ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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恋しい人に喜んで貰いたくて、彼はゆっくり深呼吸した。
プレゼントをぎゅっと握りしめ、胸を突き破らんばかりに跳ねる心臓を宥める。
(今なら大丈夫。今の僕なら……きっと渡せる)
それは、愛しい人に贈る初めてのプレゼントだった。
手袋とマフラーと
嘉音がそのプレゼントを選んだのは12月の始めだった。朱志香が寒そうに手のひらに息を吐いて温めていたのを見たのがきっかけだった。白くて細い指先をすり合わせて懸命に暖をとっている姿が本当に寒そうで、手袋をプレゼントしようと思ったのだ。
「朱志香さんなら、何色が似合うだろう」
そう思いながら新島の商店街で手袋を物色した。彼女のことを想うだけで、心がふわふわ軽くなる。胸を張って嘉哉に戻れる。(きっとそれは、僕が本当に朱志香を愛しているからだ)朱志香の差し伸べた手を取ったときから嘉哉の心を満たした甘美な恋情。その力だけで彼は恐ろしい魔女にも立ち向かえる気がする。その甘くとろけそうな想いに突き動かされるがままに嘉音は手袋を物色する。
そうして見つけ出したのが、オフホワイトの手袋だった。
ノックをすると元気の良い返事が返ってくる。そのまま部屋の中に滑り込んだ。
「おはよう、嘉哉くん」
ベッドに座った朱志香がにこりと微笑む。それだけで部屋中が暖かく照らされる気がする。これも家具から人間になったからだろうか。
「おはようございます、朱志香さん」
プレゼントを持っていない方の手で朱志香の指先に触れると、彼女はほんのり頬を染めた。「嘉哉くん……」
「朱志香さん」
僅かに潤んだ眼に魅せられながら、彼女の前髪をあげて額にそっと口付ける。
「僕は、朱志香さんとこの日を迎えることができて、幸せです」
「私も……私も、幸せだよ。嘉哉くんと一緒にクリスマスを迎えられて、2人でここにいられること。なんだか、夢みたい」
ここで2人一緒にこの日を迎えられるのは、2人の悲願だった。
ささやかで良い。
たとえ認められなくても良い。
ロマンチックでなくたっていい。
プレゼントも、豪華な食事も、素敵なデートもなくて良い。
ただ、互いが互いの傍にいられる、傍にいて寄り添いあっていられる、そんなクリスマスを2人は望んだ。そして、それが叶えられたのは奇跡と言ってもいいだろう。
「ありがとう、嘉哉くん……」
本当に幸せそうに朱志香が微笑む。
「あなたのその笑顔が見たかった。できれば僕があなたの笑顔の隣にいたかった。僕の望みは全て叶いました」
ですから、と後ろ手に持った包みを彼女の手のひらに握らせる。
「これ、もらってください。どうしても朱志香さんに渡したいのです」
朱志香が瞳を潤ませて、ありがとうと言った。
包みを開けて、もう一度ありがとうと言った。
「手袋、ありがとう……温かいよ」
そうして彼女はぎゅっと嘉音を抱きしめた。柔らかで暖かい感触が彼を包む。
「本当に、ありがとう……大好き」
瞳をますます潤ませながら身体を離すと、朱志香はクローゼットから包みを取り出した。
「これ、私から。……嘉哉くんが気に入ってくれたら、嬉しいな」
リボンを解くと、深い青色のマフラーが姿を現した。ふかふかでふわふわのそれは、庭仕事をしながら彼が欲しいと思っていたものだ。長いマフラーに、朱志香がずっと一緒にいられるようにと願を掛けたように思えて、愛おしさが溢れる。
「ありがとう……朱志香」
ぎゅっと朱志香を抱きしめて、その耳元で囁く。
これでもう、たとえ世界が壊れたとしても怖くない。
朱志香と2人だから、そう思えた。
プレゼントをぎゅっと握りしめ、胸を突き破らんばかりに跳ねる心臓を宥める。
(今なら大丈夫。今の僕なら……きっと渡せる)
それは、愛しい人に贈る初めてのプレゼントだった。
手袋とマフラーと
嘉音がそのプレゼントを選んだのは12月の始めだった。朱志香が寒そうに手のひらに息を吐いて温めていたのを見たのがきっかけだった。白くて細い指先をすり合わせて懸命に暖をとっている姿が本当に寒そうで、手袋をプレゼントしようと思ったのだ。
「朱志香さんなら、何色が似合うだろう」
そう思いながら新島の商店街で手袋を物色した。彼女のことを想うだけで、心がふわふわ軽くなる。胸を張って嘉哉に戻れる。(きっとそれは、僕が本当に朱志香を愛しているからだ)朱志香の差し伸べた手を取ったときから嘉哉の心を満たした甘美な恋情。その力だけで彼は恐ろしい魔女にも立ち向かえる気がする。その甘くとろけそうな想いに突き動かされるがままに嘉音は手袋を物色する。
そうして見つけ出したのが、オフホワイトの手袋だった。
ノックをすると元気の良い返事が返ってくる。そのまま部屋の中に滑り込んだ。
「おはよう、嘉哉くん」
ベッドに座った朱志香がにこりと微笑む。それだけで部屋中が暖かく照らされる気がする。これも家具から人間になったからだろうか。
「おはようございます、朱志香さん」
プレゼントを持っていない方の手で朱志香の指先に触れると、彼女はほんのり頬を染めた。「嘉哉くん……」
「朱志香さん」
僅かに潤んだ眼に魅せられながら、彼女の前髪をあげて額にそっと口付ける。
「僕は、朱志香さんとこの日を迎えることができて、幸せです」
「私も……私も、幸せだよ。嘉哉くんと一緒にクリスマスを迎えられて、2人でここにいられること。なんだか、夢みたい」
ここで2人一緒にこの日を迎えられるのは、2人の悲願だった。
ささやかで良い。
たとえ認められなくても良い。
ロマンチックでなくたっていい。
プレゼントも、豪華な食事も、素敵なデートもなくて良い。
ただ、互いが互いの傍にいられる、傍にいて寄り添いあっていられる、そんなクリスマスを2人は望んだ。そして、それが叶えられたのは奇跡と言ってもいいだろう。
「ありがとう、嘉哉くん……」
本当に幸せそうに朱志香が微笑む。
「あなたのその笑顔が見たかった。できれば僕があなたの笑顔の隣にいたかった。僕の望みは全て叶いました」
ですから、と後ろ手に持った包みを彼女の手のひらに握らせる。
「これ、もらってください。どうしても朱志香さんに渡したいのです」
朱志香が瞳を潤ませて、ありがとうと言った。
包みを開けて、もう一度ありがとうと言った。
「手袋、ありがとう……温かいよ」
そうして彼女はぎゅっと嘉音を抱きしめた。柔らかで暖かい感触が彼を包む。
「本当に、ありがとう……大好き」
瞳をますます潤ませながら身体を離すと、朱志香はクローゼットから包みを取り出した。
「これ、私から。……嘉哉くんが気に入ってくれたら、嬉しいな」
リボンを解くと、深い青色のマフラーが姿を現した。ふかふかでふわふわのそれは、庭仕事をしながら彼が欲しいと思っていたものだ。長いマフラーに、朱志香がずっと一緒にいられるようにと願を掛けたように思えて、愛おしさが溢れる。
「ありがとう……朱志香」
ぎゅっと朱志香を抱きしめて、その耳元で囁く。
これでもう、たとえ世界が壊れたとしても怖くない。
朱志香と2人だから、そう思えた。
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