香の顔を見て、一緒に茶を飲んで、彼女の話が聞きたい。
「来られないのなら……たまには妾から行くとするか」
朱志香の部屋に入ると、彼女はベッドの上に丸まっていた。その髪を優しく撫でてベアトリーチェは微笑む。
「風邪など引かぬようにな……」
囁くと朱志香がゆっくりと目を開けた。
「ベアト……?」
「久しぶりだな……元気にしていたか?」
朱志香はゆっくりと身体を起こし、ベアトリーチェの肩にもたれ掛かる。
「元気だぜ……相変わらず問題集は解けないけど。ベアトは?」
「妾も元気だぞ!……そなたに会えなくて大分寂しくはあったがの」
柔らかい身体を抱きしめれば、雛鳥は甘えるようにベアトの袖口を軽く握った。
「私も……その、寂しかったぜ……」
「妾と同じだな……妾は我慢が出来なくて来てしまった」
こちらを見上げる朱志香の頬に指を滑らせる。幼子の時からずっと変わらない柔らかい頬の感触がする。
「雨じゃなければ良かったのにな……そしたらベアトのところに行けたのに」
そう言って残念そうに目を伏せる仕草が可愛らしい。けれどもふさぎ込むその姿がベアトリーチェには悲しかった。
六軒島の花畑では朱志香は滅多にふさぎ込まない。太陽のような明るい笑顔でベアトリーチェや蝶々と戯れているか、穏やかに微睡んでいるかのどちらかであることが多い。
そんな彼女がふさぎ込んでいるのはここが右代宮家の屋敷だからだろうか。
それとも雨が降っているからか。
「雨が降っても妾は朱志香のところへ行こう。今決めた」
「そんなことしたらベアトが風邪引いちゃうぜ?私はそんなの……嫌だ」
ベアトリーチェが傘など持っていないのを知っているから朱志香は止める。けれどもベアトリーチェは首を横に振った。
「妾は本物の魔女だぞ?その気になれば魔法で傘を出すことなど容易なことよ……それとも今日のような蝶々に化けてくるほうがよいかの?」
「……傘、さしてくれるなら、私も……待ってる」
そんなことを言って頬を赤らめる朱志香は可愛いのである。彼女はベアトリーチェの可愛くて仕方がない雛鳥なのである。
だからその姿が可愛くて仕方がなくて、ベアトリーチェは朱志香を抱きしめた。
「ベアト……?」
「ちゃんと待っているのだぞ?妾は約束を守るから……朱志香もちゃんと待っているのだぞ?屋敷にいるのに妾から逃げようなど考えてはならぬぞ?」
ベアトリーチェの腕の中で朱志香はしばらく身体を強張らせていた。その緊張が段々と緩む。
「ちゃんと待ってるぜ……逃げたりなんかしない。だから……待ってるから……風邪、引かないようにして来てくれよ?」
一際強く抱きしめて、ベアトリーチェは朱志香の耳元で囁いた。
「では……もし妾が風邪を引きそうになったら、朱志香が温めてくれるかの?」
一瞬にして朱志香の鼓動が速くなる。けれどもそれはベアトリーチェとて同じ。
千年の年月はベアトリーチェを魔女たらしめたが、どうにも恋には慣れなかった。
だから朱志香が返事をするまでがとても長く感じられる。
ほんの数秒の間さえも彼女には何時間にも感じられた。
「 」
何事かを朱志香が微かに口にする。
「……?」
「ベアトが風邪引きそうになったら、私が……温めて治してやる、から……」
恥ずかしいのか消え入りそうな声でそんなことを言われて、ベアトリーチェはそれは嬉しそうな笑みを浮かべた。
六軒島の森の奥の花畑。そこが唯一魔女と雛鳥が微睡める場所だった。
そこでしか安息は得られないと思っていた。
けれども二人は知ったのだ。
二人でいれば何処だろうと安息を得られるのだと。
ベアトリーチェはその花畑を愛していた。四季を通じて様々な花を咲かせるその場所は、六軒島の夜の主の目を飽くことなく楽しませた。
