ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
〓 Admin 〓
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
お久しぶりです。
仕事と仕事と原稿とゲームで忙殺されてました。また仕事で忙殺される予感。
そんなわけでツイッターで書いてピクシブに放り投げたFF14のライトさんコラボネタで3本。シリーズものです。
では、どうぞ。
ミコッテの話
仕事と仕事と原稿とゲームで忙殺されてました。また仕事で忙殺される予感。
そんなわけでツイッターで書いてピクシブに放り投げたFF14のライトさんコラボネタで3本。シリーズものです。
では、どうぞ。
ミコッテの話
「そういえばライトさん」
箱舟での休息中に、ホープがこんなことを言い出した。
「戦闘中にミコッテで弓が欲しいな、って言ってたじゃないですか」
「ああ、そういえば言ったような……」
「弓、出来るんですか?」
ホープの純粋な目にライトニングはう、と言葉を詰まらせた。弓は出来ないわけではないが、正直得意ではない。ブレイズエッジやクリムゾンブリッツのような剣の方が戦いやすいのだ。それを正直に話せば、ホープは首を傾げた。
「じゃあ、どうして弓が欲しいなんて言ったんです?」
「それは……ミコッテが、弓術が得意だから」
神様に消されたはずの記憶。異邦の地エオルゼアで出逢った冒険者の中に、弓術を学ぶ者がいた。
何回か出逢った、話もしたそのミコッテが教えてくれたのだ。
「弓術はエレゼンの長弓とムーンキーパーの短弓が元ですにゃ。私はちゃんと弓をやってはいないけれど、私たちムーンキーパーはずっとそれで狩りをしていたのですって」
と。
エオルゼアの記憶は忘れてしまったし、彼女の顔も名前も思い出せない。が、これだけは覚えていられたのだ。もしかしたらそれを忘れたくなくて、無意識に口に出していたのかもしれない。
「あぁ、そうか……」
「ライトさん?」
「あの子を、エオルゼアを、忘れたくなかったのか……」
行ったことがない、なんて思っていた異邦の地。
本当は神様に消されたはずの記憶の中で、旅をした場所。
そこで出会った顔も思い出せない、けれども目の前のホープみたいに遠慮がちにまとわりついてきた彼女。
忘れたくなくて、思い出したくて、彼女の言葉だけを頼りにミコッテの弓を欲した。
「また逢おう、って約束したのにな……」
「ライトさん」
それなりに幸せだった記憶に甘い切なさを感じていれば、ホープの不機嫌そうな声が現実を連れてくる。
「なんだ」
「あの子って、誰ですか……」
「え」
「僕を差し置いて浮気なんて嫌です!今、猛烈に嫌だって感じてるんです!」
力一杯そんなことを主張してくるホープには呆れるが、そこがなんだか愛おしいと感じる。
「浮気なんてする訳ないだろ」
「だって!」
「エオルゼアで出逢った、ミコッテの女の子だ。もう、名前も顔も思い出せないが」
「ライトさん……」
あの子、が少女だと知るやホープが痛ましげな表情になる。ライトニングの胸が、つきんと痛んだ。
「忘れない、って言ったのにな」
「そう……ですか」
「ああ。寂しそうだったしな」
「じゃあ、全部終わったら……行ってみましょうか。あれを言えばきっと思い出しますよ。その人のことも」
全てが終わったときにどうなるかなんて分かり切っている。エオルゼアに行こうなんて叶うわけがない。それでも、ホープがそう言ってくれるのが嬉しかった。が。
「あれ、ってなんだ?」
そう聞いたのがまずかったのか。ホープは満面の笑みで、あの忌まわしいセリフをのたまった。
「食べちゃうにゃん、って」
「お……お前……」
「だって、そのミコッテも言ってたんでしょ?」
「お前なんか誤解してるが、そんなこと一言も言わなかったぞ!ユスナーンに感化されすぎだ!」
えーっ、と不満げな声を上げたホープはそのままライトニングを抱き締める。
「でもでも、ミコッテって猫ですよね?にゃーとか言うんですよね?」
「言っていたようないなかったような、ってところだが」
「じゃあミコッテの時はライトさんも言ってください!」
「断る!」
そんなやりとりをしながら、ライトニングは遠い異邦の地に思いを馳せる。
「ホープ」
「はい」
「本当に全部終わったら……もし許されるのなら、2人でエオルゼアに行こう」
「新婚旅行ですか?」
「なんでもいいから」
途端に聞こえるホープの歓声を聞きながら、ライトニングは思う。
(仲間と……いや、2人で行けたら、お前は喜んでくれるかな……)
みんなであの生命に溢れた地に行けたら、そして彼女に会えたなら。再会を、仲間との邂逅を、そしてライトニングの戦いの終わりを、彼女は祝福してくれるだろうか。そう思えば、ホープとの婚前旅行も悪くはないだろう。
「ホープ。約束しよう」
「新婚旅行、ですか」
その声は少しだけ沈んでいて、けれども明るい。だからライトニングも気づかぬ振りをして、頷いた。たとえ叶わぬ願いでも、それが希望になるなら願う価値はある。
