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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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前回の記事に書き忘れていました。
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
今年の春から社会人になる予定ではありますが、更新がもしかしたら遅れるかもしれません……。でもできるだけたくさん更新していきたいと思っています。

そんなわけで今回はFF13のホープ×ライトニングで短編書きました。
7章とか例のシーンとか、ライトニングのデレとか萌え滾りました。
そんなわけで、どうぞ。

二人きりの道中にて

 

拍手[6回]


ホープがふと隣を見ると、珍しいものが目に入ってきた。
「ライトさん……?」
普段は眠りの浅いライトニングが、すよすよと安らかな寝息を立てている。その表情はいつものような険しい表情ではなく、少し幼くて頼りなさげで、それでも幸せそうな、安らかなそれだった。
「どんな夢、見てるんですか?」
聞こえないように紡いだ囁きは、彼女の耳には届かなかった。

二人きりの道中にて

召喚獣オーディンとの戦闘で、軍人といえども流石に疲れたらしい。深い眠りに落ちている彼女は、少し揺さぶったぐらいでは起きないだろうし、彼もわざわざ起こそうとは思わなかった。
ホープがライトニングと共に行動を始めてからさして長い時間は経っていない。まだ出会ったばかりといってもいい。彼女のことで、知っていることなど片手の指で事足りる。
戦い慣れた軍人であること。
パルスのルシになった妹を救うためにパージ列車に乗り込んだこと。
ホープの母親の仇に、スノウにきつく当たっていること。
ファルシ=アニマに喧嘩を売ったこと。
厳しくて、全てを拒絶して……それでも、優しいこと。
最初はただ、怖かった。セラも迷惑だ、と叫んだことがいけなかったのだろう。あの時黒いスパッツと一緒に映ったライトニングの目はそこらに落ちているクリスタルのように冷たくて、背筋が凍ったのを覚えている。スパッツの色を思い出したのはついさっきだ。心が落ち着いていろいろ考えることができたから、うっかり思い出した。ついでに後頭部が太ももに当たったことも思い出した。余計なことを思い出していかんいかんと首を振る。
気を取り直して考えてみる。怖い女の人であるライトニングについていったのは決してスパッツが見えるからとか大きくて柔らかそうな胸が揺れるのが見たいからとかそんな下心からではない。父親が大事に持っているカ○オミニを賭けてもいい。付いていったのは彼女が強かったからである。ホープが殴りかかることも文句を言うこともできなかったスノウを怒鳴りつけて殴り飛ばしてくれたからだ。溜飲が下がって、彼女になら付いていきたいと思ったからだ。
途中置いて行かれて、ヴァニラにギュッとされたりしたけれど、ライトニングが戻ってきてくれるのをずっと待っていた。胸を当ててきたりギュッとしてきたヴァニラや何くれとなく気を使ってくれたサッズと一緒に行動するよりも、ライトニングと二人きりで進むときを心待ちにしていた。3人のほうが絶対に楽なのに、ライトニングと二人でいたかった。
置いて行かれたのは辛かったし、事実不貞腐れたりもした。それでも彼女と共にいたかったのは、こうなることを予測していたからだろうか。
彼女はホープを見捨てていこうとして、足手まといだと言った。確かにそうだとは思ったけれど、無責任だと彼女を罵った。それがトリガーとなったのかはわからないけれど、オーディンが召喚されて……殺されそうになった自分を、彼女は守ってくれた。すまなかったと囁いて、鍛えると言ってくれた。
やっぱり厳しい人で、強い人だと思う。けれども、それは彼女が纏う拒絶の殻がそうさせているのかもしれないとホープは思い始めていた。
(だって、僕を守ってくれた)
暗がりで見た彼女の寝顔は相変わらずあどけない。昼間起きているときの厳しい印象は鳴りを潜めている。こんなに優しい表情が出来る人が、仲間を捨てていくことに何も感じないわけはない。拒絶する理由はわからない。ルシとしての使命のせいかもしれないし、シ骸になる運命が決定しているからかもしれない。
自分がいつそうなるか分からないし、彼女がいつそうなるかもわからない。ただ、彼女はそうなる前に聖府を潰したくて、彼は母親の敵に一矢報いたい。それさえできれば後はどうなってもいい。使命を果たせなくてシ骸に成り果てたとしても、それでよかった。同じときにルシにされたのだ、きっとその時はライトニングと一緒だろう。それならそれでいい。彼女に狩られることも、彼女を狩ることもないのなら、いっそそのほうが楽だ。
(でも……ライトさんに殺されるんなら、それでも……)
そこまで考えて、はっと気づく。
(なんで僕、そんなこと考えてんだ)
心の中は真っ暗で、優しかった母を奪ったスノウや聖府への憎しみで塗りつぶされている。ついでにルシになってお先真っ暗で、夢も希望もありはしない。今だって楽しかった過去に縋って、あどけないライトニングの寝顔に縋って、ようやく正気でいられるのだ。それなのに、ガプラ樹林に足を踏み入れた時に掴んだライトニングの手の感触や、ジャガーノートを乗り回した時の呆れた彼女の表情が脳裏を離れない。助かった、と褒めてもらえた時の声が、すまなかったと囁かれたときの頼りなさげな声が、何度も耳に木霊する。
この人を守りたいと、守れるほど強くなりたいと、失いたくないと思う。
何があっても、ライトニングと一緒なら乗り越えていけるのかもしれないと思う。
(……こんなの、僕が、ライトさんに、恋……して)
いるみたいじゃないか、とは続けられない。
自覚した瞬間に、どきどきと心臓が跳ねて止まらないから。
もう、これは、恋だ。
吊り橋効果ではない。
生まれて初めてホープの心に芽生えた、恋だ。
(母さん)
絶望に冷え切った心の中に芽を出したばかりの温かな気持ちを抱えたまま、冥府へと行ってしまった母に心の中で呼びかける。
(母さんを殺したこと、あいつらに必ず復讐する。でも……)
「好きな人、守ってもいいよね?」
母からの答えはない。
けれど、心に残る母の面影が優しく微笑んだ気がした。
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