ドレスよりも宝石よりも美しい花畑はベアトリーチェだけが知る秘密の場所だった。
いつからかその花畑に一人の少女が来るようになった。
ベアトリーチェはその少女を愛し、慈しんだ。
晴れた日にしか会えなくても、それでもベアトリーチェは嬉しかった。
この花畑で共に遊べる少女がいることが、何よりも嬉しかった。
晴れた日の花畑
窓の外は酷い雨が降っていた。
朝の天気予報では今日は晴れだといっていたのにと右代宮朱志香は忌々しげに外を見やる。
雨は嫌いだった。
船がでないから学校に通うことも出来ず、島の中を歩き回ることも出来ず、ずっと屋敷に閉じこめられるだけだからだ。
屋敷は充分すぎるぐらいに広いのに、何故か空気が澱みがちで息が詰まる。
加えて朱志香の目の前に広げられている問題集が彼女の気分を酷く落ち込ませた。問題集の広すぎる余白が朱志香に彼女の学力を嫌というほどに教えてくれる。正解の書かれない問題集を見たときの母の小言が容易に想像できてしまい、彼女は本日何度目かも分からない溜息を吐いた。
母の小言には必ずと言っていいほど『右代宮家の跡継ぎ』という言葉が出てくる。その度にこの家が自分にとってどれほどの価値があるのかと叫びたくなる。
自宅に呼んで遊べるような友達は朱志香にはいない。母に固く禁じられているからだ。
年の近い使用人の紗音だって本当は遊んではいけないと母に言われているのだ。
だから、小さな頃から朱志香には右代宮家が鳥籠に見えていた。
どんなに反抗的に育っても、決して逃れられない鳥籠に見えていた。
だから彼女はよく島の中を逃げ回っていた。
日溜まりの中で、花の香りと蝶々の舞に包まれて全てを忘れて微睡んでいた。
けれどもそれは晴れた日のみ。
雨が降っている間は右代宮家にしか居場所がないのに、その右代宮家から朱志香は逃れたかった。
「……あぁもう……うぜーぜ……」
勉強なんて嫌いだ。
雨なんて嫌いだ。
けれども雨が降ったぐらいで気分が沈む彼女自身が一番嫌で、朱志香は机から離れるとベッドに丸まった。
「雨なんて……」
窓の外は酷い雨が降っていた。
これでは雛鳥も来られないだろうとベアトリーチェは物憂げに外を見やる。
雨は嫌いだった。
まだ己の姿が見えていた頃は金蔵が雨の日でも通ってきた。金蔵の話を聞きながら紅茶を飲むのが楽しみだった。
けれども今はそれもない。
金蔵は自分を蘇らせようと躍起になって、部屋に入らせてもくれない。
あんなに自分に会いたいといっているのだから顔ぐらいは見せてやりたいが、向こうから拒まれては仕方がない。
だから彼女は退屈だった。
寂しかった、というほうが妥当だろうか。
屋敷に行けば魔女の姿が見える家具は彼女を丁重にもてなした。しかしそれは友人同士で喋るのとは全く違う交わりだった。ベアトリーチェの求める交わりは家具が主人をもてなすようなものではなく、仲の良い友人同士がじゃれ合うようなものだった。
ベアトリーチェはこの島にそんな友人などいなかった。
ただただ金蔵が部屋の封印を解くことを望みながら、来ない客人を待ちながら、ふと見つけた花畑でぼんやりと怠惰な日々を送っていることしかできなかった。
島に縛り付けられた魔女にとって、六軒島は鳥籠そのものだったのだ。
一人きりの鳥籠だったのだ。
それがいつからか、どこからか雛鳥が迷い込んできた。
雛鳥は見えない檻を破ろうと片翼を羽ばたかせては阻まれて蹲っていた。
その姿に己を重ねたからだろうか。気が付けば雛鳥はベアトリーチェの片翼の中でうとうとと微睡んでいたのだった。
その時から雛鳥は晴れた日だけに花畑に来るようになった。つまる所、雛鳥と遊ぶのがほとんど唯一の楽しみだったベアトリーチェにとって、その楽しみを奪う雨は何よりも憎むべき敵だったのである。
「朱志香……」