「エオルゼアに行こう」
はい、とホープが笑う。堪らなくなって、ライトニングは目の前の身体を抱き締めた。
「ライトさん?」
「少しだけ、このままで……」
2人の未来なんて分からない。
けれども、今だけは郷愁に浸りたい。
ホープの温かさを感じながら、ライトニングはぎゅっと目を閉じた。
箱舟での休息中に、ホープがこんなことを言い出した。
「戦闘中にミコッテで弓が欲しいな、って言ってたじゃないですか」
「ああ、そういえば言ったような……」
「弓、出来るんですか?」
ホープの純粋な目にライトニングはう、と言葉を詰まらせた。弓は出来ないわけではないが、正直得意ではない。ブレイズエッジやクリムゾンブリッツのような剣の方が戦いやすいのだ。それを正直に話せば、ホープは首を傾げた。
「じゃあ、どうして弓が欲しいなんて言ったんです?」
「それは……ミコッテが、弓術が得意だから」
神様に消されたはずの記憶。異邦の地エオルゼアで出逢った冒険者の中に、弓術を学ぶ者がいた。
何回か出逢った、話もしたそのミコッテが教えてくれたのだ。
「弓術はエレゼンの長弓とムーンキーパーの短弓が元ですにゃ。私はちゃんと弓をやってはいないけれど、私たちムーンキーパーはずっとそれで狩りをしていたのですって」
と。
エオルゼアの記憶は忘れてしまったし、彼女の顔も名前も思い出せない。が、これだけは覚えていられたのだ。もしかしたらそれを忘れたくなくて、無意識に口に出していたのかもしれない。
「あぁ、そうか……」
「ライトさん?」
「あの子を、エオルゼアを、忘れたくなかったのか……」
行ったことがない、なんて思っていた異邦の地。
本当は神様に消されたはずの記憶の中で、旅をした場所。
そこで出会った顔も思い出せない、けれども目の前のホープみたいに遠慮がちにまとわりついてきた彼女。
忘れたくなくて、思い出したくて、彼女の言葉だけを頼りにミコッテの弓を欲した。
「また逢おう、って約束したのにな……」
「ライトさん」
それなりに幸せだった記憶に甘い切なさを感じていれば、ホープの不機嫌そうな声が現実を連れてくる。
「なんだ」
「あの子って、誰ですか……」
「え」
「僕を差し置いて浮気なんて嫌です!今、猛烈に嫌だって感じてるんです!」
力一杯そんなことを主張してくるホープには呆れるが、そこがなんだか愛おしいと感じる。
「浮気なんてする訳ないだろ」
「だって!」
「エオルゼアで出逢った、ミコッテの女の子だ。もう、名前も顔も思い出せないが」
「ライトさん……」
あの子、が少女だと知るやホープが痛ましげな表情になる。ライトニングの胸が、つきんと痛んだ。
「忘れない、って言ったのにな」
「そう……ですか」
「ああ。寂しそうだったしな」
「じゃあ、全部終わったら……行ってみましょうか。あれを言えばきっと思い出しますよ。その人のことも」
全てが終わったときにどうなるかなんて分かり切っている。エオルゼアに行こうなんて叶うわけがない。それでも、ホープがそう言ってくれるのが嬉しかった。が。
「あれ、ってなんだ?」
そう聞いたのがまずかったのか。ホープは満面の笑みで、あの忌まわしいセリフをのたまった。
「食べちゃうにゃん、って」
「お……お前……」
「だって、そのミコッテも言ってたんでしょ?」
「お前なんか誤解してるが、そんなこと一言も言わなかったぞ!ユスナーンに感化されすぎだ!」
えーっ、と不満げな声を上げたホープはそのままライトニングを抱き締める。
「でもでも、ミコッテって猫ですよね?にゃーとか言うんですよね?」
「言っていたようないなかったような、ってところだが」
「じゃあミコッテの時はライトさんも言ってください!」
「断る!」
そんなやりとりをしながら、ライトニングは遠い異邦の地に思いを馳せる。
「ホープ」
「はい」
「本当に全部終わったら……もし許されるのなら、2人でエオルゼアに行こう」
「新婚旅行ですか?」
「なんでもいいから」
途端に聞こえるホープの歓声を聞きながら、ライトニングは思う。
(仲間と……いや、2人で行けたら、お前は喜んでくれるかな……)
みんなであの生命に溢れた地に行けたら、そして彼女に会えたなら。再会を、仲間との邂逅を、そしてライトニングの戦いの終わりを、彼女は祝福してくれるだろうか。そう思えば、ホープとの婚前旅行も悪くはないだろう。
「ホープ。約束しよう」
「新婚旅行、ですか」
その声は少しだけ沈んでいて、けれども明るい。だからライトニングも気づかぬ振りをして、頷いた。たとえ叶わぬ願いでも、それが希望になるなら願う価値はある。
「エオルゼアに行こう」
はい、とホープが笑う。堪らなくなって、ライトニングは目の前の身体を抱き締めた。
「ライトさん?」
「少しだけ、このままで……」
2人の未来なんて分からない。
けれども、今だけは郷愁に浸りたい。
ホープの温かさを感じながら、ライトニングはぎゅっと目を閉じた。
PR
この記事にコメントする