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ここは「花待館」の別館となっています。非公式で「うみねこのなく頃に」「テイルズオブエクシリア」「ファイナルファンタジー(13・零式)」「刀剣乱舞」の二次創作SSを掲載しています。
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こんばんは。クリスマスですね。
そんなわけでホプライです。ぴくしぶに投下したやつです。LRFF13ネタバレを含みます。

聖なる日に


拍手[6回]



クリスマス。
古い世界では定時に仕事を終えてファルシに感謝しながら一家だんらんを満喫する日であった。
しかし。
新しい世界では何の因果か、恋人たちが愛を確かめ合い、次の年も愛し合うことを誓い合う日になっていた。
それをはしたないとみるか微笑ましいとみるかは人によるのだが、このクリスマスという日はとかくスキンシップを試みる恋人に困惑するものがいるのもまた事実。
そして、それはとある田園地帯の一軒家の中にもいた。
「観念してください、エクレールさん!」
「ちょっとまてホープ!なんでお前はそんなに元気なんだ!」


聖なる日に


とある田園地帯の一軒家、エストハイム家のひとり息子・ホープが買った家での初めてのクリスマスの風景はこんなものであった。
夏ごろからかねてより結婚を申し込んでいた恋人・エクレールと同棲するために買った家であったが、恋人たちのイベントと称される日は必ずこのようなやり取りが交わされている。
本日も例に漏れず、朝のベッドの中から翌朝のベッドの中までイチャイチャとスキンシップをしていたいホープと、恥ずかしさが先行してどうしても拒否しがちなエクレールの割と真剣な攻防が朝のベッドの中から繰り広げられているのである。
ホープがエクレールと出会ったのは3年前、彼が21歳の大学生の頃だった。その頃まだ18歳で、いずれ進学するであろう大学のゼミにアルバイトに来ていたのがエクレールだった。

容姿も声色も性格も、彼女という存在自体がホープが古い世界から想い続けてきたライトニング……エクレール・ファロンであると、一目見た瞬間に分かって……彼はもう一度恋に落ちた。エクレールのほうもホープのことを覚えていたらしい。驚きとともに始まった二人の恋は、3年の月日を経てようやく夏ごろに結婚を前提とした同棲をする運びとなった。

だが、しかし。
古い世界でもそうだったように、エクレールはスキンシップが苦手だった。愛の言葉も苦手だった。だからホープが研究室でぎゅっと抱きしめようとしても軽やかな身のこなしで避けられてしまうことがよくあった。同棲するようになってからはどうにか避けられなくなったが、まだまだ慣れていないらしい。
今朝とてクリスマスだからとホープがベッドの中でぎゅっと抱きしめれば、場所が場所だけに警戒心をあおってしまって、困ったように見つめられた。ホープもエクレールのその眼差しに煽られて、結局夜明けごろに目が覚めたのに起き出したのは日が高く昇って近所のマーケットが開店する時間だった。だから余計にスキンシップを拒否されるのだろうが、ホープとしては折角再会できて、しかも恋人になれたのだから(おまけに自分のほうが年上というこれはこれでおいしい関係だ)思う存分エクレールを堪能したい。エクレールに自分を堪能させたい。
そう思うのだが、くどいようだがエクレールはスキンシップも愛の言葉も苦手である。彼女の家族への接し方を見ていると決してそういうものが嫌いなわけではないらしい、むしろ大好きらしいが、相手がホープだと拒否しがちなのは恋人だからだろうか。聞いてみたいが起きてから4時間、ずっとこんな攻防戦を繰り広げているために聞く機会を逃していた。
「もう、いい加減に観念して僕とイチャイチャしましょうよ!」
そう両腕を広げてにじり寄れば、エクレールは座っていたソファーの端まで逃げて身を縮こまらせる。
「身の危険を感じるんだ!」
「まだお昼ですからそんなことしませんって!」
「信じられるか!」
全く以て信用がない。同棲したての頃は自重していたが、二人で住むのに慣れてきた秋ごろには完全にホープの理性の箍が外れてしまって暴走した報いである。それは重々承知していても、と思うのが恋人の性というものだろうか。
「大丈夫ですよ!今はちゃんと自重してますし!」
そう事実を主張すれば美しい恋人からはこの上なく美しい、怪訝そうな眼差しを向けられた。
「自重……?」
「有無を言わさずベッドに連れ込んでないでしょ?」
「それはそうだが」
「だから……ね?」
首を傾げてねだれば、彼女はう、と言葉に詰まる。彼女が年上だった名残か、ホープのおねだりには非常に弱い。だから考え込んでいる間にぎゅっとその身体を抱きしめて、ソファーに座るとエクレールを膝の上に抱え上げた。
「ホープっ!」
エクレールの頬はリンゴのように赤い。可愛い。恥ずかしいのだろうとわかっているから、ますますぎゅっと抱きしめたくなる。
古い世界ではハリネズミのような人だと思ったが、今の彼女は子猫である。だからミコッテが似合ったのかもしれない。
「ねぇ、エクレールさん」
抱きしめたまま耳元で囁く。
「大好きです。ずっと大好きです」
「ホープ……」
「昔も今も……これからも、ずっとあなたを離しません」
腕の中のエクレールが振り向いて、ぎゅっと抱きしめ返す。
「ホープ……私も、好き……だ」
愛の言葉は受けるのも言うのも苦手な彼女は、それだけを言うのが精いっぱいだったに違いない。けれどもたどたどしい言葉には声に出せない沢山の想いがあると知っているから、愛しさはますます募る。だからその分、ホープが言葉にするのだ。
「ちゃんと自重しますから、ずっと傍に居てくださいね」
肩口でこくんと頷く気配がする。
「僕を一人にしないでくださいね」
もう一つ頷きが返って来る。
「二人で幸せになりましょうね」
「うん」
少し子供っぽい響きだったが、エクレールはこれでいいのだ。お互い頑張りすぎた。だからもう、二人で幸せになりたい。
なし崩しにスキンシップを受け入れた彼女を抱きしめて目を閉じる。
外はきっと寒いけれど、二人でいれば温かい気がした。
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