雛鳥の名前を物憂げに呼ぶ。会いたい。とても会いたい。少しでいいから朱志香の顔を見て、一緒に茶を飲んで、彼女の話が聞きたい。
「来られないのなら……たまには妾から行くとするか」
朱志香の部屋に入ると、彼女はベッドの上に丸まっていた。その髪を優しく撫でてベアトリーチェは微笑む。
「風邪など引かぬようにな……」
囁くと朱志香がゆっくりと目を開けた。
「ベアト……?」
「久しぶりだな……元気にしていたか?」
朱志香はゆっくりと身体を起こし、ベアトリーチェの肩にもたれ掛かる。
「元気だぜ……相変わらず問題集は解けないけど。ベアトは?」
「妾も元気だぞ!……そなたに会えなくて大分寂しくはあったがの」
柔らかい身体を抱きしめれば、雛鳥は甘えるようにベアトの袖口を軽く握った。
「私も……その、寂しかったぜ……」
「妾と同じだな……妾は我慢が出来なくて来てしまった」
こちらを見上げる朱志香の頬に指を滑らせる。幼子の時からずっと変わらない柔らかい頬の感触がする。
「雨じゃなければ良かったのにな……そしたらベアトのところに行けたのに」
そう言って残念そうに目を伏せる仕草が可愛らしい。けれどもふさぎ込むその姿がベアトリーチェには悲しかった。
六軒島の花畑では朱志香は滅多にふさぎ込まない。太陽のような明るい笑顔でベアトリーチェや蝶々と戯れているか、穏やかに微睡んでいるかのどちらかであることが多い。
そんな彼女がふさぎ込んでいるのはここが右代宮家の屋敷だからだろうか。
それとも雨が降っているからか。
「雨が降っても妾は朱志香のところへ行こう。今決めた」
「そんなことしたらベアトが風邪引いちゃうぜ?私はそんなの……嫌だ」
ベアトリーチェが傘など持っていないのを知っているから朱志香は止める。けれどもベアトリーチェは首を横に振った。
「妾は本物の魔女だぞ?その気になれば魔法で傘を出すことなど容易なことよ……それとも今日のような蝶々に化けてくるほうがよいかの?」
「……傘、さしてくれるなら、私も……待ってる」
そんなことを言って頬を赤らめる朱志香は可愛いのである。彼女はベアトリーチェの可愛くて仕方がない雛鳥なのである。
だからその姿が可愛くて仕方がなくて、ベアトリーチェは朱志香を抱きしめた。
「ベアト……?」
「ちゃんと待っているのだぞ?妾は約束を守るから……朱志香もちゃんと待っているのだぞ?屋敷にいるのに妾から逃げようなど考えてはならぬぞ?」
ベアトリーチェの腕の中で朱志香はしばらく身体を強張らせていた。その緊張が段々と緩む。
「ちゃんと待ってるぜ……逃げたりなんかしない。だから……待ってるから……風邪、引かないようにして来てくれよ?」
一際強く抱きしめて、ベアトリーチェは朱志香の耳元で囁いた。
「では……もし妾が風邪を引きそうになったら、朱志香が温めてくれるかの?」
一瞬にして朱志香の鼓動が速くなる。けれどもそれはベアトリーチェとて同じ。
千年の年月はベアトリーチェを魔女たらしめたが、どうにも恋には慣れなかった。
だから朱志香が返事をするまでがとても長く感じられる。
ほんの数秒の間さえも彼女には何時間にも感じられた。
「 」
何事かを朱志香が微かに口にする。
「……?」
「ベアトが風邪引きそうになったら、私が……温めて治してやる、から……」
恥ずかしいのか消え入りそうな声でそんなことを言われて、ベアトリーチェはそれは嬉しそうな笑みを浮かべた。
六軒島の森の奥の花畑。そこが唯一魔女と雛鳥が微睡める場所だった。
そこでしか安息は得られないと思っていた。
けれども二人は知ったのだ。
二人でいれば何処だろうと安息を得られるのだと。
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